政府は、「金融・資産運用特区」に、大阪、東京、福岡、北海道の4つの地域を指定した。
- 大阪府・大阪市(共同提案)
- 東京都
- 福岡県・福岡市(共同提案)
- 北海道・札幌市(共同提案)
上記の4地域では、海外から金融機関や資産運用会社を呼び込むための環境整備や規制緩和が進められる。
規制緩和例
- 法人設立に関する行政手続きを英語だけで行えるようにする
- 海外からの人材に対して、新なビザ制度を創設する
- 外国人の銀行口座開設にかかる時間を短縮する
基本的な考え
日本の個人金融資産2,141兆円(2023年12月末時点)の半分以上が現預金にとされる。
この資金を投資に向かわせることで、個人の金融資産所得を増やし、「成長と分配の好循環」を実現していくことを目指している。
金融庁 2024年6月4日
新NISA制度と同じく「預金から投資」への動きを加速させる意図が政府にあると思う。
しかし、外資系金融機関が、個人には理解できないような「仕組み商品」を販売する可能性もあるわけで、単純に4つの指定地域が発展するわけではない。
もし、4地域の金融担当者が外資系金融機関と渡り合える金融知識がないと、外資系金融機関だけが儲かって、日本人が損をする事態にもなりなねない。
北海道・札幌市
- GX 金融・資産運用特区
北海道・札幌市では、北海道の日本随一の再生可能エネルギーのポテンシャルと都
市と自然が調和した札幌の魅力を活かし、「GX(グリーントランスフォーメーション)」に関する資金・人材・情報が集積する。
市と自然が調和した札幌の魅力を活かし、「GX(グリーントランスフォーメーション)」に関する資金・人材・情報が集積する。
従来型の国際金融というよりも、脱炭素にむけた「GX(グリーントランスフォーメーション)」投資を呼び込む動きだと思う。
今後10年間で150兆円超ともいわれるGXの官民投資の受け皿となり、洋上風力、水素、
蓄電池、海底直流送電網といったインフラ投資を加速する。
蓄電池、海底直流送電網といったインフラ投資を加速する。
また、データセンターや半導体産業の集積を背景に、多様性のある広大な大地を有効に
活用した、AIに関する実証・実装の先進地となることを目指す。
活用した、AIに関する実証・実装の先進地となることを目指す。
東京都
- サステナブルな社会を実現するアジアのイノベーション・金融ハブ
東京都では、グローバルに資金・人材・技術・情報を呼び込むゲートウェイとしての
役割を果たし、日本とアジアの成長に貢献していくことを目指す。
- サステナブルファイナンスの先進都市
- グローバルに活躍するスタートアップが生まれる都市
- “英語でビジネス”が行われるグローバルスタンダードな都市
大阪府・大阪市
- 未来社会の実現に向けたチャレンジ特区
2021年3月に設立された、大阪府・市をはじめ産官学の関係機関等がオール大阪で協働する「国際金融都市 OSAKA 推進委員会」(40団体が参画)が、グローバルスタンダードに合わせた規制改革等を実現し、海外投資を呼び込むことを通じて、金融機能の強化を図る。
福岡県・福岡市
- スタートアップ 金融・資産運用特区
「アジアのゲートウェイ」等の福岡の特性を活かし、国際的な金融機関やその関連
企業、(高度)金融人材を集積していく。
2020年9月に結成され、福岡市・県をはじめ産学官のオール福岡が連携した国際金融機能誘致「TEAM FUKUOKA」(25機関が参画)が、福岡の特性と親和性の高い資産運用業・フィンテック・BCP対応業務を重点誘致分野として、引き続き誘致活動や環境整備などに取り組んでいく。
税制優遇・補助金
北海道・札幌市は、地方税の措置について検討する方針。
東京都は、海外の資産運用業者等の創業・拠点開設に係る経費を補助する。
大阪府・大阪市は、拠点設立に必要な経費を補助するとともに、2023年11月より、日本及び同地域に初めて進出する海外の資産運用業者等に対する地方税の軽減措置を開始している。
福岡県・福岡市は、海外の資産運用業者等の創業・拠点開設に係る経費の補助を実施。
コメント
北海道は、脱炭素にむけた「GX(グリーントランスフォーメーション)」投資を呼び込むという明確なコンセプトがある。
東京は、外資系金融機関が集積しており、環境が最も整っている。
福岡は、地域的にはアジアに特化し、業務的にはバックオフィスに特化しており、コンセプトが分かりやすい。
大阪は、外資系金融機関の誘致環境では東京に大きく水をあけられた2位という立場で、また北海道の「GX(グリーントランスフォーメーション)」投資、福岡の「アジア地域・バックオフィス業務」のような特定の地域や業務に特化していない。
大阪は明確なコンセプトもなく一番中途半端な立ち位置で、外資系金融機関が大阪に拠点を置くメリットを打ち出せていない。
そのため、安易な「税制優遇」と「補助金投入」で外資系金融機関を誘致しようとしている。
外資系金融機関だけが税制優遇され補助金ももらえて、日本人にはメリットがなく、4地域の中では、もっとも地域への経済効果がない。
福岡と同じ「アジア・バックオフィス業務」に特化した戦略に方向転換する時期だと思う。
外資系投資会社の実態
米投資会社ブラックストーン・グループは、2021年に武田薬品工業から「アリナミン製薬」を2,420億円で買収したが、2024年6月には3,000億円で売却すると報道されている。
ブラックストーン・グループは買収後、「アリナミン製薬」の売上高を533億円から639億円への20%増加させたので、3,000億円でも売却するのは当然だと思う。
しかし、外資系投資会社が不動産などを買い占めて、日本人が都心に住めなくなったりする可能性もある。
大阪府・市は、安易に「税制優遇」「補助金投入」して、誘致企業数だけを積み上げるようなことをすべきではない。
今の大阪府・市には外資系金融機関を誘致できるような人材はいない。
国家公務員や大手金融機関では、海外の大学院への留学制度がある。外資系金融機関に安易に補助金を投入するのではなく、人材育成からはじめるべきだと思う。