戦後、日本経済の主役は、電機、自動車などの輸出産業だった。
しかし、2010年代から変化し、今後、日本経済の主役は「個人消費とインバウンド」になる可能性がある。
2019年の貿易額
- 輸出額 :81兆4,788億円
- 輸入額 :82兆7,033億円
- 貿易収支 :1兆2,246億円(輸入超過)
2019年の個人消費
- 個人消費 :298兆円
- 名目国内総生産(GDP):554兆円
2019年のインバウンド消費
- 訪日外国人旅行消費額 :4兆8000億円
- 1名当たり消費額 :15万9000円
- 訪日外国人客数 :3,188万人
コメント
インバウンド消費額は年間約5兆円で、輸出額の約81兆円、個人消費額の300兆円と比較すると少ない。
しかし、利益率で考えると輸出産業は5%~10%であるが、インバウンド消費の利益率は20%~30%で輸出産業の4倍となる。
したがって、インバウンド消費額5兆円は、輸出額の20兆円に相当し、輸出産業の4分の1の規模と言える。
また、訪日外国人の約8人で日本人1人の年間消費額に匹敵すると言われる。
つまり、訪日外国人客数3,188万人の消費額は、日本人400万人の年間消費額に相当し、言い換えれば人口400万人が増加したのと同じ経済効果と言える。
ちなみに、2019年に大阪を訪問したインバウンド(訪日外国人客)数は、 1,230万人だったので、人口153万人の年間消費額に相当する。
つまり、大阪府の人口が153万人増加したと同じ経済効果があったと言える。
大阪府の人口は880万人なので、実質1,033万人の人口規模と言える。
大阪の大規模な再開発は、インバウンド消費に支えられていると言えるかもしれない。
モノ消費・コト消費
個人消費も1970年代の高度経済成長期には、家電や自動車などの「モノ」を購入することが多かった。
しかし、2000年頃には、ほとんどの家庭では「モノ」を購入し終わって、体験や観光などの「コト消費」の比重が多くなった。
時代に乗り遅れた神戸
神戸の主要産業は造船・機械などの輸出産業で、神戸港から世界へ輸出していた。
造船・機械などの産業が衰退し、神戸港も衰退してしまった。
さらに、インバウンド客の取り込みにも失敗している。
国際空港もインバウンドが多い
かつては、国際空港と言えば、日本人が海外旅行に利用することが多かった。しかし、現在では訪日外国人客の方が多くなっている。
2019年の関西国際空港の利用者数は3191万人で、うち国際線は2,493万人となった。
国際線のうち外国人旅客数は1677万人(67%)、日本人旅客数794万人(32%)と外国人客の方が日本人よりも2倍多い。
(1名が到着・出発するので利用者数としては2名としてカウント)
外国人目線で国際空港を考えるべき
日本人は自宅から空港のアクセスだけを考えているが、日本経済全体を俯瞰して見ると、インバウンド客にとって便利な空港を目指すべきだと思う。
神戸空港は2030年に国際定期便が就航するが、インバウンド客は神戸を素通りして大阪や京都に行く可能性がある。
神戸の国際空港の役割についての認識は、高度経済成長期の日本人が海外に団体旅行で行く時代のままで、現在の変化についていけてないと思う。
神戸の次は名古屋が衰退か?
2022年の住民基本台帳の人口移動報告によると、名古屋市が転出超過に転じた。名古屋市を含む愛知県は7910人の転出超となった。
愛知は、自動車産業を中心に製造業が強いが、女性が東京圏などに流出する傾向にある。
「輸出産業」から「個人消費とインバウンド」へ経済がシフトすると名古屋圏が衰退する可能性がある。
また、ガソリン車から電気自動車へのシフトが加速すると、名古屋圏の自動車関連産業の3割は廃業するという予測もある。