日経新聞に久元神戸市長の「タワーマンション」についての記事が掲載されている。
参照「タワーマンションの未来」https://r.nikkei.com/article/DGXKZO61857430S0A720C2TCS000?s=5
神戸市長の意見の要旨
久元神戸市長は「三宮駅前にタワーマンションが建設されると大阪のベットタウンになってしまう。そうではなく、神戸をビジネス拠点として発展させ、グルメやアートシーンを楽しめる街にしたい。」との意見のようだ。
ベットタウンという発想が古い
- 東京や大阪の都心のタワーマンションは、オフィス街に建設されることが多いが、駅前がタワーマンションだらけにはなっていない。
- 21世紀はオフィスの近くに住む時代(職住接近・都心回帰)であり、オフィスと住居が完全に別エリアと考えるのは昭和の発想で進歩がない。
- 例えば、大阪の会社に勤務して、三宮のタワーマンションに住んでも、週末は三宮周辺で買物や外食をする。そういう意味で、タワーマンションが建設されて、三宮が衰退することはない。
- そもそも、三宮にオフィス需要があるなら、タワーマンションが建設されても、三宮の都心機能が失われることはない。
- 要するに神戸には居住需要はあるが、オフィス需要がないため、タワーマンションしか建設されないのだ。
- つまり、タワーマンションが問題ではなく、神戸にオフィス需要がないことが問題だ。
- 神戸市は神戸にオフィス需要がないという問題点を解決せずに、タワーマンションだけを規制するという本末転倒の政策を行っているのではないか?
神戸市の政策
- 神戸市は、タワーマンションを規制するだけではなく、三宮にオフィス需要を集めるべきではないか?
- ところが、神戸市は、長田区に都市機能を集約しようとして失敗し「新長田駅南地区再開発事業(20.1ha)」では300億円の赤字見込みとなっている。
- そして、今は、六甲山の「谷上」をオフィス拠点にしようとしている。
- 神戸市の政策は行き当たりばったりで一貫性がない。
なぜ神戸市は失敗ばかりするのか?
- 1970年~1980年代は「株式会社神戸市」と言われるほど、神戸市の都市開発は好調だった。しかし、それは、大阪市内のオフィスビル・住宅が不足したため神戸市にそれを求めたに過ぎない。
- つまり、1970年~1980年に神戸が発展したのは大阪経済が成長した結果であって、神戸市の開発能力が高かったのではない。
- 1990年代以降、大阪経済が衰退し、大阪市内の企業本社ビルが売却され再開発されると神戸にわざわざオフィスビルを建設する理由がなくなった。
- そもそも、神戸にはオフィス需要なんてなかった。
- そもそも、神戸市は大阪のベットタウンでしかなった。
- 神戸市はそれを認めないのだろう。
- そこが、そもそもの間違い。
神戸の個店の政治力
- 神戸市の資料を読むと「個店の強化・個店への誘客により商店街の活性化」など「個店」を重視する政策が多い。
- 2020年7月1日に、JR新神戸駅からJR神戸駅までの292haの広大な範囲にわたって、敷地面積1,000㎡以上のビルは住宅部分の容積率が400%に制限する条例が施行された。
- これにより、事実上タワーマンションは建設できなくなった。
- これでメリットを受けるのは、三宮や元町の「個店」と思われる。敷地面積1,000㎡未満の「個店」は自由にオフィスビルでも賃貸マンションでも建設できるのだ。
まとめ
- 神戸はオフィス需要と居住需要のバランスがとれていない。そこで、神戸市はタワーマンションを規制し、少ないオフィス需要のレベルに居住需要を無理やり合わせることで「オフィス需要と居住需要のバランス」をとっているのではないか?
- 三宮~元町の個店にとっても大企業による大規模再開発が規制されてことで、自分たちは規制を受けずに従来通りの小さいビジネスができて安泰だ。
- 神戸市役所の中の人にとっては「仕事は少なくなるし、給料は高い」といういい政策だと思う。
- 三宮~元町の個店や神戸市役所職員の応援を受けて選挙に当選した神戸市長にとってもいい政策なのだ。
- 神戸は東京や大阪と競争すれば負けるから、大規模開発を規制して、こじんまりとした都市になろうとしている。緩慢に衰退していくというのは、地方都市の住民としては居心地がいいのかもしれない。
後書き
- 1970年~1980年代、大阪経済の拡大により、神戸市は開発能力もないのに、開発が成功し、神戸人は自分たちの能力を誤解してしまった。
- その間違った成功体験に引きずられて、神戸は、本来の低いポテンシャルを高いと勘違いしてしまって可哀そうだ。
- 間違った成功体験がなければ、大阪の「ベットタウン」と割り切って発展する方向性を打ち出せたかもしれない。