「大阪国際金融都市」2025年までに外資系の金融企業30社、スタートアップ企業を300社創業

2022年3月25日、「国際金融都市OSAKA推進委員会」の総会が開催され2025年までの戦略が決定された。

  1. 外資系の金融企業を30社誘致
  2. スタートアップ企業を300社創業
  3. 「ユニコーン」と呼ばれる企業価値が10億ドル(1,200億円)を超える有望な新興企業3社を創出

アクションプラン

  1. デジタル地域通貨の発行
  2. ベンチャー企業の支援
  3. 大阪で事業を始める企業のオフィス開設費用を補助する制度創設
  4. 外国人向けの教育、医療体制の整備

 

当ブログのコメント

結論から言うと2025年までに大阪が国際金融都市になることはない。

外資系金融機関は、利益を上げることが第一目標なので、「大阪が先物市場発祥の都市だから大阪に拠点を置く」という甘い考えない一切ない。

所得税の高い日本に外資系金融機関が進出するのは、他国よりも証券規制が緩いことが理由になっている。海外では違法とされる取引でも、日本では摘発されないことがある。

はっきり言って、外資系金融機関といっても特別なことをしているのではなく「企業情報」を入手して「金儲け」をしているに過ぎない。

その「企業情報」が多く集まるのが「東京」であり、大阪に外資系金融機関が拠点を置くメリットは全くない。

大阪のメリットは東京よりもアジアに近いということくらいしかないのだから、アジア企業を積極的に誘致することくらいしかない。

その玄関口であり関空の機能強化が絶対に必要であるが、そういう具体的な提案もない。

また、日本の大学や大学院では「金融工学」を専門とするような研究室が少ない。ペンシルベニア大学ウォートン校に匹敵するような大学院を大阪に設置すべきではないか?

大阪取引所(旧大阪証券取引所)は先物・指数に特化した市場であり、デリバティブズの一種「裁定取引(アービトラージ)」が一番親和性が高い。

しかし、「国際金融都市OSAKA推進委員会」のプレスリリースをみても「裁定取引(アービトラージ)」という用語はでてこない。

日本にもペンシルベニア大学ウォートン校の卒業生は多くいるのだから、そういう国際金融の最前線にいた経験のある人物をヘッドハントしてこないと、大阪国際金融都市の実現は不可能だと思う。

不動産の証券化

大阪は福岡や名古屋と比較して不動産市場が大きい。これは国際金融都市として長所となる。

東京のオフィス面積を10とすると大阪のオフィス面積は3でしかないが、ホテル客室数は東京を10とすると大阪は6とホテルが相対的に多い。

ホテルの建物を証券化すると新たな市場が生まれる。そのためには、ホテルの経営と所有を分離するとい発想が必要だ。

星野リゾート代表の星野佳路氏が卒業したニューヨークのコーネル大学ホテル経営大学院のような大学院を大阪に誘致し、ホテル経営を近代化する必要があるのではないか?

国際金融都市と言って、単に外資系企業を誘致するだけでは、大阪で発生した利益を外資にもっていかれるだけになる。

まずは、地道に人材を育てることからすべきではないか?

 

以下過去情報

国際金融都市OSAKA推進委員会

  • 会長      関西経済連合会の松本正義会長
  • 副会長   吉村洋文大阪府知事や松井一郎大阪市長
  • 委員  SBIホールディングの北尾吉孝社長

海外企業の拠点開設などの支援にあたる「ワンストップ窓口」の設置も検討し、国に対して税制措置や法規制の緩和を盛り込んだ「国際金融特区」創設の提案を働きかける。

 

国際金融都市とは?

菅前政権は、日本に世界の金融ハブをつくる「国際金融都市構想」の実現に向け、東京、大阪、福岡の3都市を候補地としていると言われる。

香港情勢が不安定化しており、香港などから専門知識を持つ高度人材を日本に呼び込むため目的もあると思う。

しかし、日本の最高税率は55%(所得税45%+住民税10%)で、香港やシンガポールの約15%~20%と比較して高いという問題がある。

そこで、政府は2020年12月10日に取りまとめる「2021年度税制改正大綱」に「ファンド運用の報酬を金融所得と見なし20%の税率を適用する案」を盛り込む方針だったが、今回は見送りとなった。

しかし、香港やシンガポールは相続税が0%なので、日本に居住する外国人の海外資産については相続税を課税対象としないことが決定した。

 

吉村知事の構想

吉村大阪府知事は、大阪に世界初の本格的先物市場「堂島米市場」があったことから「デリバティブ」拠点と「フィンテック」(金融とITの組み合わせ)拠点を目指しているようだ。

しかし、日本にはデリバティブのプロ人材が少なく、その少ない人材の99%は東京に居住している。フィンテックについても、東京の会社の方が先行している。

大阪が国際金融都市を目指すとしても、国内の人材すら集められないのに、海外の国際金融のプロを集めても、彼らの都合のいいようなルールを作られて、大阪には何のメリットもないだろう。

そもそも「大阪に昔、米の先物市場があったから、デリバティブ拠点にする」という発想がいかがなものか? 海外の国際金融のプロにとっては、そんなことは「知らんがな」という世界だし、100年以上前の堂島米相場の人材なんて現在の大阪にはいない。

もし、本当に国際金融都市にするなら、大阪の大学院でデリバティブを教えることから始めないと無理だ。やはり、人材の育成のためには、10年単位の時間が必要になる。

国際金融の実務経験もない知事と、同じく国際金融の経験のない財界人がトップにいるようでは、最初から無理だと思う。

また、大阪が国際金融都市になれば、既存のシンガポール、上海、NY、ロンドンなどの国際金融都市で取引しているプロの投資家は不利になるわけで、大阪の国際金融都市構想をつぶしたいと思っているはずだ。それどころが、大阪で数兆円の利益あげて、日本国内の投資家が損するような「取引ルール」や「仕組み商品」を考えているかもしれない。

国際金融都市と言って、外国人が日本で投資するのは、不動産と日本の中小企業しかない。

例えば、沖縄では外国人が不動産を購入しており、不動産価格は上昇している。那覇市内のタワーマンションは5000万円~7000万円と大阪とほとほんど同じくらいまで値上がりしている。一方で沖縄県民の個人所得はそれほど上がっておらず、逆に沖縄県民の生活は苦しくなっている。

大阪が国際金融都市になれば、不動産を証券化しするだろう。これは土地の短期売買の税金適用を受けず、特区で導入される予定の証券の売買益の非課税制度により、日本に税金を払わないためだ。

また、複雑なデリバティブ取引で中小企業の株式を安く買いたたき、中小企業に高値で買い戻させることで出資法の利息制限を受けないスキームも考えているだろう。これは現実の話で、ユニゾHDの事例では地銀を中心に合計2,000億円の損失が出る可能性がある。

こんなのは初歩中の初歩で、国際金融の世界は日々新しいスキームが誕生し、それを理解していない人はほぼ確実に損をするという世界なのだ。

国際金融都市構想が浮上して半年以上経過しても国際金融の実務経験のある人が組織のトップに就任していない時点で、ほぼ「大阪国際金融都市構想」の失敗は見えている。

大阪にいる国際金融の経験者って、大手銀行から米ペンシルバニア大ウォートンスクールへの留学組が数人いる程度ではないか?それも現役の実務家というわけではなく、単に大学院に留学したに過ぎない。

SBIの北尾社長は、優秀な方と思うが、野球で言うと選手+監督+審判まで兼任するようなもので、やはり、人材が少ないという印象は否めない。

大阪国際金融都市構想を成功させるには人材の育成が必要で、そのために米ペンシルバニア大ウォートンスクールと提携して、大阪公立大にMBAコースを設置するくらいのことが必要だと思う。

そういう地道な人材育成もせずに、安易に税金を優遇して外資系金融機関を誘致するのは、いかがなものか?

 

国際金融の現実

米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引でクレディスイスが約5,900億円、野村證券が3,100億円など世界の超一流金融機関が合計1兆円の損失を計上している。

1兆5000億円相当の株式を「ブロック取引」していた米へッジファンドが追証を入れられず、損失が発生していると言われる。

ちなみに、SBIホールディングの北尾吉孝社長は野村証券出身だ。

クレディスイス、野村証券と言った国際金融のプロも1兆円という巨額損失を計上しているのに、国際金融の素人が集まって「なんちゃって国際金融大阪」なんて作っても、大阪の企業や市民が損するだけ。

日露戦争(1904年~1905年)では英ロスチャイルド家は日本の戦時国債を購入し、日本が勝利したことで多額の利益を得た。

戦争ですら、利益にするのが、国際金融の現実だ。吉村知事にそこまでの覚悟があるのだろうか?

 

税制改正大綱

政府は2021年度の税制改正大綱を2020年12月21日に閣議決定した。

事前の報道では「ファンド運用の報酬を金融所得と見なし20%の税率を適用する案」を盛り込むとされたが、結局、見送りとなった。

ただ、国際金融都市関係としては、就労のために日本に居住する外国人が日本で死亡した場合、その海外資産については日本の相続税の課税対象外となることが盛り込まれた。

国際金融都市に向けた税制上の措置(2021年度税制改正大綱)
  • 就労等のために日本に居住する外国人が死亡した際、その居住期間にかかわらず、外国に居住する家族等が相続により取得する国外財産を相続税の課税対象としない。
  • 投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる業績連動給与について、一定の要件の下、損金算入を可能とする。
  • リミテッド・パートナーシップの投資家である外国組合員に対する課税の特例について、持分割合要件等の見直しを行う。

 

「ファンド運用の報酬を金融所得と見なし20%の税率を適用する案」は官僚が発想しそうな案だが、財務省が反対したと思われる。

日本の所得税の最高税率は所得税45%で住民税10%と合わせ55%が課税される。シンガポールや香港の所得税率は約20%なので全く競争にならない。

今回は所得税20%適用範囲の絞り込みができなかったので見送りになったのかもしれない。日本が本気で国際金融都市を目指すならば、所得税20%は絶対条件となるので、数年後には実現するかもしれない。

 

福岡市の動き(国際金融都市)

産経新聞によると、福岡市は「国際金融都市構想で外資系企業の本社は東京や大阪に置くと見て運用部門、事務部門、中小規模の投資ファンドの誘致を目指す。」という。

引用 https://www.sankei.com/economy/news/210107/ecn2101070023-n1.html

さらに、九州経済連合会、福岡県、福岡市、地元有力企業、九州大学などの「産官学」が一体となって誘致活動をする。

特に、金融とIT(情報技術)を融合させた「フィンテック」の開発拠点とする方針。

 

大阪は国際金融センターになれるのか?

2021年最新の国際金融センター指数 Global Finacial Centers Index(イギリスのシンクタンクZ/Yen)
順位都市点数
1位ニューヨーク764点
2位ロンドン743点
3位上海742点
4位香港741点
5位シンガポール740点
6位北京737点
7位東京736点
8位深セン731点
9位フランクフルト727点
10位チューリッヒ720点
11位バンクーバー719点
12位サンフランシスコ718点
13位ロサンゼルス716点
14位ワシントンDC715点
15位シカゴ714点
16位ソウル713点
17位ルクセンブルク716点
18位シドニー712点
19位ドバイ710点
20位ジェネバ709点
32位大阪684点
圏外福岡
大阪は、国際金融センター指数(Global Finacial Centers Index)で世界32位と出遅れている。
一方、東京は世界7位を前年よりもランクは落ちたが、依然、東京の方が圧倒的に有利と言わざるを得ない。
そもそも、香港からの国際金融センター機能を誘致するのが目的だったが、香港は世界4位、上海が世界3位と、中国の都市が上位を維持している。

 

なぜ「大阪(関西)」と「福岡」なのか?

  • 政府は東京を国際金融センターとすることを目指してきたが、新型コロナウイルス感染拡大や災害を考慮してリスク分散のため方針を転換したとされる。
  • イギリスのシンクタンクによる「国際金融センター指数」は、ロンドン743点、上海742点、東京736点、大阪684点となっている。
  • やはり、外資系金融機関にとって東京の方がビジネスをしやすい。したがって、日本政府の意向にかかわらず、外資系金融機関は東京に拠点を移したり、拡張したりすると思われる。
  • 東京は日本政府が関与しなくても、国際金融都市になるから言及しないだけかもしれない。

 

バックオフィス拠点か?

  • 東京の災害リスクからバックオフィス的拠点を「大阪(関西)」と「福岡」に設置するのかもしれない。
  • 例えば、ニューヨークの大手金融機関は9.11以降テロに備えてバックオフィスを、隣接するニュージャージー州に設置してる。
  • ただ、ニューヨークとニュージャージーの位置関係は東京と横浜のようなもので、「大阪(関西)」と「福岡」はやや離れている。

 

香港から上海への移転を予想している

  • 中国政府は香港から上海へ外資系金融機関を移転させようとしている。
  • その上海に近い「大阪(関西)」と「福岡」に国際金融拠点を設置するのか?
都市都市間距離
上海那覇800km
福岡900km
大阪1,400km
東京1,800km

福岡や大阪は上海や香港に近いという地理的メリットがある。

 

香港、東京、大阪の違い

香港やシンガポールは、法人税も個人所得税(15%~20%)も安く、相続税、贈与税、株式土地の売却益(キャピタルゲイン)が非課税というメリットがあり、日本が国際金融センターになるには税制上のデメリットがある。
逆に日本が有利な点は、個人が不動産の所有権を取得できることだ。例えばシンガポールは外国人は不動産の所有権を所得出来ない。また香港は住宅価格が上昇しており、駐在員が賃貸する70㎡~80㎡の家賃は月額100万円を超えるし、条件のいい30㎡~40㎡のワンルームなら月額家賃40万円以上も珍しくない。

日本人から見ると、東京の家賃は高いが、香港人やシンガポール人から見れば、それほど高くなくデメリットではない。したがって、東京の方が国際金融センターとして適している。

 

大阪と東京の不動産ビジネスの違い

東京の不動産ビジネスは、株式市場から資金調達する「エクイティファイナンス」が発達している。一方、大阪は銀行からの融資資金で不動産を建設することが多い。

香港から金融センターを誘致するなら、大阪の商習慣から変化しないといけない。

また、海外から投資資金が大阪に投資されると、大阪の不動産価格が上昇する。東京よりも大阪のマーケットは小さく、簡単に不動産価格がバブル状態になる。

「国際金融センターを大阪に誘致」すると「デメリット」が必ずあるわけで、それも含めた「準備」は大阪は全くできていない。

 

国際金融特区が必要

大阪に国際金融センターを誘致すると言っても、大阪市全体を「国際金融センター」にするには10年~20年かかる。

数年で国際金融センターを立ち上げるには「特区」を指定して集中的に開発する必要がある。

例えば、ロンドンのシティ(国際金融センター)の面積は2.9㎢(290ha)で、それ以外に外国人居住用の土地1㎢~2㎢(100ha~200ha)も必要となるので、合計すると4㎢~5㎢(400ha~500ha)くらいの面積になると予想される。

 

国際金融センター特区候補地

  • 六甲アイランドの総面積は595haで面積的には十分だが、すでに開発が進んでおり、未利用地はそれほど広くない。
  • 大阪湾の「舞洲」(完成すれば395ha)は、かつて1988年の「テクノポート大阪」の候補地となったくらいなので「国際金融センター」としても十分機能すると思う。隣接する「夢洲」が2025年大阪関西万博とIR(統合型リゾート)が建設されるので、インフラなども共通として整備できるので相乗効果が期待できる。
  • 大阪空港(伊丹空港)の面積は周辺買収地も含め約400haで、モノレールや高速道路も整備されている。しかし大阪空港を廃港にする必要があり、すぐには着工できない。

六甲アイランドには外国人が多く居住しており、阪神高速湾岸線経由なら車で30分くらいで「大阪の夢洲・舞洲」に行けると思う。したがって「大阪の夢洲・舞洲」を国際金融センターとし、六甲アイランドを居住地とすることもあり得ると思う。

 

まとめ

  • 国際金融センターとしては、東京の方が圧倒的に適しているので、第1段階としては東京を国際金融センターとして先行すると予想される。
  • 第2段階として、大阪や福岡に「国際金融特区」を整備して分散させる。
  • 大阪・関西の「国際金融特区」の候補地は、大阪湾岸「舞洲・夢洲」、大阪空港(伊丹空港)、六甲アイランド(神戸市)などがあるが、大阪湾岸「舞洲・夢洲」が最有力。
  • 大阪・関西は「国際金融センター」について全く準備ができていない。
  • 国際金融センターを誘致すれば、不動産価格の上昇などデメリットがある。
  • 外国人だけ税制優遇すると地元市民が反対する可能性がある。
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