神戸空港(筆者撮影)
2019年5月11日、「関空、伊丹空港、神戸空港のあり方」を話し合う「関西3空港懇談会」が開催された。
その結果、発着回数は1日20便(10往復)増便して、1日80便(40往復)となった。また、運用時間も1時間の延長の午後11時までとすることで合意した。
しかし、国際線就航については、2025年までの中期的課題として先送りされた。
神戸空港規制緩和案
神戸空港 | 現在の運用 | 規制緩和案 |
運用時間 | 午前7時~午後10時(15時間) | 午前7時~午後11時(16時間) |
発着枠 | 1日60回(30往復) | 1日80回(40往復) |
関西3空港懇談会では、3空港の機能見直しについて「短期」「中期」「長期」に切り分けて検討する方針。
期間 | 年 | イベント |
短期 | 2021年ごろまで | ワールドマスターズゲームズ(生涯スポーツ大会) |
中期 | 2025年ごろまで | 大阪・関西万博 |
長期 | 2030年代まで | 2037年リニア大阪延伸 |
コメント
神戸空港の国際化については、中期の検討課題として2025年頃まで先送りされたようだ。
少なくとも短期2021年までに国際線就航の可能性は低い。
これは、国際線就航のために、国際線ターミナルの建設、ポートライナー8両化などハード面の課題が影響した可能性がある。
関空については、年間発着回数の上限23万回を引き上げる動きがある。
大阪府の吉村知事は2019年5月8日の記者会見で「神戸の国際化より関空の機能強化を優先すべき」との考え示した。
一方、兵庫県の井戸知事は午前6時~午前0時までの運用時間延長、1日120便(60往復)を要望していた。
神戸空港国際化は経済効果ない
神戸市は人口減少、再開発の遅れ、インバウンド需要もなく、経済が低迷している。
その解決策として「神戸空港の国際化」を目指しているが、神戸空港を国際化しても、神戸の経済は回復しないだろう。
都市(人口) | 空港 | 国際線 | 国内線 | 合計 |
仙台市(109万人) | 仙台空港 | 30万人 | 327万人 | 357万人 |
神戸市(152万人) | 神戸空港 | 0万人 | 318万人 | 318万人 |
広島市(119万人) | 広島空港 | 36万人 | 259万人 | 295万人 |
神戸市と同規模の仙台市、広島市の国際線利用者は約30万人程度になっている。
これでは、神戸経済を回復させる力はない。
もちろん、大阪や京都へ行く外国人も神戸空港を利用する可能性もある。しかし、それは、関西3空港の役割分担に反する。
現在の関西3空港の役割分担
空港名 | 役割分担 |
関西国際空港 | 関西の基幹空港であり、国際線が就航するのは関空に限定する。 |
伊丹空港 | 国内線の基幹空港で、騒音対策のため、発着回数は1日370便、運用時間は7時から21時までの14時間とする。 |
神戸空港 | 150万都市神戸及びその周辺の国内航空需要に対応する地方空港で、運用時間は7時から22時までの15時間、1日の発着回数は60回が上限とする。 |
神戸空港は、神戸市と周辺都市の国内航空需要に対応する地方空港と規定されている。
したがって、神戸空港が大阪や京都から利用者を誘引することは、「関西3空港の役割分担」に違反する。
神戸空港318万人のうち神戸市民の利用者数は?
神戸空港の2018年の年間利用者数は過去最高の318万人を記録した。
しかし、当ブログの分析では、羽田=神戸=長崎の経由便利用者57万人(推定)が含まれている。
この「神戸経由便」が、「羽田=長崎直行便」に変更されれば、神戸空港の利用者数は57万人減少し、261万人となる可能性がある。
神戸空港を利用していれば、羽田から神戸に到着した客が、出口に行かず、待合室で経由便を待っているのを見ているだろう。
神戸空港318万人、過去最高って喜んでいるのは、神戸空港を利用したこともない人だと思う。
経済がダメになれば、「一発逆転」の夢を追いかけたくなるものだ。
しかし、神戸空港国際化には国際線ターミナル(100億円)、ポートライナー8両化(700億円~800億円)など1,000億円の費用がかかる。
1,000億円かけるなら、三宮駅再開発を優先すべきではいか?
神戸バスターミナル(ツインタワー)も2020年着工、2025年開業予定だったが、全く進んでいない。
そういう神戸の再開発の遅れを、「神戸空港国際化」にすり替えて、市民の批判をさけようとしているだけかもしれない。
本気で神戸空港を国際化する気なら、国際線ターミナルの完成予想図くらい出しているのではないか?
ポートライナー8両化も10年以上かかりそうだから、早くて2030年頃かもしれない。
しかし、事業費700億円~800億円なんて無理だろうから、首長の任期が終われば、うやむやになるかもしれない。