神戸市役所
2019年7月10日、総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査では、神戸市に住む日本人は「前年比6,235人」減少し、全国自治体の中で人口減少数ワースト1となった。
2019年1月1日 神戸市人口(日本人) | 1,489,820人 |
自然増減(出生数-死亡数) | -5,037人(前年比減少) |
社会増減(転入数-転出数) | -1,198人(前年比減少) |
増減合計 | -6,235人(前年比減少) |
コメント
2017年5月から、ブログを本格的に書き始めたが、当時から神戸の再開発はうまくいっていない印象があった。
それをストレートに書いたため、神戸の一部のみなさんにとっては「見たくない神戸」であり、単なる神戸嫌いの「悪口」と思った人も多かったと思う。
しかし、当ブログが2年前に書いた「見たくない神戸」が現実になってしまった。
人口減少は神戸だけの問題ではない
神戸は再開発に失敗し、人口減少が加速して日本最悪の人口減少数となった。
しかし、首都圏と沖縄以外の42道府県は人口減少しており、兵庫・神戸だけが人口減少しているのではない。
都府県名 | 人口 | 増減人数 |
東京都 | 13,189,049人 | +73,205人(+0.56%) |
神奈川県 | 8,976,954人 | +4,184人(+0.05%) |
千葉県 | 6,157,685人 | +2,044人(+0.03%) |
埼玉県 | 7,200,193人 | +1,364人(+0.02%) |
沖縄県 | 1,458,686人 | +2,564人(+0.18%) |
大阪府 | 8,613,021人 | -18,154人(-0.21%) |
京都府 | 2,494,923人 | -11,278人(-0.45%) |
兵庫県 | 5,462,316人 | -23,336人(-0.43%) |
神戸市のタワーマンション規制
日本各地の都市は、市街地に超層ビルを建設して、人口を増加させようとしている。
しかし、神戸市は、敢えて便利な都心のタワーマンションを規制し、郊外に人口を誘導しようとしている。
なぜだろうか?
神戸市の人口は前年比で-6,235人減少しているが、そのうち自然減は-5,037人で、社会減-1,198人となっている。
つまり、出生数が少ないことが人口減少の一番の要因となっているのだ。
東京都は人口増加しているが、合計特殊出生率は1.21人で全国最低となっている。
東京のように都心にタワーマンションが林立すると、子供1人世帯が増加し、出生数が少なくなるという仮説が考えられる。
この仮説が正しいならば、神戸市が都心のタワーマンションを規制し郊外に人口を誘導しようとする試みは、ある程度理解できる。
しかし、中国も1966年~1976年の文化大革命で、都市から農村へ人口を移動させたが、完全に失敗し中国経済は破綻した。
神戸市の「郊外に人口を誘導する施策」は今のところ日本最悪の人口減少という結果になっているが、今後成功するのだろうか?
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JR三ノ宮駅前(2019年6月)
JR西日本は2013年の中期経営計画に「三ノ宮駅再開発の検討」を盛り込み、神戸市との協議を重ねてきたが、2019年現在、既存駅ビルの解体に着手しただけだ。
逆に、神戸市は「三ノ宮駅周辺の景観規制(高さ規制)」「タワーマンション規制」と再開発に否定的な動きをしている。
「神戸阪急ビル東館」完成予想図(2021年春竣工予定)
阪急電鉄は、2021年春の竣工を目指して、「神戸阪急ビル東館」(延床面積 28,500平米 高さ120m)の建設を進めている。
出典 阪急阪神東宝グループ
神戸阪急ビル東館の敷地は上図の赤い線で囲まれた「約7,100平米」で、容積率は区画にり700%と800%に分かれる。
平均容積率を750%とすると、延床面積は約53,000平米となるが、すでに駅舎部分で「地上階+改札階+ホーム階」で300%使っているので、残りの容積率は450%となる。
7,100平米 × 450%≒32,000平米となり、実際の延床面積28,500平米に近い数字になっている。
神戸阪急ビル東館の容積率
容積率 | 延床面積 | |
神戸阪急ビル東館 | 700%・800% | 約28,500平米 |
都市再生緊急整備地域の上限の場合(神戸阪急ビル東館) | 上限2,000% | 約142,000平米 |
ミント神戸(神戸新聞社) | 1,602%(参照 wiki) | 41,000平米 |
阪急電車としては、阪急神戸線を地下化し神戸市営地下鉄山手線と接続し、現在の神戸三宮駅の敷地「7,100平米」に、約142,000平米という巨大ターミナルビルを建設する計画だったのではないか?
しかし、阪急神戸線の地下化に10年以上かかる上に、神戸市との調整が長引いたため、「神戸阪急ビル東館」の建替が完成するのは2030年以降になってしまう。
そこで2016年に妥協して「延床面積28,500平米」の小規模な駅ビルになったのではないか?
同じ計画図(上図)でJR三ノ宮駅の敷地を見ると、12両編成の新快速も停車できるホームで阪急よりも敷地面積が大きく「約10,000平米」以上と思われる。
都市再生緊急整備地域の上限容積率2,000%ならば、3層の駅舎部分で30,000平米を使っても、延床面積1700,000平米の巨大ターミナルビルも建設できると思われる。
当ブログの分析では、神戸市次第では、今ごろ、「神戸阪急ビル140,000平米」と「JR三ノ宮駅ビル170,000平米」の再開発ができた可能性がある。
もし、この再開発が完成していたならば、神戸の人口はこれほど減少しなかったはずだ。
それをしなかったのは、巨大駅ビル内で買物、飲食、宿泊、仕事が完結して、三宮駅~元町周辺の個店の売上が減少すると懸念したからかもしれない。
もし、JR三ノ宮駅ビルも「神戸阪急ビル東館」と同じ条件で建替するならば、延床面積40,000平米程度(ミント神戸と同規模)になると予想される。
また、神戸市は現在6両のポートライナーを8両化する計画があり、そのために、JR三宮駅ビルを西側に移動して建設する意向かもしれない。
そうすると、JR三宮駅ビルのアクセスが悪化するので、JR西日本としては受け入れられないだろう。
JRの場合、阪急と違い、線路を地下化する必要はないので、今後10年~20年かけても延床面積10万平米~15万平米の巨大駅ビルを建設するのではないか?
「新三宮駅ターミナルビル」の規模は、500室くらいのホテルと5万平米以上の商業施設(百貨店など)ではないだろうか?
そうなると、「神戸そごう(2019年10月から神戸阪急)」は、百貨店という業態での存続は難しいかもしれない。
また、JR三ノ宮駅から徒歩約10分の「大丸神戸店」もかなりの影響を受けるかもしれない。
実際、JR名古屋駅ビルに「ジェイアール名古屋タカシマヤ」が出店し年間売上高1,617億円と驚異的な売上高を記録している。
その結果、名古屋市の栄地区の老舗デパートは廃業に追い込まれた。これと同じことが神戸でも起こるかもしれない。
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神戸空港
神戸空港に経済効果あるのか?
2006年2月に開港した神戸空港の年間利用者数は、近年増加しており、2018年度は319万人となった。
しかし、神戸市の人口は全国最悪の年間-6,235人の減少となっている。
空港を活性化すれば、都市が発展すると思わているが、神戸の場合は逆に人口が減少している。
はたして「神戸空港」に経済効果があるのか?
神戸空港「売上高」試算
売上高 | |
関西エアポート神戸 | 27億円 |
エアライン各社 | 160億円(平均運賃1万円× 319万人/2) |
合計 | 187億円 |
関西エアポート神戸の売上高の中には、神戸空港の着陸料やターミナルビルの売上が含まれる。
また、神戸空港の年間利用者は319万人(2018年度)だが、平均運賃1万円とすると、約319億円が、到着空港と出発空港に2分の1ずつ割り当て、神戸空港の売上も半分の160億円とする。
合計すると神戸空港の売上高は約187億円で、郊外のSC(ショッピングセンター)程度しかない。
しかも、神戸空港利用者の319万人のうち57万人は羽田ー神戸ー長崎の経由便客であり、神戸空港の外に出てこない。
また、神戸空港ー羽田空港の利用者数は113万人であり、神戸空港がなかった場合、新幹線を利用していたと予想される。
つまり、神戸空港ー羽田空港の利用者数113万人分の新幹線利用者が減少していると予想される。
したがって、神戸空港が開港したことにより、新たに需要が伸びたわけではない。
例え、神戸空港の規制緩和をして年間利用者数600万人となっても、経済効果という点では、年間売上300億円程度の郊外型ショッピングセンターくらいしかない。
これでは、神戸市全体が活性化するはずもない。
神戸空港の規制緩和は神戸市の活性化のためではなく、一部の利権者のためかもしれない。
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2018年11月撮影
神戸市は、1995年の阪神淡路大震災の復興のために、1998年に「神戸医療都市構想」の検討を始めた。
20年間の総事業費は4,400億円で、2018年には、日本最大級の「バイオ・メディカル・クラスター」に成長したとされる。
しかし、「神戸医療都市構想」の最大施設は、「旧神戸市立中央市民」をポートライナーの1駅先の「神戸医療都市」のエリアに移転させた「神戸市立医療センター中央市民病院」だ。
当ブログの分析では、「神戸医療都市構想」が順調に拡大しているように見せるために、市民病院を1駅先の「神戸医療都市」のエリアに移転させた可能性がある。
神戸医療都市に経済効果はあるのか?
もし、経済効果があるなら、なぜ神戸市の人口は減少するのか?
まとめ
日本全体で人口が減少している状況で、神戸市は「人口を増加」させるつもりはないのだろう。
確かに、三宮駅周辺にタワーマンションを建設すれば、人口は増加するかもしれない。しかし、タワーマンションを建設できるのは大阪や東京の大手建設会社だけで、神戸の中小建設会社にはメリットがない。
しかも、神戸のタワーマンションを購入するのは大阪の会社に勤務する富裕層であり、神戸人は神戸に建設されるタワーマンションを購入できない。
したがって、単に数字上、神戸の人口を増加させるために、タワーマンションを建設することは、神戸人にとっては経済的メリットがない。
また、神戸市の都心「中央区」の人口が増加しても、神戸市西区、北区の郊外の人口が減少すれば、鉄道やバスの運行本数が減少し、さらに過疎になるという悪循環に陥る。
そうなると、神戸市全体の人口がさらに減少してしまう。
それを回避するために、新神戸駅~三ノ宮~元町~JR神戸駅という広範囲のエリアの住宅の容積率を400%に制限し、実質的に10階以下のマンションしか建設できなくしたと思われる。
今後の神戸
タワーマンション規制前でも神戸市は年間約6,000人減少しているので、タワーマンション規制が施行される2020年以降は、毎年8,000人~10,000人ずつ人口が減少する可能性がある。
1年~2年前は、大阪のホテルは週末3万円以上の部屋しか空室がなく、多くのビジネスマンが神戸市内のホテルに宿泊した。
しかし、大阪市内では年間1万室のホテル客室が供給されており、今後、大阪市内でも1万円以下で宿泊できるようになる。
そうなると、神戸のホテル需要は急減し、さらに、神戸の衰退に拍車がかかると思われる。