神戸空港
2019年度の神戸空港の利用者数は約329万人で全国第11位に躍進したが、神戸市の人口は減少し続けており、神戸空港に経済効果があるのだろうか?
神戸空港の勤務者数
神戸空港 | 大阪空港 | |
勤務者数(従業員数) | 1,069人 | 5,980人 |
事業所数 | 34事業所 | 112事業所 |
勤務者年間給料合計(推定) | 53億円(推定) | 299億円(推定) |
年間空港利用者数(2019年度) | 3,292,298人 | 15,764,661人 |
出典 関西エアポート(2018年12月1日時点)
神戸空港の勤務者の属性については公表されていないが、大阪空港の調査内容では勤務者とは「官公庁職員」「航空会社職員」「旅行代理店(鉄道・バス)職員」「物販・飲食従業員」「建設業従業員(改修工事?)」とされている。
また、勤務者給料合計は1人平均年収500万円で試算した。
神戸空港の年間空港利用者100万人当たり勤務者数は約324人で、大阪空港は約263人となっている。これは「規模の利益」というもので空港でも利用者の多い空港の方が経済効率がいいと言える。
しかも、神戸空港は2014年に航空貨物の取り扱いを中止しているので貨物担当者がいない分、大阪空港よりも空港利用者100万人当たりの勤務者が少なくてもいいはずだが、そうなっていない。
営業収益(売上高) | 26億6300万円 |
営業利益 | 5億400万円 |
経常利益 | 3億7200万円 |
当期純利益 | 3億2200万円 |
出典 関西エアポート神戸(株)
関西エアポート神戸(株)の売上高は約27億円だが、神戸市の資料によると平成28年度の神戸空港の着陸料等収入は10.2億円であり、民営化して収入が16.8億円も増加している。もしかしたら神戸空港のターミナル使用料収入が加算されているのかもしれない。
単位億円(出典 神戸市)
1日80便(40往復)に増便されたことにより、神戸空港の売上高は年間30億円程度に増加するのではないか?
上記では、神戸空港の着陸料や空港ターミナルの賃貸料などを「神戸空港の売上高」としたが、航空会社の運賃収入(売上高)は含まれていないので「航空会社(エアライン)の売上高」を試算してみる。
- 神戸空港~羽田空港の片道運賃を12,000円~14,000円とする
- 神戸空港~新千歳・沖縄の片道運賃を15,000円~20,000円とする
航空運賃だけを購入する以外にもツアー料金として一括で購入することもある。その場合の航空運賃部分は一般販売運賃よりも安いことを考慮して、1名片道運賃を平均14,000円で試算してみます。
但し、神戸空港~羽田空港の片道運賃14,000円としても、神戸空港寄与分は1/2の7,000円とする。
2019年度の神戸空港の年間利用者数は3,292,298人なので、エアラインの運賃収入合計は230億4600万円と試算できる。
- 神戸空港の雇用創出効果は1,086人
- 神戸空港の直接経済効果(売上高ベース)は年間257億円
当ブログの試算では、神戸空港は「従業員1,000人、売上高250億円程度の中型ショッピングモール程度」の経済効果しかないと思われる。
「直接の経済効果」以外に神戸空港を利用する観光客などが神戸市内で支出する「波及効果」があるが、そもそも、最も多い大阪圏からの日帰り観光客は神戸空港を利用しない。
また関東圏からの観光客も新幹線の方が便利なので「神戸空港」がなくても不便ではない。
神戸空港の利用者の半数以上は他府県民と予想される。
例えば大阪府民の場合は神戸空港を神戸三宮を素通りして「神戸空港」に直行するので神戸市内への波及効果は限定的だ。
1日80便(40往復)となったことで神戸空港の年間利用者数が100万人増加し年間利用者数が400万人となっても、伊丹空港の年間利用者数1,600万人の4分の1でしかない。
伊丹空港の雇用者数は約6,000人なので、その4分の1としても雇用者は1,500人程度になるだけだ。現在の神戸空港の雇用者数1,086人と比較しても400人の雇用者創出効果しかない。
2020年5月1日時点の神戸市の人口は1,520,668人で2015年からの5年間で-17,192人減少しており、1年平均では-3,438人減少している。
したがって、神戸空港の1日80便への増便により、神戸市の人口減少を食い止めることは期待できない。
神戸空港の増便でなんとなく「神戸経済」が上向くという「ふんわりとした期待感」が漂っているが、冷静に「経済効果」を見極める必要がある。
そのためにも「専門家」に「計算式」を示した上で「経済効果」を試算してもらいたい。