
2026年2月28日、アメリカ軍はイランに対する軍事攻撃「壮大な怒り作戦(Epic Fury)」を実施しました。
表向きには、イランの軍事拠点を対象とした限定的な攻撃とされていますが、国際社会では戦争拡大への懸念が強まっています。
結論から言えば、アメリカは空爆では圧倒的な優位に立つものの、地上戦でイラン全土を制圧することは極めて困難と考えられます。
そのため、アメリカ軍が大規模な地上戦に踏み切る可能性は低く、当面は年単位で空爆を継続する戦略になると予測されます。
ただし、ホルムズ海峡の航行の安全確保を目的に、海峡周辺のイラン領内へ限定的に地上部隊を派遣する可能性は残されています。
また、ドナルド・トランプ大統領にとって最大の政治目標は、2026年11月に予定されているアメリカの中間選挙で勝利することです。
そのため、仮に米国株式市場が30%程度下落したり、大統領支持率が大きく低下するなど、国内政治への影響が強まった場合には、アメリカ軍が作戦の縮小や撤退を選択する可能性もあると考えられます。
イランが取る可能性が高い戦略は、単純な正面戦争ではありません。
むしろ、戦争を地域全体へ拡大させることです。
具体的には次のような行動が考えられます。
・中東の米軍基地への攻撃
・湾岸諸国の石油施設への攻撃
・イスラエルへのミサイル攻撃
・紅海・ホルムズ海峡の航行妨害
もしこれらが同時に起きれば、エネルギー価格は急騰し、世界経済は混乱します。
つまりイランにとって重要なのは、アメリカに勝つことではなく、
「世界を混乱させること」
です。
世界経済が混乱すれば、アメリカ国内では「戦争をやめるべきだ」という世論が強まります。
これは政治的に大きな圧力となります。
軍事の基本原則としてよく知られているのが、「攻撃側は防御側の3倍の兵力が必要」という法則です。
イラン軍の兵力はおよそ約60万人(イラン国軍40万人・イラン革命防衛隊20万人)で、この兵力を相手に地上戦で勝利するには、理論上180万人以上の兵力が必要になります。
ただし、現在アメリカ軍はイラン軍の拠点に対して主に空爆を行っており、この場合は「攻撃側3倍の法則」がそのまま当てはまるとは限りません。
とはいえ、過去の事例を見ると、2003年の イラク戦争 では、アメリカ軍は最大で15万人~20万人の地上部隊を投入しました。
しかし、イランはイラクよりもはるかに規模の大きい国家です。
- イラン:人口約9,000万人・面積約160万㎢
- イラク:人口約4,600万人・面積約43万㎢
つまり、イランはイラクの約4倍の国土面積を持ち、人口も約2倍に達します。
そのため、仮にアメリカが本格的な地上戦を行う場合、イラク戦争と同程度の兵力では不十分であり、少なくとも50万人規模の地上軍を投入する必要があると予測されます。
現在のアメリカ軍の兵力は以下の通りです。
- 米陸軍:約49万人(州兵:約34万人)
- 海兵隊:約18万人
陸軍と海兵隊を合わせると約67万人になります。しかし、この全兵力をイラン戦争に投入することは現実的ではありません。世界各地の基地防衛や同盟国への抑止力維持が必要なためです。
そのため、実際に派兵できる地上兵力は、多く見積もっても約30万人程度と考えられます。
一方、イラン側の兵力は以下の通りです。
- 国軍:約40万人
- イラン革命防衛隊:約20万人
合計で約60万人の兵力を保有しています。
このため、仮にアメリカ軍が地上戦を開始したとしても、兵力面では必ずしも優位とは言えません。特にイランは国土が広く、山岳地帯も多いため、全土を占領することは極めて困難と考えられます。
そのため、イラン側の戦略としては、アメリカ軍を挑発して地上戦に引き込み、戦争を長期化させて泥沼化させることで、最終的にアメリカ軍の撤退を引き出すシナリオを描いている可能性があります。
実際、アメリカは約20年間にわたりイランの東側に位置する アフガニスタン に駐留しましたが、最終的には2021年に撤退しました。これは2001年の アフガニスタン戦争 から続いた長期介入の終結でした。
この前例を考えると、イランが「長期戦による消耗」を狙う戦略を取る可能性は十分にあると考えられます。
そのため、アメリカが全面的な地上戦に踏み切る可能性は低いと考えられます。
現実的な戦略は次のようなものです。
①空爆による軍事施設の破壊
②経済制裁の強化
③反政府勢力への支援
④海上封鎖の解除(ホルムズ海峡周辺の限定的な地上軍派遣の可能性はある)
つまり、イラン政権を内部から弱体化させる戦略です。
これは
・イラク戦争
・リビア内戦
でも使われた方法です。
今回の軍事行動には政治的な意味もあります。
アメリカでは2026年に中間選挙があります。
歴史的に、アメリカ大統領は外交成果をアピールすることで支持率を高める傾向があります。
つまり今回の攻撃も、
「アメリカを再び強くした」
という政治メッセージの意味を持っている可能性があります。
ただし戦争が長期化すれば、逆に政権への批判が強まります。
これは
・ベトナム戦争
・イラク戦争
でも見られた現象です。
ドナルド・トランプ大統領によるイラン攻撃の最終的な目的は、必ずしもイラン政権の転覆そのものではなく、中国を国際的に孤立させることにあると考えられます。
そのため、戦略上はイラン政権の崩壊が絶対条件というわけではありません。
一方で、イスラエルにとっては、イランの現体制を崩壊させることが長期的な安全保障目標とされています。
つまり、アメリカとイスラエルでは、対イラン政策の最終目標に一定の違いがある可能性があります。
また、トランプ大統領にとって重要なのは、2026年11月に予定されている 2026年アメリカ中間選挙 です。
そのため、戦争の継続は国内政治や経済状況にも強く影響されると考えられます。
例えば、次のような状況が起きた場合、軍事行動の方針が見直される可能性があります。
- 米国株式市場が30%以上下落
- 大統領支持率が10%程度まで低下
このような事態になれば、政権は国内経済や選挙への影響を考慮し、イラン攻撃を中止または縮小する可能性があります。
つまり、トランプ政権の対イラン軍事行動は、軍事的な目標だけでなく、
- 米国株式市場の動向
- 大統領支持率
- 中間選挙への影響
といった国内政治・経済の要因によって、目標や作戦の規模が変化する可能性があります。
逆に言えば、株式市場や支持率が大きく悪化しない限り、軍事行動が長期化し、結果としてイラン政権の転覆を目指す段階までエスカレートする可能性も否定できません。
空爆だけでは降伏しないイラン、米国が取る“間接戦争”
アメリカ軍による空爆だけでは、イランが降伏する可能性は極めて低いと考えられます。
一般的に、空爆は軍事施設やインフラに大きな打撃を与えることはできますが、政権そのものを崩壊させることは難しいとされています。
しかし一方で、アメリカ軍が本格的な地上戦を行う場合、少なくとも50万人規模の兵力が必要になるとみられています。現在の兵力体制や世界各地への展開を考えると、これだけの地上軍を投入することは現実的ではありません。
そのため、直接的な軍事侵攻ではなく、間接的な方法でイラン政権に圧力をかける戦略が検討される可能性があります。
その一つが、反政府勢力への支援です。例えば、中東各地に広がるクルド人勢力の一部には、イラン政府と対立関係にある組織も存在します。アメリカがこれらの勢力に武器や情報面での支援を行うことで、内部からイラン政権を弱体化させるというシナリオです。
実際、アメリカは過去にも中東で同様の手法を用いており、例えばシリア内戦では クルド人民兵組織(YPG) を中心とした勢力を支援してきました。
このように、
- 空爆による軍事圧力
- 反政府勢力への支援
- 経済制裁による圧迫
といった複数の手段を組み合わせることで、地上軍の大規模投入を避けながらイラン政権の弱体化を狙う戦略が考えられます。
