JR名古屋駅前
JR名古屋駅周辺には高さ100m以上の超高層ビルが10棟あり、東京駅周辺や大阪駅周辺に匹敵する超高層ビル街を形成している。
JR名古屋駅前(名駅)に限って言えば、日本三大都市に相応しい風格がある。
(以下、大阪府民が実際に名古屋に行って感じたことを、書いています。)
名古屋市と愛知県は合計20億円の補助金を出して、高級ホテルを誘致している。
ちょっと目線を変えて、観光客の意見を知ることも、名古屋市や愛知県の参考になるのでは?
名古屋駅前のホテル(高さ約115m・25階)から、北方向を撮影
名古屋駅周辺以外は低層ビルばかりで、名古屋市全体を見れば、やっぱり、東京や大阪よりも発展はしていない。
その理由は、名古屋の地下鉄が不便な点にあると思う。
オアシス21(栄)
大阪と名古屋の地下鉄の比較
大阪メトロは8路線、名古屋市営地下鉄は6路線で、数字の上では大差はない。
しかし、実際に名古屋の地下鉄を利用してみると、大阪に比べるとかなり不便だ。
まず、大阪にはJR大阪環状線があるが、名古屋は名城線が環状運転を行っている。
そのため、大阪メトロ8路線に対して、名古屋地下鉄は実質5路線となる。しかも、名古屋の名城線は、JR名古屋駅に乗り入れていないので、大阪環状線よりも不便。
さらに、大阪は、京阪(本線・中之島線)、近鉄(阪神なんば線)、JR東西線、南海本線なども大阪市内に乗り入れており、実質12路線と言っていい。
しかし、名古屋の場合は、名古屋鉄道は名古屋市の郊外に線路があり、名古屋鉄道「瀬戸線」も栄駅止まりで、名駅には乗り入れていない。
大阪市内の私鉄に比べると不便な名古屋鉄道「瀬戸線」を入れても、名古屋は実質6路線しかない。
つまり、名古屋中心部の鉄道路線は実質(6路線)で、大阪の実質(12路線)の半分しかない。
大阪と名古屋の地下鉄の違い
大阪の地下鉄は、JR大阪駅(梅田)を中心に建設されている。しかし、名古屋の地下鉄は「栄」に路線が集中している。
20年前までは、名古屋の中心は「栄」だったと思うが、今では、「名駅(名古屋駅)」の方が名古屋の中心だと思う。
名古屋の都市機能の中心が「栄」から「名駅」に移動しているにもかかわらず、鉄道の中心が「栄」のままなので不都合が生じている。
オアシス21の屋上階の「水の宇宙船」
名古屋を代表する都心の観光施設「オアシス21」にほとんど誰もいない。(写真に写っていないが、観光客は2~3名はいた)
車社会では、都市全体を面的に発展させることはできないと思う。
観光客と名古屋市民との見方の違い
あくまでも観光客目線で、失礼ながら「名古屋は不便」と書いたもので、名古屋に住んでいる人は場所によって地下鉄と車を使い分けていると思うので「名古屋は便利」と思っていると思う。
実際、名古屋市内に滞在して、タクシーを利用したので、トータルで考えれば不便ではないが、地下鉄限定で言うと大阪に比べると名古屋は不便だと思う。
ただ、観光客と住民の感じ方は違って当然で、どちらが正解というものではないと思う。
「住めば都」というのが正しいと思う。
JR名古屋駅に超高層ビルが集中している理由
超高層ビルはその用途がオフィス、ホテル、商業施設であっても、多くの人を集客しないと採算がとれない。
広範囲から集客できる場所は、名古屋駅周辺しかないので、名古屋駅に超高層ビルが集積している。
近年は、栄にも超高層ビルが建設されつつあるが、名古屋市内で超高層ビルが建設できる地区は集約力のある「JR名古屋駅(名駅)」と「栄」の2か所くらいしかない。
名古屋駅の西側(名駅以外に高層ビルはない)
名古屋が大阪を超えるには?
名古屋が大阪を超えるには、やはり、地下鉄を新規で5路線~7路線建設するしかないと思う。
逆に言うと、それができれば、名古屋が大阪を超えることは可能だと思う。
しかし、地下鉄1路線を建設するには10年~20年かかるので、5路線を建設するには50年~100年かかる。
ちなみに、地下鉄の建設コストは1km当たり400億円で、5路線(合計50km~100km)の合計の建設コストは2兆円~4兆円になる。
したがって、名古屋が大阪を超えるのは、かなり難しいと思う。
名古屋は、今後50年~100年後の都市計画を立案する必要があるのではないか?
鉄道と自動車の輸送力の違い
商業施設の駐車場は3,000台くらいが多い。
1日3回転して累計9,000台、1台に2名乗車で、1日の集客数は1.8万人になる。
一方、10両編成の鉄道なら1,000人を輸送できる。1時間当たり10本として、1時間の輸送力は1万人となる。10時間なら10万人を輸送できる。
都会の場合、鉄道路線が2路線あると、輸送力は1日10時間で20万人となる。
条件は違うので一概に言えないが、イメージとして都会の鉄道の輸送力は、車の10倍の集客力があるかもしれない。
大阪駅には、JR東海道線(京都線・神戸線)、JR大阪環状線(内回り・外回り)、JR福知山線、JR東西線、阪急京都線、阪急宝塚線、阪急神戸線、阪神本線、大阪メトロ御堂筋線、大阪メトロ四つ橋線、大阪メトロ谷町線と数多くの鉄道が乗り入れている。
その結果、梅田のデパートは日曜日で1日20万人が来店する。また、リンクス梅田やグランフロン大阪なども1日10万人~15万人の来店客がいる。
自動車で10万人を集客するなら3万台の駐車場が必要になる。
したがって、車社会の名古屋では、大阪を絶対に超えられない。
自動運転で衰退する名古屋
自動運転が普及すると鉄道のない場所も便利になる。しかし、それは過疎地だけのことで、都市部は交通渋滞が悪化して、都市機能が低下する可能性がある。
東京、大阪は鉄道が主体なので、自動運転の普及による交通渋滞悪化の影響は少ない。
しかし、名古屋は車社会なので、自動運転が普及すると通行する車の台数が増加して、交通渋滞が悪化し、都市機能が弱体化する。
自宅から都心の超高層ビルに自動運転で通勤する場合
例えば、高さ150mの超高層ビルの延床面積は約10万㎡で、オフィス面積は約6万㎡。従業員1名当たりのオフィス面積は10㎡なので、6,000人が勤務することになる。
午前8時~午前9時の1時間に出勤する場合、超高層ビルの車寄せに停車して降車するのに1台当たり2分かかるとする。
車寄せに同時に10台停車できるとすると2分間で10台(10人)が降車できる。しかし、1時間で300人しか降車できない。
したがって、自動運転が普及しても、都心の超高層ビルに鉄道のない地域から直接通勤するのは不可能と言える。
パーク&ライドでも無理
自動運転が普及しても、大都市では最寄りの鉄道駅まで自動運転で行って、鉄道に乗り換える「パーク&ライド」が現実的となる。
例えば、名古屋市内の約100駅をパーク&ライドで利用するにしても、同時停車10台なら1時間300台(300人)しか利用できない。
100駅合計でも3万人しか利用できないので、自動運転で名古屋の交通が飛躍的に便利になることはない。
むしろ、自動運転の普及で、車社会の名古屋は道路渋滞が悪化し、都市機能が弱体化し、名古屋が衰退する可能性が高い。
現在のところ、名古屋市内で地下鉄新路線の計画はないので、自動運転が普及する10年後には、間に合わない。
つまり、名古屋が衰退することはほぼ確定している。
大阪市と名古屋市の比較(平成27年国勢調査)
都市名 | 夜間人口 | 昼間人口 | 面積 |
大阪市 | 269万人 | 354万人 | 223㎢ |
名古屋市 | 230万人 | 259万人 | 326㎢ |
大阪市の昼間人口(通勤・通学を含む)は、354万人で名古屋市の259万人より約100万人多い。
これは、鉄道が発達している大阪と車社会の名古屋の差と言える。
車で100万人が名古屋都心に通勤、通学することは不可能だ。
また、名駅と栄に100万台の駐車場を建設することも無理だ。
したがって、鉄道5路線(50km~100km)を新規で建設するしかないが、建設期間は50年~100年、建設費は2兆円~4兆円かかるので、今後50年では実現困難だ。
つまり、名古屋が大阪を超えることは今後50年以内では不可能ということだ。
今後予定される大阪の鉄道路線・新駅
開業年 | 路線・駅 |
2023年 | JR大阪駅(うめきた地下ホーム) |
2024年 | 北大阪急行・箕面延伸 |
2028年 | 大阪メトロ中央線・延伸「(仮)森之宮新駅」 |
2029年 | 大阪モノレール延伸 |
2031年 | なにわ筋線(関空アクセス鉄道) |
2031年 | 阪急「新大阪駅連絡線・なにわ筋線連絡線」 |
2028年代以降(未定) | 近鉄・大阪メトロ直通化 |
2030年代以降(未定) | 京阪中之島延伸 |
2030年代以降(未定) | JR桜島線延伸 |
2037年(延期予想) | リニア中央新幹線・新大阪延伸 |
2046年(未定) | 北陸新幹線・新大阪延伸 |
リニアで名古屋市全体は衰退
名古屋駅前のリニア中央新幹線工事
2027年開業予定の中央新幹線(リニア)が開通すれば、名古屋が発展するという見方がある。
たしかに、名古屋市内全体から名古屋駅に企業が集積すると思うが、名古屋市全体を見れば、企業が名古屋駅に移転するだけで、名古屋市全体では経済効果は少ない。
むしろ、企業や店舗が名駅に集中することで、名駅以外は衰退し、名古屋全体を見れば不便な地域が拡大する。
名駅は発展するだろうが、名駅周辺の定住人口はあまり増加しない。
名駅以外が不便になると名古屋全体の人口は減少する可能性がある。
リニアよりも地下鉄
名古屋が発展するには、名古屋中心部分に地下鉄を建設することだと思う。
しかし、地下鉄の建設コストは1km400億円なので、簡単には建設できない。
名古屋はリニアに踊らされ、逆にリニア以外の発展シナリオを持っていないため、名古屋が衰退することはほぼ確実だ。
そのリニアも2027年開業は絶望的だし、リニアが開通できなければ、リニア開通に最適化した名古屋の都市計画そのものが失敗に終わるかもしれない。
結局、リニアが開通してもしなくても、名古屋全体を見れば衰退することは確実だ。
大阪のメリットは「地下鉄」「USJ」
大阪の観光施設と言っても、全国的に有名なものは「大阪城」「USJ」「海遊館」くらいしかない。
名古屋にも「名古屋城」「名古屋港水族館」などがあり、観光施設の数ではそれほどの差はない。
三重県ではあるが「ナガシマリゾート」の年間入場者数は1,500万人(2018年)と健闘しているが、東海三県からの日帰り観光が中心となっている。
しかし、USJの年間入場者数は1,460万人(2017年)で、日本全国や海外から宿泊客を集客できている。
名古屋に足りないのは日本全国、海外から宿泊滞在する観光客を集客できる観光施設だと思う。
市内のホテルに滞在して、都市観光するためには、やはり、地下鉄が発展していないと不便だと思う。
車で観光してもいいが、日曜など観光施設の駐車場は満車で、待ち時間が20分~30分かかることもある。
海外から宿泊客もレンタカーを借りることもあるが、やはり、地下鉄の方が便利だと思う。
京都へのアクセス
大阪から京都に新快速で29分で行けるが、名古屋からも新幹線で34分でいけるので、時間的な有意差はない。
しかし、運賃は大阪=京都は570円、名古屋=京都は5,170円と約10倍違う。
但し、海外観光客は新幹線・特急の乗り放題「ジャパンレールパス」(7日間・33,610円)を利用できるので、運賃差は関係ないこともある。
奈良へのアクセス
「大阪難波駅」=「近鉄奈良駅」の乗車時間は38分(運賃570円)と大阪市内に滞在すれば奈良へも日帰りで簡単に行ける。
まとめ
大阪のメリットは地下鉄で大阪市内のほとんど場所にアクセスできるという点が大きい。
簡単そうに思えるが、実は「地下鉄でどこでも行ける」を実現するのはかなり難しい。
例えば、京都市や神戸市の地下鉄は2路線しかなく、京都の観光以外は衰退傾向で、2都市とも人口は減少している。
大都市の地下鉄の建設コストは1km当たり400億円と高額なので都市の規模が大きくないと「地下鉄でどこでも行ける都市」を実現することはできない。
実際、「地下鉄でどこでも行ける都市」を実現したのは「東京」と「大阪」しかない。
その大阪は、1933年に地下鉄が開通したので、「地下鉄でどこでも行ける都市」を実現するにはやはり50年~100年かかる。
さらに、大阪から京都、奈良、神戸、姫路、有馬温泉、高野山などの世界遺産へ日帰りで簡単に行ける。
大阪はまさに世界遺産の中心の都市であり、外国人観光客が大阪に滞在するのは当然と言える。
名古屋は大阪に比べると市内交通は不便だし、普通電車を利用して30分~1時間でいける世界遺産はない。
大阪は地下鉄をもっと便利にすべき
大阪市内の地下鉄は碁盤の目のようにあり、非常に便利であるが、エスカレーターがない駅も多く、まだまだ不便な点も多い。
数百億円、数千億円の観光施設を作ることも大事ではあるが、大阪はもっと地道に地下鉄を便利にすべきではないか?
名古屋市単独では海外から集客はむずかしい
名古屋市内には、USJや東京ディズニーリゾートなどの大型のテーマパークはなく、名古屋市単独で、海外から観光客を集客するのは難しい
名古屋は京都に近い
名古屋=京都は新幹線で34分(運賃5,170円)、大阪=京都は新快速29分(運賃570円)と所要時間は大差ない。
もちろん、運賃は約10倍違うが、訪日外国人用の「ジャパンレールパス(33,610円・7日間)」を利用すると、新幹線も乗り放題となるので、運賃の差は問題にならない場合もある。
関空=京都=中部空港ルート
関空=京都=東京は、訪日外国人にとってゴールデンルートと呼ばれている。
名古屋が訪日外国人を誘致するには、名古屋単独では魅力に欠ける。
したがって、大阪、京都、三重などと協力して、関空=京都=伊勢志摩=中部空港ルートを開発すべきではないか?
一都市だけで、訪日外国人を誘致しようと思っても限界がある。
それは、大阪から電車で20分の港町が単独で税金を投入して訪日外国人(客船)を誘致したても、9割の客が大阪や京都へバスで直行したことでも分かることだ。