政府は2021年度の税制改正大綱を2020年12月21日に閣議決定した。
事前の報道では「ファンド運用の報酬を金融所得と見なし20%の税率を適用する案」を盛り込むとされたが、結局、見送りとなった。
ただ、国際金融都市関係としては、就労のために日本に居住する外国人が日本で死亡した場合、その海外資産については日本の相続税の課税対象外となることが盛り込まれた。
- 就労等のために日本に居住する外国人が死亡した際、その居住期間にかかわらず、外国に居住する家族等が相続により取得する国外財産を相続税の課税対象としない。
- 投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる業績連動給与について、一定の要件の下、損金算入を可能とする。
- リミテッド・パートナーシップの投資家である外国組合員に対する課税の特例について、持分割合要件等の見直しを行う。
産経新聞によると、福岡市は「国際金融都市構想で外資系企業の本社は東京や大阪に置くと見て運用部門、事務部門、中小規模の投資ファンドの誘致を目指す。」という。
引用 https://www.sankei.com/economy/news/210107/ecn2101070023-n1.html
さらに、九州経済連合会、福岡県、福岡市、地元有力企業、九州大学などの「産官学」が一体となって誘致活動をする。
特に、金融とIT(情報技術)を融合させた「フィンテック」の開発拠点とする方針。
大阪はデリバティブ(先物など金融派生商品)の拠点としてアピールする方針だが、大阪大学、大阪公立大学との具体的な連携の話はなく、福岡市よりも大きく出遅れている。
大阪には世界初の本格的先物市場「堂島米市場」があったことから「デリバティブ」拠点を目指しているのだろうが、そんな歴史など外資系ファンドは何の興味もない。
外資系ファンドは、彼らが儲かればいいわけで、歴史をアピールする方針がそもそも「国際金融市場」を知らない素人発想だ。
現在の大阪府・大阪市の体制では「国際金融都市」を誘致することは不可能と思われる。
個人的に思ったことだが、アメリカのペンシルベニア大学ウォートン・スクールに匹敵するような大学院を設立すべきだと思う。日本の上場企業から社内留学制度で、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールに留学する社員も多いので、そこの出身者を「国際金融都市」誘致の司令塔とすべきではないか?
「ファンド運用の報酬を金融所得と見なし20%の税率を適用する案」は官僚が発想しそうな案だが、財務省が反対したと思われる。
日本の所得税の最高税率は所得税45%で住民税10%と合わせ55%が課税される。シンガポールや香港の所得税率は約20%なので全く競争にならない。
今回は所得税20%適用範囲の絞り込みができなかったので見送りになったのかもしれない。日本が本気で国際金融都市を目指すならば、所得税20%は絶対条件となるので、数年後には実現するかもしれない。