
「物価が上がる時代になれば、老後2000万円問題は3000万円、あるいは4000万円問題になるのではないか―。」
近年の物価上昇を見て、そう感じている人も多いでしょう。食品や光熱費、サービス価格が次々と値上がりし、「2000万円では足りない」という声も増えています。
しかし、意外なことに、インフレ率2%、運用利回り5%という条件で計算すると、65歳時点で必要な老後資金は約1280万円という結果になります。
もちろん、これは「物価が上がっても必要な老後資金が減る」という意味ではありません。インフレによって生活費は毎年増えていきますが、それを上回る利回りで資産を運用できれば、運用益が老後資金を支えてくれるためです。
本記事では、「老後2000万円問題」をインフレ時代の前提で改めて計算し、なぜ2000万円ではなく1280万円という数字になるのかをわかりやすく解説します。
「老後2000万円問題」とは、2019年に金融庁の報告書がきっかけとなって話題になった老後資金の問題です。
当時のモデルケースでは、高齢の夫婦無職世帯の家計をもとに、年金収入だけでは毎月約5万5,000円の赤字になると試算されました。
- 年金収入:約20.9万円
- 支出 :約26.4万円
計算すると、
26.4万円 − 20.9万円 = 毎月約5.5万円の赤字
老後30年間の不足額
65歳から95歳までの30年間、この赤字が続くと仮定すると、
5.5万円 × 12か月 × 30年 = 約1,980万円
となります。
これが「老後2000万円問題」と呼ばれるようになった理由です。
問題点
- 物価上昇を考慮していない
- 資産運用による収益を考慮していない
- 65歳:66万円
- 75歳:約80万円
- 85歳:約98万円
- 95歳:約120万円
- 合計:約2,680万円
| 年齢 | 年間取り崩し額 | 年末資産残高(概算) |
|---|---|---|
| 65歳 | 66万円 | 約1,278万円 |
| 70歳 | 73万円 | 約1,259万円 |
| 75歳 | 80万円 | 約1,216万円 |
| 80歳 | 89万円 | 約1,136万円 |
| 85歳 | 98万円 | 約994万円 |
| 90歳 | 109万円 | 約732万円 |
| 95歳 | 120万円 | 約0万円 |
30年間の取り崩し総額は約2,680万円になります.
しかし、1,280万円を年5%で運用しながら、初年度66万円を取り崩し、その後毎年2%ずつ増額すると、30年間で約2,680万円を使いながら95歳時点でほぼ資産がゼロになる計算です。
| 現在の年齢 | 65歳までの年数 | 65歳時点で必要な老後資金 |
|---|---|---|
| 30歳 | 35年 | 約2,560万円 |
| 40歳 | 25年 | 約2,093万円 |
| 50歳 | 15年 | 約1,730万円 |
| 60歳 | 5年 | 約1,413万円 |
| 65歳 | 0年 | 1,280万円 |
| 現在年齢 | 65歳時点で必要な老後資金 (年2%インフレ反映) |
60歳時点で必要な資産 (5年間を年5%運用) |
積立年数 | 毎月積立額 (年5%運用) |
|---|---|---|---|---|
| 30歳 | 約2,560万円 | 約2,005万円 | 30年 | 約2.0万円 |
| 40歳 | 約2,093万円 | 約1,639万円 | 20年 | 約4.0万円 |
| 50歳 | 約1,730万円 | 約1,355万円 | 10年 | 約8.7万円 |
| 60歳 | 約1,413万円 | 約1,106万円 | 0年 | 0円 |
| 65歳 | 1,280万円 | ― | ― | ― |
インフレ率2%・運用利回り5%を前提にすると、65歳時点で必要な老後資金を準備する場合、30歳からなら毎月約2万円、40歳からなら約4万円、50歳からでも約8.7万円の積立で到達できる計算になります。
| 現在年齢 | 65歳までの年数 | 65歳時点の必要老後資金 | 年5%で運用した場合の必要一括投資額 |
|---|---|---|---|
| 30歳 | 35年 | 約2,560万円 | 約464万円 |
| 40歳 | 25年 | 約2,093万円 | 約617万円 |
| 50歳 | 15年 | 約1,730万円 | 約833万円 |
| 60歳 | 5年 | 約1,413万円 | 約1,107万円 |
| 65歳 | 0年 | 1,280万円 | 1,280万円 |
65歳時点で必要な老後資金を年5%で長期運用できる場合、30歳なら約464万円、40歳なら約617万円、50歳なら約833万円を一括投資するだけで理論上は到達できます。
インフレ率2%を考慮すると、老後30年間の累計赤字額は約2,680万円となり、従来の「老後2000万円問題」よりも大きくなります。
しかし、資産を年5%で運用できれば、運用益が生活費不足を補うため、65歳時点で必要な元本は約1,280万円となります。
もちろん、将来も5%の利回りが続く保証はありません。
しかし、インフレ時代の老後資金は「貯める力」だけでなく「運用する力」も重要になっています。適切な資産運用を続けることで、老後資金の不安を軽減し、物価上昇の時代を乗り切れる可能性が高まってきました。
例えば30歳から毎月約2万円を積み立てるだけでも、30年間で老後資金2,560万円の準備が可能です。早く始めるほど、毎月の負担を抑えながら老後資金を形成できます。
