阪急「新大阪連絡線」「なにわ筋連絡線」の概要
路線図 出典 大阪市(当ブログで一部加筆)
阪急電鉄は、新大阪駅から十三駅までの地下新線「阪急新大阪連絡線」と十三駅からJR北梅田駅までの新線「なにわ筋連絡線」の建設を計画している。
阪急線の軌道幅は広軌(1,435mm)だが、本連絡線は狭軌(1,067mm)で敷設すると予想される。
2019年10月「阪急」「JR西日本」「南海」の鉄道3社は事業化に向け本格検討に乗り出すことに合意した。その後、大阪府・市と運行ルート及び事業スキームについて協議を始めるとされた。
2021年10月撮影(新大阪駅の西側)
阪急新大阪連絡線・なにわ筋連絡線の建設費
路線 | 区間 | 建設費 | 距離 |
阪急新大阪連絡線 | 阪急十三駅~新大阪駅 | 590億円 | 2.1km |
なにわ筋連絡線 | 阪急十三駅~JR大阪(地下)駅 | 870億円 | 2.5km |
2線同時建設 | JR大阪(地下)駅~新大阪駅 | 1,310億円 | 4.6km |
- 2路線の建設費は別々に整備した場合は合計で1,460億円となるが、同時に整備すると150億円の費用を抑制でき1,310億円になるという。
- 工事着工するには「国・大阪府・大阪市」の補助金が絶対条件だが、2021年度の予算がついていないので、実際に着工するのは2022年度以降になると思われる。
- 2031年なにわ筋線開業、2037年リニア中央新幹線開業、2046年北陸新幹線(新大阪駅)開業などを視野に入れた長いスパンの計画と思われる。
2021年10月撮影(新大阪駅西北側)
2021年3月14日、JR新大阪駅北口のフットサルコート「キャプテン翼スタジアム新大阪」が閉店した。
新大阪阪急ビル(筆者 撮影)
当ブログの見方としては、大阪府・市の出資金(事業費負担)をいくらにするかという「協議中」と思われる。
鉄道新路線の建設は、鉄道会社の資金力だけでは建設できず、国や自治体の補助金が前提になっている。
例えば、京阪中之島線(2.9km)では、国330億円、大阪府165億円、大阪市330億円を負担している。
京阪中之島線の事業費
事業者 | 事業費負担 |
中之島高速鉄道+京阪電鉄 | 485億円 |
国 | 330億円 |
大阪府 | 165億円 |
大阪市 | 330億円 |
合計 | 1,310億円 |
京阪中之島線のスケジュール
日時 | 内容 |
2001年3月30日 | 中之島線事業への着手を正式決定 |
2003年5月28日 | 起工式 |
2008年10月19日 | 開業 |
路線長 | 2.9km |
工期 | 5年 |
京阪中之島線(2.9km)の工期は約5年なので、阪急「新大阪連絡線・なにわ筋連絡線(4.6km)」の工期は8年くらいかもしれない。
スケジュール的に2031年春の「なにわ筋線」開業に間に合わない可能性もあるが、阪急は同時開業にはこだわっていないと思う。
阪急はもっと長期的な中央リニア開業(2037年)や北陸新幹線(新大阪駅)2046年開業を見据えているのではないか?
根拠はありませんが、一応2031年春の「なにわ筋線」との同時開業を目指すものの、現実的には2037年の中央リニア(新大阪駅)開業までに開通するくらいのスケジュールではないか?
阪急初の狭軌新造車両の可能性は?
阪急電車の車両は標準軌(1,435mm)であり、阪急「新大阪連絡線」が狭軌(1,067mm)で敷設されると「阪急初の狭軌新造車両」への期待が高まる。
しかし、阪急が狭軌車両を製造するとしても車両編成数は10編成程度と少なくメンテナンス費用が割高になる。
また、阪急の車両整備工場は「正雀駅」に隣接しているが、そこまで「狭軌線路」を敷設する計画はない。
したがって、阪急は独自の狭軌車両を製造せず「南海(またはJR)」の狭軌車両がそのまま乗り入れすると予想される。
ただ、JR「大阪駅(地下ホーム)」~阪急「新大阪駅」間は、阪急の運転手と車掌が担当する可能性が高いと思う。
阪急電鉄「新大阪駅」乗り入れパターン
「なにわ筋線」には「JR特急(はるか・くろしお)3本/時・JR関空快速4本/時」と「南海ラピート2本/時・南海空港急行4本/時」が乗り入れる。
しかし、JR特急(はるか・くろしお)はJR「新大阪駅」の乗り入れすると予想され、阪急「新大阪連絡線」に乗り入れる可能性は低い。
したがって、「南海ラピート2本/時・南海空港急行4本/時」はすべて「阪急新大阪駅」に乗り入れするのではないか?
鉄道会社 | 特急 | 急行 | 合計 |
南海 | ラピート2本/時 | 空港急行4本 | 6本/時 |
JR | 0本/時 | 0本/時 | 0本/時 |
合計 | 2本/時 | 4本/時 | 6本/時 |
採算性
事業費は1,310億円なので、40年で累計黒字にするには毎年約33億円の利益が必要となる。
阪急十三駅~大阪梅田駅の運賃は160円で「阪急十三駅~JR大阪駅(地下ホーム)」も同運賃の160円になると予想されるので、イメージとして「輸送人員10万人/日・年間運賃収入約58億円」くらいになるのではないか?
(国土交通省近畿運輸局の調査では輸送人員は約5.5万人/日)
輸送人員(十三駅~北梅田駅) | 年間運賃収入(160円で試算) |
5万人/日 | 29億2000万円 |
10万人/日 | 58億4000万円 |
2018年通年平均の阪急「大阪梅田駅」の乗降人員は508,862人(1日)なので、このうち7万~8万人が「十三駅~JR大阪(地下)駅」路線に移り、新規利用者は2万人~3万人程度か?
既存の「阪急大阪梅田駅」の利用者は7万人~8万人減少すると思われるが、既存の阪急全路線で黒字を維持できれば阪急的には許容できるのではないか?
関空の国際線利用者(2019年)は年間約2,500万人でうち日本人は約800万人、関空国内線は約700万人なので、日本人の関空利用者は年間約1,500万人となっている。このうち、6割が鉄道を利用すると年間約900万人となる。
阪急沿線からの関空行の鉄道利用者は年間900万人のうち、年間400万人くらいと仮定すると、1日当たり1万1000人(/日)になる。
そうなると、関空行の需要(関空特急)だけでは新路線の採算はとれないので、阪急沿線から「中之島」や「なんば」への利用者を取り込むため「南海空港(急行)」の運行が必須となる。
新大阪での「なにわ筋線」乗換予想
「阪急新大阪線」は、現在の新大阪阪急ビルの地下に(仮称)阪急新大阪駅が建設される計画だが、新幹線からの乗り換えに時間がかかる。
一方、新幹線から「JRなにわ筋線」に乗り換える場合、新幹線乗り換え口に最も近い「在来線1番乗り場」となるので圧倒的に「JRなにわ筋線」の方が便利だ。
また、新幹線からJR特急に乗り継ぐと「特急料金が半額」になるので、新幹線利用者は「JRの関空特急」を利用すると思われる。
さらに、JR新大阪~JR大阪駅は線路長3.4kmで途中駅がなく現在でも所要時間4分で運行している。一方、阪急新大阪駅~JR大阪駅(地下ホーム)の線路長は4.6kmと長く、また阪急十三駅に停車するので、所要時間はJR線よりも長くなる。
したがって、JRの車両は阪急新大阪駅には乗り入れせず、すべてJR新大阪駅に乗り入れすると予想される。
ただ、利用者にとっても関空特急が「JR線ホーム」と「阪急の新大阪地下駅」に分かれるのは不便だが、新幹線から関空特急に乗り換える需要はそれほど多くないと予想されるので、JRの関空特急だけで十分対応できると思われる。
「南海ラピート」が、JR大阪駅(地下新駅)で折り返し運転するとホームの占有時間が長くなるので、折り返し運転のためにも「阪急新大阪駅」に乗り入れする方がJRにとっても都合がいい。
また、「JRはるか」は京都以東まで運行し、「南海ラピート」は新大阪駅止まりと「役割分担」することもあり得る。
阪急線利用者のメリット阪急京都線の利用者
阪急京都線の「南方駅」で大阪メトロ御堂筋線に乗換え新大阪に行ける。また阪急淡路駅で「おおさか東線」に乗換えても新大阪駅に行ける。したがって、阪急京都線の利用者にとっては阪急の新大阪連絡線のメリットは少ない。
阪急宝塚線の利用者
阪急新大阪連絡線は十三駅の地下ホームになると思われるので乗り換えに時間がかかるし、新大阪も阪急地下駅から高架のJR新幹線ホームまで行く必要がある。
現在のJR大阪駅乗り換えで新大阪に行く場合と比較して劇的に便利という訳でもない。
また、阪急宝塚線(梅田行)利用者は十三駅で下車したホームと同じホームで阪急京都線に乗り換ることができる。その後、阪急淡路駅で「おおさか東線」に乗り換えて新大阪に行ける。
南海空港急行のみが乗り入れる場合、15分間隔の運転になるので使い勝手が悪い。
阪急神戸線の利用者
そもそも、阪急神戸線はJR神戸線の数百m北側を平行して敷設されている。そのためこのエリアの利用者の多くは阪急線とJR線の2路線を利用することができ、新大阪に行く場合、JR神戸線を利用すれば新大阪駅まで直通で行ける。
したがって、「阪急新大阪連絡線」のメリットは少ない。
まとめ
新大阪~大阪間の線路長はJR線が3.4km、阪急線が4.6kmとJR線の方が速達性が高い。
しかし、新大阪駅で新幹線から関空特急に乗り換える需要は15分に1本もなく、30分に1本のJR特急「はるか」だけで対応できる可能性がある。
また南海ラピートは「JR大阪駅(地下新駅)」で折り返し運転ができないと予想されるので「折り返し運転」のために「阪急新大阪駅」に乗り入れする可能性がある。
したがって、当ブログでは「阪急・新大阪駅」の乗り入れについて、下記のパターンの可能性が高いと思う。
運行本数予想
鉄道会社 | 特急 | 急行 | 合計 |
南海 | ラピート2本/時 | 空港急行4本 | 6本/時 |
JR | 0本/時 | 0本/時 | 0本/時 |
合計 | 2本/時 | 4本/時 | 6本/時 |
南海電車の特急(ラピート)2本/時と空港急行4本/時がすべて阪急線に乗り入れるパターン。
補足
当ブログ試算では「阪急十三駅~関西空港」間の所要時間は「南海ラピート」で約43分、「南海空港急行」で60分と思われる。
したがって「南海ラピート」が30分に1本の運行ならば時間帯によっては「南海空港急行」の方が早く関空に到達することがある。
2023年春のJR大阪駅(地下ホーム)開業には間に合わないので、2031年春の「なにわ筋線」と同時開業を目指すのではないか?
また、阪急電車の既存路線は標準軌(1,435mm)だが、新路線は狭軌(1,067mm)で敷設され南海電鉄が「新大阪駅~関空」に乗り入れすると予想される。
「阪急十三駅~関西空港駅」の所要時間と運賃予想(当ブログ)
運行本数予想