大阪府吹田市、万博記念公園内に立地する国立民族学博物館(National Museum of Ethnology, Japan:民博)。
世界各地の生活文化や社会の成り立ちを、学術的かつ体系的に紹介する、日本を代表する研究・展示施設である。
その一方で、2025年大阪・関西万博を経た現在、この施設が持つポテンシャルは、まだ十分に一般層や海外来訪者へ届いていないとも感じられる。
万博記念公園という特別な場所にふさわしい存在へ進化させるため、
ここでは
① 名称を「ワールドカルチャーセンター(World Culture Center)」へ刷新(併記)
② 万博で好評だった「世界各国の食」を実食できる施設を併設
という構想を提案したい。
名称:国立民族学博物館(National Museum of Ethnology, Japan:民博)
所在地:大阪府吹田市千里万博公園10-1(万博記念公園内)
敷地面積:約4万㎡
建築面積:1万7000㎡
延床面積:約5万㎡
階数:地上4階・地下1階
設計:黒川紀章 建築・都市設計事務所
開館:1977年11月
「国立民族学博物館」という名称は、研究機関として極めて正確で重みがある。
しかし一般来館者、とりわけ若年層やインバウンドにとっては、次のような壁も存在する。
- 「民族学」という言葉が専門的で分かりにくい
- 日本文化中心の施設だと誤解されやすい
- インバウンド客にも内容が直感的に伝わりにくい
実際には、展示の中心は世界各国の生活文化・価値観・社会構造であり、
その射程はきわめてグローバルだ。
にもかかわらず、名称がそのスケールを十分に表現できていない。
そこで提案したいのが、
「国立民族学博物館(ワールドカルチャーセンター)」という併記型名称である。
この名称には、次のような強みがある。
- 世界文化を扱う施設だと一目で分かる
- 英語表記(World Culture Center)がインバウンド客にもダイレクトに伝わる
- 万博記念公園、そして1970年大阪万博の理念と高い親和性を持つ
1970年万博のテーマは「人類の進歩と調和」。
世界の多様な文化を横断的に理解する拠点として、「ワールドカルチャーセンター」は象徴的な呼称だ。
学術性を損なうことなく、社会に向けて開かれた顔を持つ。
それが併記型名称の最大のメリットである。
2025年大阪・関西万博で、来場者から特に高い評価を得たのが、
世界各国の料理を実際に味わえる体験だった。
言葉や知識がなくても、
「食」は誰にとっても理解しやすい文化体験であり、
万博では文化理解の最短ルートとして機能していた。
この成功体験を、万博終了とともに消費してしまうのは大きな損失だ。
民族学において、食は周縁的なテーマではない。
むしろ、生活様式・宗教・経済・家族観が凝縮された核心的な研究対象である。
- 主食の違いが語る環境と歴史
- 宗教戒律と食習慣
- 祝祭と日常を分ける料理
これらは、展示や解説に加えて、
実際に食べることで理解が飛躍的に深まる。
併設する「世界の食」施設は、
単なる商業飲食施設であってはならない。
必要なのは、
「展示と連動した“文化施設としての食」である。
- 各国大使館・研究者監修のメニュー
- 料理の背景を解説する常設・企画展示
- 子ども向けの食文化ワークショップ
- 展示テーマと連動した期間限定料理
これは飲食ではなく、「食べられる民族学展示」だ。
「国立民族学博物館(ワールドカルチャーセンター)」と
「世界各国の食文化体験施設」が組み合わされば、
- 見る
- 学ぶ
- 味わう
という体験が一体化する。
これは万博記念公園を、
単なる散策地から半日〜1日滞在できる文化拠点へと進化させる力を持つ。
大阪・関西万博後、問われるのは
「この経験をどこに残すのか」という点だ。
国立民族学博物館は、
- 世界文化研究の中枢
- 万博記念公園という象徴的立地
- 次世代への教育的価値
そのすべてを備えている。
ここに「世界の食文化体験」という要素を加えることで、
万博の理念は日常の文化体験として定着する。
民族学は、本来、人々の暮らしそのものを扱う学問だ。
だからこそ、より多くの人に開かれていていい。
「国立民族学博物館(ワールドカルチャーセンター)」と
世界各国の食文化を体験できる施設。
この組み合わせは、
大阪から世界を理解するための新しい文化インフラになり得る。
万博の記憶を、学びと体験として未来へ。
その最適な受け皿は、ここにある。
