
近年、東京の百貨店業界では「電鉄系百貨店」を中心に閉店が相次ぎ、「全体的に不振」との声が強まっています。
訪日客や富裕層需要で一部の「呉服系百貨店」は好調でも、都市全体で見れば勢いに陰りがあるのは事実です。
その背景には、立地と出自(ルーツ)のねじれという構造問題があります。
一方、大阪では、百貨店の評価において出自(ルーツ)よりも立地が重要だと、合理的に考えられています。
この違いが、東京と大阪の差を生んでいるのです。
東京の百貨店を大きく分けると、
- 呉服系百貨店:ターミナル直結でなく、鉄道開業前の旧市街に立地
- 電鉄系百貨店:ターミナル直結の立地
という構図になります。
代表例を挙げれば、呉服系百貨店の代表格は
- 三越
- 伊勢丹
- 高島屋
- 松屋
といった老舗ブランドです。
一方、
電鉄系百貨店では
- 東武百貨店(池袋)
- 西武百貨店(渋谷)
- 旧・東急百貨店(渋谷)2023年閉店
- 小田急百貨店(新宿)大幅縮小
- 京王百貨店(新宿)
などがあります。
ここで起きているのが矛盾です。
東京では、「呉服系百貨店が格上」というイメージが根強く残っています。
しかし、呉服系百貨店の多くは銀座や日本橋など主要ターミナル駅ではない立地にあります。
逆に、圧倒的な乗降客数を誇る新宿・池袋などのターミナル直結は電鉄系百貨店が立地しています。
つまり、
- 最高立地(ターミナル)には「格下扱い」されがちな電鉄系百貨店
- 格上の呉服系百貨店はターミナル駅から離れており、立地は2流
というねじれが発生しているのです。
これに対して大阪は事情が異なります。
大阪駅(阪急大阪梅田駅)に、1929年世界初のターミナルデパート「阪急百貨店」が開業しました。
大阪の中心ターミナルである梅田や難波には、
- 阪急百貨店
- 大丸
- 近鉄百貨店
といった有力店が集中しています。
ここで重要なのは、大阪では
「電鉄系百貨店だから格下」
「呉服系百貨店だから格上」
といった固定観念が全くありません。大阪の格上「百貨店」は、阪急百貨店と髙島屋です。
阪急も髙島屋も、消費者にとっては
“一番便利で一番品揃えがいい百貨店”
という認識。
つまり大阪は、
- 立地がいい=売上高増加=ブランド価値が上がる
という市場の競争原理がそのまま働いているのです。
東京の百貨店は、長い歴史の中で「格式」という物語を積み上げてきました。
それは強みでもあります。
しかし現代の消費は、
- 駅直結
- ワンストップ回遊
- 再開発との一体化
- 滞在時間の長さ
が勝負を分けます。
大阪・梅田では、百貨店が再開発の“核”として組み込まれています。
都市の中心動線に真正面から立地し、オフィス、ホテル、商業施設と一体化する。
一方東京では、再開発の主役は超高層オフィスであり、百貨店はその一部にとどまるケースも少なくありません。
この差が、売上の伸び方にじわりと表れてきます。
百貨店の売上は、単なる小売データではありません。
都市の思想を映す鏡です。
- 東京は「ブランドの物語」を重んじる都市
- 大阪は「動線と実利」を重んじる都市
その結果、東京では立地とブランドが必ずしも一致せず、ミスマッチが生じています。
一方の大阪では、立地に恵まれた百貨店がそのまま都市の顔となり、分かりやすい構造が形成されています。
百貨店が伸びるかどうかは、
出自ではなく、都市の中心動線にどれだけ食い込んでいるかで決まります。
大阪には「呉服系百貨店」「電鉄系百貨店」というヒエラルキーが存在しません。
だからこそ、立地の良い店が売上高を伸ばし、一流店となります。
一方、東京では1960年代に形成された「呉服系と電鉄系」という構図が、21世紀になった現在も無意識の前提として残っています。その結果、都市構造の変化に十分適応できず、非効率な状態を抱えたままの店舗も少なくありません。もちろん例外はありますが、全体としては衰退傾向が続くでしょう。
都市構造の違いも大きな要因です。東京ではJR山手線の主要駅が一等地とされますが、大阪ではOsaka Metro御堂筋線の都心駅―梅田、淀屋橋、本町、心斎橋、なんば―が一等地です。
結局のところ、百貨店の未来は「出自(ルーツ)」ではなく「都市動線」が決める。大阪ではその原理がよりストレートに働いているのです。
