2024年米中対立継続
2024年も米中対立は継続すると思う。
過去の1980年代の日米対立を振り返ってみる。
1980年代は日本から米国への自動車輸出が増加し、米国の対日貿易赤字が問題になっていた。
プラザ合意(1985年)
1985年9月22日、NYのプラザホテルにおいて先進5か国財務大臣・中央銀行総裁会議(日・米・英・独・仏=G5)が開催された。
米国の対日貿易赤字削減のため、ドルに対して参加各国の通貨を一律10~12%幅で切り上げるという合意がなされた。
この結果、同時1ドル=235円だった円相場は、24時間で約20円高の215円になり、1年後には1ドル150円台まで円高が進行した。
その結果、日本の輸出産業(製造業)は、東南アジアなどの海外に工場を移転し、日本国内の製造業の衰退がはじまった。
BIS規制(1988年)
BIS規制とは、1988年7月にBIS(Bank for International Settlements=国際決済銀行)の常設事務局であるバーゼル銀行監督委員会で合意された「銀行の自己資本比率規制」のことで「バーゼル規制」「バーゼル合意」とも言われる。
具体的には、1993年から日本の民間銀行の自己資本比率を8%以上(国内銀行は4%)にすることが求められた。
この結果、自己資本比率の低かった日本の民間銀行は貸出総額を圧縮せざるを得ず、国際的な地位が低下した。
日米対立の期間
1985年のプラザ合意により、日本の製造業は衰退、1988年のBIS規制により、日本の金融機関は衰退した。
1991年~1993年のバブル崩壊の遠因となり、日本はその後30年にわたる長期不況に陥り、GDP2位からGDP4位へ下落した。
つまり、日米対立の期間は1985年から20年以上続いたことになる。
したがって、米中対立も少なくとも今後10年以上は継続すると予想される。
米中対立の日本への影響
米中対立の結果、アメリカは中国からの製造拠点の移転、さらに台湾有事に備えて台湾から製造拠点を移転させる政策をとっている。
TSMC(熊本)
このような世界的な流れの中で台湾の半導体メーカーTSMCは、事業費1兆2000億円を投資し日本の熊本県に第1工場を新設する。さらに事業費2兆円の第2工場の建設も検討されている。
日本政府もTSMC第1工場に最大4,760億円の補助金の支給を決定しており、TSMC第2工場にも9,000億円規模の補助金の支給を検討している。
第1工場、第2工場の合計で日本政府の補助金は1兆4000億円規模になる。
ラピダス(北海道千歳)
次世代半導体の量産を目指すラピダスは北海道千歳市に半導体工場を建設するが、日本政府は5,900億円の補助金を支給するとされる。
アメリカが日本政府を動かした?
日本政府は熊本と北海道に合計1兆9660億円の補助金の支給を進めている。
しかし、日本政府が日本国内の半導体産業に補助金を出すと、WTO違反の可能性もある。
そのため、WTO参加国の理解がないと日本政府単独では2兆円近い補助金の支給を決定することはできないと思う。
当ブログの予想では、アメリカが日本政府に対して補助金の支給を求めたと思う。
実際、米IBMは、日本のラピダスに対して人口知能(AI)向け半導体の製造を委託する方針を固めたと2023年12月14日付で北海道新聞が報道している。
つまり、アメリカは戦略として、日本を中国や台湾に代わる「製造拠点」にしようとしているのではないか?
熊本という立地はTMSC(台湾)に地理的に近い。また、アメリカ政府から見れば、台湾有事、南海トラフ地震、東日本大震災を考慮すると、九州以外では北海道という選択肢しかなかったのかもしれない。
エルピーダ破綻の教訓
日本の大手電機メーカーの半導体部門を合併した「エルピーダメモリ」は2012年2月に会社更生法を申請し経営破綻した。
2012年のドル円相場は1ドル=80円で、極端な円高により日本国内に製造拠点をもつ「エルピーダメモリ」は採算が悪化し経営破綻した。
しかし、今後、アメリカ政府にとって、日本の半導体工場が破綻すると米国IT企業のサプライチェーンがなくなることを意味するので、極端な円高は望まないと予想される。
日本のメーカーの想定為替レートは1ドル=135円程度なので、1ドル=130円よりも円高になると、日本のメーカーにとっては経営的に問題がでてくる。
アメリカにとっても、アメリカIT企業のサプライチェーンとなる日本の半導体工場が破綻するとアメリカの国力にも悪影響がある。
したがって、アメリカ政府も1ドル130円以下の円高は望まないと思う。
アメリカという国は、単に「望まない」だけではなく、なんらかのスキームを考える国だと思う。
新NISA(2024年)開始
2024年1月から新NISAが始まる。簡単にいうと非課税投資枠が1800万円に引き上げられる。
1年の投資枠は合計360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)で最短5年で1800万円の枠を埋めることができる。
年間360万円ということは毎月30万円になる。しかし、給料の中から毎月30万円を投資できる日本人は1%くらいだと思う。
つまり、新NISAは給料から投資するのではなく、すでにある日本の個人金融資産2000兆円を投資に預け替えすることを目的にしていると思う。
実際、2人以上の世帯の金融資産平均保有額は1,563万円(2021年)なので、非課税投資枠1800万円に近い。
一方で、2人以上の世帯の金融資産平均保有額の中央値は450万円で、平均的な人にとっては非課税投資枠1800万円は大き過ぎる。
したがって新NISAの非課税投資枠1800万円は日本政府が平均的な日本人を想定した投資枠とは思えない。
新NISAの投資先
2024年から始まる新NISAの積立設定のランキング上位は、各社の「世界株式(オールカントリ・オルカン)」、「米国S&P500連動インデックス」などの海外株式インデックスファンドで占められている。
つまり、新NISAが始まれば、日本の個人金融資産2000兆円の一部が米国などの海外株式市場に流れることになる。
NISAの口座数は2023年6月時点で1,941万口座になっている。
仮に2000万口座で1口座当たり平均毎月5万円(年間60万円)を投資すると年間の投資額は合計12兆円になる。
このうち6割が米国株式ファンドを購入すると年間7兆2000億円が米国に流れることになる。
個人的な見解ですが、新NISAというのは、日本人の個人金融資産2000兆円をアメリカに還流させる目的があるのではないか?
つまり、将来的にアメリカは日本から半導体を毎年数兆円購入し、日本からは新NISAを通じて毎年7兆円がアメリカに還流することになるのではないか?
アメリカの陰謀論ではなく、日本からアメリカへの輸出が増加すると円高要因になり、日本での半導体製造に不利になる可能性がある。
それを避けるために、日本の個人金融資産2000兆円の一部をアメリカに還流させることは日本経済にとってもメリットがある。
米中対立の反対の効果として、日米が接近するというシナリオと考えるべきだと思う。
2024年、国内富裕層向け消費は減少?
新NISAの非課税枠1800万円を最短で埋めるには毎月30万円(年間360万円)を投資し、5年かかる。
夫婦2名で最短5年で3600万円(2名分)の非課税枠を埋めれば、過去10年で米国S&P500指数は3倍になっているので、15年くらいのスパンで考えると夫婦2名で1億円を達成できるかもしれない。
しかし、毎月30万円投資するのは年収1000万円程度ではかなり難しい。そうなると高所得者の個人消費額は減少するかもしれない。
2023年はコロナ禍明けで旅行商品や高額品が売れた。高所得者も消費に満足したと思う。
したがって、2024年の消費意欲は2023年よりも小さくなっていると思う。
そんな中で新NISAが始まるので、消費よりも投資に資金を回す人が多くなるのではないか?
まとめ
米中対立は今後10年以上継続すると思う。
アメリカは日本をサプライチェーンとして組み込む政策を推進するのではないか?
新NISAが2024年に始まり、日本人の個人金融資産2000兆円の一部が毎年数兆円単位でアメリカに還流するようになるのではないか?
大阪・関西も米中対立を前提とした都市開発をする必要がある。
例えば、国際金融都市OSAKA構想もそういった流れの中で考えるべきだ。
また、海外エアラインにもっても中国国内に拠点を持つよりも、関西空港に拠点を持ち、関空から中国国内の地方空港へ直接就航する方がリスクが少ないはずだ。
個人的なこと
新NISA開始5年くらいは元本割れの可能性はあると思うが、20年以上の長期投資として考えるべきだと思う。
新NISAの非課税枠は1800万円なので一時的に数百万円の含み損はあたりまえで、それに耐えれない人は新NISAをやるべきではないと思う。
繰り返しになるが、20年後、30年後に含み益になっていればいいと思う。
新NISAはそういう商品だと思う。
Happy Holidays