神戸市の人口150万人割れ
神戸市は、2023年10月1日現在の推計人口が149万9887人になったと発表した。
神戸市の人口が150万人を割り込むのは2001年5月(149万9371人)以来で22年ぶりで、神戸市の人口のピーク(2011年)と比べて約5万人減少している。
また、2022年10月から1年間で10,284人減少している。
出典 神戸市
神戸市の人口は、2010年国勢調査の154.4万人をピークに減少に転じ、2016年に153万人まで減少し福岡市に抜かれ、2019年5月には152万人まで減少し川崎市にも抜かれた。
この結果、神戸市の人口順位は、政令指定都市全国第5位から第7位に転落した。
- 神戸市の高齢化と出生率の低下により、自然減少(死亡者数>出生者数)となり神戸市の人口が減少している。
- 神戸市の重工業やアパレル産業の衰退、インバウンド客の取り込みの失敗など神戸経済が低迷している。
- 神戸市郊外から大阪市内への通勤時間が長いため、共働き世帯は通勤時間の短い西宮市や大阪市内に住む傾向があり、神戸市内に住む世帯が減少している。
- 大阪市内では再開発によりオフィスビルやタワーマンションが増加しており、大阪経済圏の西端にある神戸にオフィスを設置したり住宅を建設する必要がなくなった。
特に1980年代は「株式会社神戸市」と言われるほど神戸市の都市開発は成功し、全国の自治体から見学者が多数来るほどだった。
しかし、その後、神戸市がなぜ人口減少・衰退するようになったのか?
出典 神戸市
そもそも、1990年代まで神戸市が発展したのは、神戸市に開発力があったからではない。
1990年代までは、大阪経済圏が拡大しており大阪市内ではオフィスや住宅が不足していた。
その結果、大阪市の周辺都市(神戸市、滋賀県、兵庫県三田市など)にオフィスや住宅が建設されるようになった。
つまり、神戸が発展したのは大阪経済圏が拡大した結果に過ぎない。
しかし、大阪経済圏は1990年代半ばから縮小に転じ、大阪市内・府内の工場が閉鎖されるようになった。
その跡地にタワーマンションなどが建設され、大阪市の郊外から大阪市内に引っ越す人が増加した。
大阪経済圏が縮小した結果、逆に「オフィス・商業施設・住宅」が大阪市中心部に集積するようになったのだ。
これにより、大阪経済圏の西の端にある神戸は衰退し始めた。
今後も、大阪市内は「グラングリーン大阪(うめきた2期)2024年9月6日まち開き」「大阪万博(2025年春)」など大規模再開発が進むため、神戸市の衰退傾向は続くと予想される。
JR大阪駅前(2021年9月撮影)
大阪梅田ツインタワーズ・サウス(38階・高さ189m・延床面積約26万㎡)2022年2月竣工
JR大阪駅西側の「JPタワー大阪」(40階・高さ188m・延床面積約23万㎡)2024年3月竣工予定。
現在では、結婚後も夫婦共働きする世帯は約6割と言われる。
神戸市の郊外から大阪市内へ通勤する場合、通勤時間は1時間以上となる。
大阪までの乗車時間比較
区間 | 所要時間(乗換時間を含む) |
(神戸市)西神中央駅=大阪駅 | 1時間10分 |
(明石市)明石駅=大阪駅 | 40分 |
毎日往復2時間の通勤時間は共働きしにくい環境だ。そのため、交通の不便な神戸市郊外(西区・北区)の人口が減少している。
逆に、電車1本で大阪駅まで行ける明石市の人口が増加している。
「神戸ブランド」と言う「ふんわりとしたイメージ」よりも、現実的に子育て支援策の充実や通勤時間の短い明石市を選択する人が多くなったからだ。
神戸市には「川崎重工業神戸工場(4,400人 36ha)」「三菱重工業神戸造船所(8,000人 67ha」「神戸製鋼所神戸線条工場・旧神戸製鉄所(685人 107ha)」があり、造船のみならず建機、鉄道、電機など関連工場も多かった。
しかし、現在では、多くの工場が海外移転し、神戸市内の工場は廃止や規模縮小している。
神戸発祥のアパレルメーカー「ワールド」は全国のデパートやショッピングモールに出店していた。
しかし、近年では「ユニクロ」などのファストファッションに押されて売上は低迷している。
2020年度の売上は1,803億円(前年比-23.7%)、損益は171億円の赤字となった。
業績の悪化を受け、2021度は全体の2割に当たる450店舗を追加で閉店する予定。
外国人観光客には、神戸の中途半端な異国情緒が不人気で、外国人観光客は神戸を素通りして、姫路城に行ったりしている。
神戸スイーツは、一時期有名となったが、最近ではコンビニスイーツに押されて、神戸スイーツメーカーの廃業も相次いでいる。
共働き世帯や単身世帯が増加しており、家族でスイーツを食べる機会が減少している。
つまり、コンビニで各自が好きなスイーツを購入するようなライフスタイル(個食)の変化に対応できていないのだ。
バブル時代は高級ブランドを並べればそれだけ売上が増加した。神戸は今も旧居留地に高級ブランドの路面店を誘致して集客しようとしている。
21世紀になってLCCが就航し航空運賃が安くなって海外の免税店で買い物する機会が増加した。また国内にもアウトレットモールが続々と建設されている。
実際、神戸周辺にも「神戸三田プレミアムアウトレット」「三井アウトレットパークマリン神戸」などのアウトレットモールが建設され売上を伸ばしている。
一方、神戸市内中心部は定価販売のブランド路面店ばかりで、いいのだろうか?
そこで、神戸市内のデパートと郊外のアウトレットモールの売上を比較してみる。
百貨店 | アウトレットモール | ||
店舗名 | 売上高 | 店舗名 | 売上高 |
大丸神戸店 | 850億円 | 神戸三田プレミアムアウトレット | 465億円 |
神戸阪急(旧そごう神戸店) | 467億円 | 三井アウトレットパークマリン神戸 | 195億円 |
合計 | 1,317億円 | 合計 | 660億円 |
神戸市内の百貨店売上は減少傾向にあるが、神戸市の郊外のアウトレットモールの売上は好調だ。
これでは、神戸の旧居留地に高級ブランドやデパートをいくら整備しても、神戸市民は郊外のアウトレットモールやショッピングモールで買い物するので、経済効果がないように思える。
今は、高級ブランドを誘致すれば売上が増加するという時代ではない。そういう意味で神戸市の開発方針は時代遅れのように思える。
神戸市は三宮駅周辺に神戸市営地下鉄やホートライナーなどの神戸市営交通機関を集中させている。
しかし、神戸市営地下鉄は阪急線と相互乗り入れをしていない。
阪急は神戸市営地下鉄と接続する計画を提案したが、神戸市が長年消極的だった。
神戸市としては、神戸市営地下鉄と阪急を接続させれば、三宮駅が単なる通過駅になり、三宮駅周辺が衰退すると思ったのだろう。
そのため、神戸市営地下鉄と阪急線と接続させず、三宮駅で乗り換えしないといけないままになっている。
このことが神戸市郊外の神戸市西区を不便なままに放置する結果となり、神戸市西区は人口は減り続けている。それが神戸市全体の衰退の原因になっている。
ポートライナーにしても、三宮駅でJR線との乗り換えは比較的便利だが、阪急線や阪神線への乗り換えは不便だ。このため、ポートアイランドは三宮駅まで10分という好立地ながら、大阪市内への直通鉄道がないため、あまり発展していない。
また、神戸空港も三宮駅からポートライナー(新交通)で最速18分と便利だが、神戸市の人口は150万人しかいない。
結局、人口150万人都市の中心地「三宮駅」にいくら近くても、神戸空港の将来性はあまり期待できない。
実際、神戸空港の2019年の利用者数は336万人と過去最高を記録したが、伊丹空港(1,650万人)、関西空港(3,191万人)と比較すると、やはり低迷していると言える。
神戸市の人口は150万人なので、その中心の三宮駅に鉄道など交通機関を集中させても経済効果は小さい。
やはり、人口2,000万人の関西地方の中心地「大阪駅」へのアクセスがよくないと発展しないのではないか?
事あるごとに神戸人は大阪人に反対し、関西の経済やインフラを大混乱に陥らせた。
例えば、空港問題では、神戸沖に新空港を建設することがほぼ決まっていた。しかし、神戸市が突然反対に転じ、関空が現在の位置に建設された。
その後、神戸市は神戸空港を市営で建設した。このため、関西では3空港が乱立し、共倒れ寸前まで追い込まれた。これは大阪経済圏にとって大きなマイナス要因となった。
皮肉なことに、そのダメージを最も受けたのが大阪経済圏の西の端にある神戸市だった。
神戸経済圏は極めて小規模な都市圏で自立できない。神戸人は関西全体のことを考えず、自分達だけがよければいいという偏狭な地元愛が強すぎる。
それが、関西のインフラの発展を遅らせ、関西全体が衰退し、結果的に神戸市の衰退につながっている。
神戸人の地元愛はいいが、大阪や京都に対して対抗意識が強すぎて、協力して関西全体を発展させようという視点がない。
このままでは神戸は衰退するしかない。
神戸市西区、北区から大阪へは直通電車で行けないため人口が減少している。
逆に、大阪市内への通勤に便利な北摂地域(大阪府北部)、西宮市、明石市などの人口が増加している。
神戸市の中心市街地である「三宮」の再開発が遅れており、このことが逆にJR大阪駅・梅田の発展につながっている。
神戸人の偏狭な地元愛のおかげて、大阪は発展し、神戸は衰退するという皮肉な結果になっている。