
1994年に開港した関西国際空港は、日本初の本格的な24時間運用空港として誕生しました。
当時は「21世紀の日本を代表する国際ハブ空港」と期待され、国内線・国際線を集約することで、アジアを代表する空港へ成長する構想が描かれていました。
しかし、その期待は十分には実現しませんでした。
2000年前後の航空自由化では、地方都市と東京を結ぶ航空ネットワークが急速に発達し、東京一極集中はさらに進みます。一方、大阪はその恩恵を十分に受けることができませんでした。
その背景には、単なる立地や需要だけでは説明できない、「国の方針」が存在していました。
羽田空港は国が整備・管理する空港として発展し、成田空港も当時は特殊法人(新東京国際空港公団)が整備・運営していました。
一方、関西国際空港は株式会社方式で建設されました。
巨大プロジェクトの建設費の多くを借入金で賄った結果、開港時には約1兆2,000億円の有利子負債を抱えることになります。
さらに当時は金利が現在よりはるかに高く、金利水準はおよそ6%~7%前後でした。
そのため年間の利払いだけでも約700億円規模に達し、開港直後から経営は重い財務負担を抱えることになりました。
巨額の利払いは、空港経営に大きな影響を与えました。
空港使用料や着陸料、テナント賃料など、あらゆる料金にコストが反映されることになります。
航空会社から見れば運航コストは高くなり、利用者にとっても運賃や空港内サービスの価格へ影響する要因となりました。
その結果、関西空港は優れた設備を持ちながらも、航空会社にとって利用しやすい空港とは言い難く、利用者数も当初計画を下回る状況が続きました。
現在では国による財務支援や空港運営の見直しが進み、当時とは状況が変わっていますが、開港から長年にわたり背負った財務負担は、関西空港の成長に少なからず影響を与えたと考えられます。
関西空港の開港当初は、将来的に国内線を関西空港へ集約し、伊丹空港を廃止する構想がありました。
しかし、市街地に近く利便性の高い伊丹空港には利用者や地元自治体から存続を求める声が相次ぎ、結果として国内線の中心空港として残ることになります。
当ブログの見方では、運輸省(現・国土交通省)は関空を成功させないために伊丹空港の存続を望み、その意向を あたかも伊丹市側が求めたかのように見せかけた と推定しています。関空の滑走路1本では関西の航空需要を賄えないという、もっともらしい理由を付けたのだと思います。
利用者にとっては便利な選択でしたが、関西空港への国内線集約は実現せず、需要は二つの空港へ分散しました。
もし当初構想どおり国内線が関西空港へ集約されていれば、国内・国際線が乗り継ぎやすい一大ハブ空港が形成されていた可能性もあります。
関西空港の弱点は、大阪都心からのアクセス時間でした。
この課題を解決する切り札が「なにわ筋線」です。
大阪駅や新大阪駅と関西空港を短時間で結ぶ計画でしたが、長年にわたって実現せず、2031年の開業予定まで約30年を要することになります。
もし航空自由化が始まった2000年代前半に開業していれば、関西空港の競争力は現在とは違っていたかもしれません。
大阪には東海道・山陽新幹線という強力な交通インフラがあります。
東京、名古屋、京都、岡山、広島といった主要都市へは新幹線が高い競争力を持っており、大阪発着の国内航空市場は東京ほど拡大しませんでした。
一方、羽田空港には北海道、東北、中国、四国、九州、沖縄など全国から航空需要が集中し、日本最大の国内ハブ空港として発展していきました。
結果だけを振り返ると、不思議なことが続きました。
関西空港は株式会社として巨額の有利子負債を抱え、高コスト経営を強いられました。
伊丹空港は廃止されず、国内線需要は分散しました。
関西空港最大の弱点だった都心アクセスを改善するなにわ筋線も長期間実現しませんでした。
こうした出来事が重なったことで、「まるで関西空港を十分に機能させない見えない手が働いていたようだ」と感じる人がいるのも理解できます。
現在の関西空港は、インバウンド需要の回復により国際線利用者が大きく増えています。
さらに2031年にはなにわ筋線が開業予定で、大阪駅・新大阪駅とのアクセスも改善されます。
開港から30年以上を経て、ようやく当初構想に近い交通ネットワークが整いつつあります。
大阪が再び西日本の玄関口として存在感を高められるかどうかは、関西空港を国内線・国際線が有機的に結び付くハブ空港へ育てられるかにかかっています。
航空自由化は東京一極集中を加速させました。
その一方で大阪は、伊丹空港との役割分担、新幹線との競争、なにわ筋線の遅れに加え、関西空港だけが株式会社方式で巨額の有利子負債を抱えるという制度上のハンディキャップを背負ってスタートしました。
この制度の違いは、空港コストや航空会社の路線戦略、利用者数にも影響を及ぼし、大阪が航空自由化の恩恵を十分に享受できなかった一因となったと考えられます。
現在は財務負担の軽減やアクセス改善が進み、関西空港を取り巻く環境は大きく改善しています。
しかし、関西圏には依然として国際線・国内線の需要が伊丹空港と分散しており、世界の主要ハブ空港と比べても競争力を十分に発揮できているとは言えません。
もし関西空港を西日本の国際ハブ空港として最大限に機能させるのであれば、将来的には伊丹空港の役割を見直し、段階的な廃港も含めて議論する時期に来ているのではないでしょうか。
関西の航空需要を関西空港へ集約することが、航空ネットワークの充実や路線拡大、さらには大阪・関西の国際競争力向上につながる可能性があります。航空自由化の恩恵を真に関西へ取り戻すためには、空港政策そのものを抜本的に見直すことが求められています。
