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JR東海は、なぜ「リニア中央新幹線」を建設するのか?品川=名古屋 総工費7兆円に増加

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リニア中央新幹線の建設の目的(一般的な理解)

現在の東海道新幹線は、1964年の開業以来50年以上が経過し、将来的に大規模修理が必要となる。

しかし、新幹線の営業時間は午前6時~深夜24時なので、保守時間は深夜24時~午前6時の間しかなく、大規模修理は困難となる。

そのために、リニア中央新幹線を新規に建設するとされる。

果たしてそれだけが理由なのか?

 

リニア(品川駅=新大阪駅438km)の所要時間は67分だが、東京駅=品川駅間(約7km)は山手線乗車時間10分と品川駅でのリニア乗換時間10分が必要になるので、東京駅=新大阪駅の所要時間は87分となる。

一方、リニアルートに平均時速300kmの次世代新幹線を敷設すると450km(東京駅=新大阪駅)の距離で所要時間は90分となり、リニアと次世代新幹線の所要時間はほとんど同じとなる。

輸送人員もリニアは16両で1,000名だが、新幹線は16両で1,323名と新幹線の方が座席数が多い。

しかも、リニア速達型は1時間片道4便だが、「のぞみ」は1時間片道12便と圧倒的に新幹線の方が断面輸送力が大きい。

また、建設費はリニアの方が1兆円以上高く、リニアの電気代は新幹線の3倍かかるので「リニア」よりも「次世代新幹線」を建設する方が合理的だ。

(2021年4月、JR東海はリニア中央新幹線の総工費が従来計画の5.5兆円から1.5兆円増加し、7兆円になると発表した。また、2027年の開業は難しいとの見方を維持している。)

 

リニア中央新幹線の所要時間

区間 距離 所要時間 開業時期 総工費
リニア(新幹線比) 現行新幹線
品川~名古屋 286km 40分(-50分) 90分 2027年 7兆円
品川~新大阪 438km 67分(-71分) 138分 2037年 10.5兆円

品川駅=新大阪駅の所要時間は現在の2時間18分から、67分と71分も短縮される。

  • しかし、実際には品川駅と新大阪駅は地下40mの地下駅となるため、それぞれの駅で5分~10分程度の乗換時間が余計にかかる。
  • また、リニア中央新幹線は東京駅始発ではなく品川駅始発のため、東京駅~品川駅の山手線所要時間10分がさらにかかる。
  • そのため、リニアが開通しても、東京駅=新大阪駅の所要時間は実質87分~97分(乗車時間67分+乗換時間20分~30分)となる。

 

一方、新幹線は、東北新幹線で時速320kmの営業運転を行っており、リニア中央新幹線のルート(線路長450km)を平均時速300kmの新幹線を建設すれば、所要時間は90分となる。

結局、「リニア」の所要時間は67分だが、乗り換え含めると実質87分~97分となり、「時速300km新幹線」の所要時間90分と大差ない。

 

リニア中央新幹線の断面輸送力

交通機関 座席数 1時間当たり片道便数(速達型) 1時間当たり片道輸送人員 車両数
リニア 1,000座席 速達型4本 4,000人 16両
新幹線のぞみ 1,323座席 のぞみ12本 15,876人 16両

リニア速達型の断面輸送力は「新幹線のぞみ」の4分の1しかない。

一般的には、リニアが開通すると速達型はリニア、現在の東海道新幹線は各駅停車型(こだま)中心と役割分担すると考えられている。

しかし、リニアの断面輸送力は新幹線の4分の1しかないので、リニアが開通しても「新幹線のぞみ」の方が利用者が多いと予想される。

リニアの事業費は名古屋までで7兆円(全線で10.5兆円)なのに、なぜ、新幹線の4分の1の断面輸送力しかないリニアを建設するのか不可解だ。

 

リニア運賃と採算性

出典 https://twitter.com/fOkPNAybnM1K8lr

リニア中央新幹線の運賃は、品川駅=名古屋駅間で「のぞみ運賃」+700円、品川駅=新大阪駅間は「のぞみ運賃」+1,000円と予想されている。

また断面輸送力はリニアは片道4,000人/時間で、新幹線のぞみの片道15,876人/時間の4分の1しかなく、したがって運賃収入総額もリニアは新幹線の4分の1でしかない。

名古屋までの総工費は7兆円だが、現在の「のぞみ運賃」+700円の運賃の値上げ(増収)しかないので、採算的には実質赤字事業と思われる。

JR東海が採算性に疑問がある事業に7兆円も投資して建設するのは不可解だ。

当ブログ試算

交通機関 東京=大阪間のCO2排出量 1座席当たりの電気代・燃料費
新幹線 1倍 200円~300円
リニア 3倍 600円~900円
飛行機 20倍 1,000円

リニア運賃は品川=名古屋で「のぞみ+700円」、新大阪駅まで「のずみ+1,000円」だが、これは新幹線の約3倍と言われる電気代の相当の値段で、リニア建設費7兆円(全線10.5兆円)は考慮されていないと思われる。

つまり、リニア建設費は現在の新幹線の収益で減価償却するつもりではないか?

ちなみに鉄道用トンネルの耐用年数は60年、鉄道車両は13年なので、リニア鉄道設備の平均耐用年数を50年とし、減価償却費を定額で試算すると、名古屋までで年間1,400億円、新大阪までで年間2,100億円となる。

 

リニア輸出は絶望的

このようにリニア事業は単体で赤字なので、採算面からリニアの輸出は絶望的と思われる。

具体的試算すると、リニアは線路長約438kmで総工費10.5兆円だが、空港を2ヵ所建設(約1,000億円~2,000億円)、大型機20機(約4,000億円)を導入しても1兆円もかからない。

結局、飛行機20機と2空港の建設費の合計金額より、10倍以上高いリニアを輸入する国はないだろう。

 

リニア座席数

車両 両数 座席数
先頭車 2両 24席×2両
中間車 14両 68席×14両
合計 16両 1,000座席

しかも、時速300km新幹線ならば、東京駅から岡山駅や広島駅も乗り換えなしで1時間短縮できる。

どう考えても、時速300km新幹線の方が利便性が高く、低コストで建設できる。

 

当ブログが推測する「JR東海の考え」

JR東海の営業エリア

JR東海の在来線の営業エリアを見ると、まさに東海地方だけだ。

もし、東京=新大阪に「第2東海道新幹線(時速300km)」を建設するなら、JR西日本、JR東海、JR東日本の3社共同運行となる可能性がある。

実際、北陸新幹線はJR東日本とJR西日本の共同運行となっている。

JR西、JR東海、JR東の3社共同運行ならば「第2東海道新幹線(時速300km)」予想年間売上1兆2000億円、予想経常利益6,000億円は、線路長に比例してJR3社で分割することになるだろう。

そうなるとJR東海の新幹線売上高は1兆2000億円から6,000億円へと半減する。

JR3社の共同運行の売上高予想
会社 JR西日本 JR東海 JR東日本
区間 新大阪~米原 米原~甲府 甲府~東京駅
距離 約100km 約220km 約120km
比率 約23% 約50% 約27%
売上高 2,760億円 6,000億円 3,240億円
利益 1,380億円 3,000億円 1,620億円
JR東海の売上高予想
新幹線3社運行(JR東海50%) リニア(JR東海100%)
売上高 6,000億円 1兆2000億円
利益 3,000億円 6,000億円
減価償却費 -1,000億円 -2,100億円
償却後利益 2,000億円 3,900億円
リニア全線の減価償却費は2,100億円、新幹線の場合JR東海は建設費の50%負担なので減価償却費を1,000億円とする。
JR東海にとっては、新幹線を3社共同運行するよりも、リニア全線をJR東海単独で運行する方が減価償却後の利益は約2倍となる。

これが、当ブログが考えた「JR東海がリニアを建設する理由」です。もし、JR東海がリニアを建設しなければ、政府主導で時速300km新幹線が建設され、JR東海の売上高が半分になる可能性がある。

品川~名古屋間では、リニア単体は赤字と言われるが、JR東海は「リニアは赤字」でもいいと思っているかもしれない。

つまり、リニア建設は「第2東海道新幹線(時速300km)」の建設をJR東海が阻止するための「手段」かもしれない。

したがって、JR東海にとっては、新大阪までリニアを延伸しなくてもいい。

ただ、建設する姿勢を見せて、他社が「第2東海道新幹線(時速300km)」を建設するのを阻止できればいいだけなのだ。

だから、JR東海の当初の計画では、品川~名古屋は2027年開通、名古屋~新大阪は2045年となっていたのだろう。

関西の自治体や財界は、慎重にJR東海の意図を精査して、リニア中央新幹線の建設に協力するかどうかを判断しなければならない。

 

JR東海の金利負担(政府財政投融資3兆円)

回(貸付実行日) 借入金 利率 年間支払い金利
第1回(2016年11月29日) 5,000億円 0.6% 30億円
第2回(2017年1月16日) 5,000億円 0.8% 40億円
第3回(2017年3月10日) 5,000億円 0.9% 45億円
第4回(2017年5月17日) 7,500億円 0.9% 67.5億円
第5回(2017年7月12日) 7,500億円 1.0% 75億円
合計 3兆円 約0.86% 257.5億円

名古屋~品川の建設費は7兆円に増加したが、うち3兆円は政府の財政投融資ですでに借り入れ済みとなっている。

「3兆円の元本は30年間の返済猶予」され、JR東海は2046年まで毎年平均0.86%の金利だけ支払えばよく、年間の金利負担は257.7億円と予想される。

2019年3月期のJR東海の連結決算では経常利益6,326億円、当期利益4,387億円となっている。

これは、財政投融資の金利257.5億円を支払った後の数字であり、JR東海にとってリニア工事が5年~10年遅れることは経営的に問題がないことが分かる。

むしろ、リニアが開通すれば、毎年2,000億円の利益が減る(当ブログ試算)ので、JR東海にとってはリニア開通が遅れた方が好都合と言えるかもしれない。

JR東海にとっては3兆円の元本の返済が始まる2046年5月までに開通すればいいと思っているのではないか?

 

静岡県はリニアに反対してるが、そもそもリニアは単体で赤字事業であり、建設費の金利も平均0.86%で利払費用は年間約260億円とJR東海にとっては少ない。

つまり、JR東海にとってリニア開通が遅れても経営的にはそれほど致命的な問題ではなく、JR東海が静岡県に安易に妥協することはないと思う。

結局、JR東海にとってリニアはJR3社による次世代新幹線建設を阻止する手段でしかなく、リニアの開通が10年でも20年でも遅れても致命的な問題はないという姿勢と思われる。

 

当ブログが考える理想的な将来像

JR東海    → JR西日本とJR東日本で分割
JR北海道   → JR東日本と合併
JR九州・四国 → JR西日本と合併

また、新大阪=名古屋間のリニア建設は中止し、JR西日本が時速300kmの新幹線を敷設すべき。建設費はリニアで3兆5000億円なので、新幹線でも3兆円程度はかかると予想される。

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