
長年にわたり最大の課題となっていたリニア中央新幹線・静岡工区が、大きな転換点を迎えました。
静岡県の鈴木康友知事は2026年7月7日に開かれた県議会で、リニア中央新幹線静岡工区(約8.9km)の着工を容認する考えを正式に表明しました。これを受け、JR東海は2026年内の着工を目指す方針です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 路線名 | リニア中央新幹線 |
| 事業主体 | JR東海 |
| 方式 | 超電導リニア(磁気浮上方式) |
| 営業最高速度 | 約505km/h |
| 品川~名古屋 | 約286km |
| 名古屋~新大阪 | 約152km |
| 東京~大阪 | 約438km |
| 東京~名古屋 | 最速約40分 |
| 東京~大阪 | 最速約67分 |
| 品川~名古屋開業 | 2036年以降(予定) |
| 名古屋~新大阪開業 | 2045年頃を目標(今後変更の可能性あり) |
静岡工区は、南アルプストンネルの一部にあたり、全長約8.9kmと距離は短いものの、リニア計画全体のボトルネックとなってきました。
これまで静岡県は、大井川の水資源や自然環境への影響を理由に慎重な姿勢を取り続け、工事開始を認めていませんでした。その結果、当初2027年としていた品川~名古屋間の開業計画は大幅に延期されています。
今回、鈴木知事が着工を容認したことで、計画はようやく本格的に前進することになります。
JR東海は知事の判断を受け、2026年内の着工を目標としています。
ただし、静岡工区は南アルプスの山岳地帯を掘削する極めて難易度の高い工事となるため、着工できたとしても完成までには相当な時間が必要とみられています。
静岡工区の着工が決まったとはいえ、すぐに開業へ結び付くわけではありません。
JR東海は、静岡工区の工事期間などを踏まえ、品川~名古屋間の先行開業は2036年以降になるとの見通しを示しています。
当初予定から約10年近い遅れとなる見込みで、日本の大型インフラ事業としては異例のスケジュール変更となりました。
今後のポイントは次の3点です。
静岡工区を年内に着工できるか
南アルプストンネルの難工事を安全かつ計画通り進められるか
品川~名古屋間の開業時期をさらに遅らせずに済むか
リニア中央新幹線は、東京・名古屋間を最速約40分で結び、日本の大動脈を強化する国家的プロジェクトです。
静岡工区の着工容認は大きな前進といえますが、本格開業までには依然として多くの課題が残されており、今後の工事の進捗が注目されます。
東京~名古屋間だけリニアが開業した場合、大阪~東京の所要時間は次のようになります。
- 東京→品川:10分
- 品川での乗り換え:15分
- 品川→名古屋(リニア):40分
- 名古屋で乗り換えが:10分
- 名古屋→新大阪(東海道新幹線):50分
合計すると約2時間5分となり、現在の東海道新幹線の約2時間20分と比べても、短縮されるのは約15分にとどまります。
この程度の時間短縮では、乗り換えが2回必要になることもあり、伊丹~羽田線への影響は限定的と考えられます。航空需要の減少は10~20%程度にとどまる可能性が高いでしょう。
一方、品川~新大阪間のリニアが2045年以降に全線開業すれば、東京~大阪間は約70分で結ばれます。空港へのアクセスや保安検査が不要な鉄道の優位性が一段と高まり、伊丹~羽田線の利用者は50~70%程度減少すると予想されます。
2025年の伊丹空港-羽田空港線の利用者数は約533万人で、国内第4位の利用者数を誇る国内幹線です。
しかし近年は、航空燃料価格の高騰や円安、世界的なインフレの影響によって国内線の収益環境が悪化しています。そのため、各航空会社は機材の小型化を進めています。
現在、伊丹-羽田線はANAが15往復(30便)、JALが15往復(30便)の合計30往復(60便)で運航されています。以前はボーイング777など大型機で運航される便が多く見られましたが、現在はボーイング787やボーイング737など、より小型の機材で運航されるケースが増えています。
一般的に、新幹線の所要時間が約4時間以内になると鉄道の競争力が高まり、航空機とのシェアが拮抗するといわれています。現在、新大阪-東京間は東海道新幹線で約2時間20分と圧倒的な速さを誇り、移動シェアの約85%を新幹線が占めています。
一方、航空機を利用する約15%の利用者には、マイルの獲得や航空会社の上級会員資格の維持を目的とした需要も含まれていると考えられます。そのため、伊丹-羽田線の需要は一定程度維持されるものの、新幹線との競争において大きく優位に立つ状況ではありません。
さらに、2036年以降にリニア中央新幹線(品川-名古屋間)が開業すれば、新大阪-東京間の移動時間はさらに短縮されます。これにより、伊丹-羽田線の年間利用者数は現在の約533万人から430万~480万人程度まで減少する可能性があります。加えて、航空燃料価格の高止まりや円安が続けば、航空会社はさらなる減便や機材の小型化を進める可能性があり、利用者数が想定以上に減少することも考えられます。
また、2031年春にはなにわ筋線が開業し、JR大阪駅から関西国際空港まで最速約40分でアクセスできるようになる見込みです。運賃・特急料金を合わせて約2,000円程度になると予想されていますが、時間を重視する利用者やインバウンド旅行者、ビジネス客にとっては十分に受け入れられる水準でしょう。
2031年のなにわ筋線開業、そして2036年以降のリニア中央新幹線(品川-名古屋間)開業によって、大阪圏の交通体系は大きく変化します。こうした環境変化を踏まえると、今後の伊丹空港の役割を改めて検証し、規模の適正化や将来的なあり方について議論を始める時期に来ているのではないでしょうか。
