道頓堀川は綺麗な清流になったのか?「中浜下水処理場の改修(2021年10月稼働)」と「平成の太閤下水(2015年供用開始)」

2022年4月下旬(降雨直後)日本橋駅付近

2022年5月(降雨から数日後)

2021年10月に中浜下水処理場が稼働し、道頓堀川の水質の改善が期待されたが、稼働前(2021年3月)と比較して目視では改善した印象はない。

むしろ、水質は悪化しているように見える。

上の2枚の写真の撮影場所は数百m離れているが、2022年4月下旬の降雨直後の方が水質が悪く、降雨から数日後は水質がやや改善されているように見える。

したがって、降雨が原因で河川の水質が悪化した可能性がある。もしくは、経済活動の再開により、水質が悪化したのかもしれない。

以下、水質悪化の原因と改善策を具体的に考察してみます。

 

2021年3月撮影

2021年3月撮影

道頓堀川の水質が悪い理由

大阪市内の下水道普及率は97%にもかかわらず、道頓堀川の水質は悪かった。

その理由は、

  • 大阪市の下水道は雨水と汚水を一緒に流す「合流式下水道」で、大雨が降ると、下水の処理能力を超えた一部の汚水が河川に放流されていた。
  • 中浜下水処理場(大阪市城東区)が老朽化していた。
  • 水質の悪い「第二寝屋川」の河川水が「道頓堀川」に流入している。

出典 大阪市

2015年頃に「平成の太閤下水」が完成し、大雨でも下水(汚水)が河川に流れることは、ほとんどなくなった。

2021年10月に中浜下水処理場が稼働し、道頓堀川の手前の「東横堀川」まで直通送水管を設置し、大腸菌ゼロの処理水を直接放流(当面1日最大1万トン)しており、水質改善が期待されていた。

しかし、2022年5月現在、道頓堀川の臭いはないが、目視では「清流」とは言えない。

 

コメント

2021年10月に中浜下水処理場の改修が完了し新施設が稼働開始した。その半年後の2022年4月には、水質改善が期待されたが、むしろ水質は悪化しているように見える。

出典 大阪市

従来、降雨があると下水と雨水が河川に流入していたが、「平成の太閤下水」が2015年頃に供用開始してから、1時間に60mmの降雨でも雨水を貯めることができ、河川に下水が流れなくなったとされる。

しかし、大阪市の「中浜下水処理場」の図を見ると「簡易処理放流(雨天時)」と記載されている。

降雨があると、処理能力が足りなくなって「簡易処理しただけの処理水」が河川に放流されている可能性がある。

また、中浜下水処理場から大腸菌ゼロの処理水を「東横堀川」に直接放流(当面1日最大1万トン)しているが、降雨のため河川の水位が上昇すると予想され、綺麗な高度処理水の放流量を減少させたのかもしれない。

実は、中浜下水処理場には東系列と西系列の2系列があるが、改修されたのは「東系列」だけで、「西系列」は古いままだ。

改修工事中は「西系列」だけ稼働していたので、能力的には「改修された東系列」だけで処理できるのかもしれない。

しかし、道頓堀川の水質が改善されていないことから、「西系列」についてもなんらかの対策が必要ではないか?

また、水質の悪い「第二寝屋川」の河川水を「中浜下水処理場(西系列)」で処理して、再び河川に戻すような取組みが必要ではないか?

 

中浜下水処理場の改修

中浜下水処理場

中浜下水処理場概要

名称中浜下水処理場(東系列・西系列)
所在地大阪市城東区中浜1丁目17番10号
敷地面積84,061㎡
処理区域城東区、中央区、東成区、阿倍野区、生野区、東住吉区の各一部、天王寺区の大部分
処理面積1,869ha
処理能力288,000㎥/日
処理方式
  • (東系列)循環式硝化脱窒型膜分離活性汚泥法(MBR)
  • (西系列)標準活性汚泥法
通水年月
  • (東系列)昭和35年5月
  • (西系列)昭和38年8月
放流先第二寝屋川、東横堀川

出典 大阪市

 老朽化した中浜下水処理場(大阪市城東区)の改修が完了し、新方式の処理施設が2021年10月に稼働した。

具体的には、膜分離活性汚泥法(MBR)という「微生物による処理と膜による分離処理を組み合わせた水処理方法」でMBR下水処理システムと呼ばれる。

このMBR下水処理システムでは孔径0.2μmの膜で下水をろ過することにより、大腸菌ゼロの非常に綺麗な処理水を作り出すことができる。

この超高度処理水を東横堀川に直接送水(当面1日最大1万トン)することで、道頓堀川・東横堀川の水質を改善することができる。

このMBR下水処理システムは「クボタ」が106億円で受注している。


出典 大阪市

 

出典 大阪市

大量の降雨時に、一時的に下水を貯めるのが「平成の太閤下水」で、西天満~天王寺間(松屋町筋)の地下50mに内径6m×長さ4.8kmの下水道が建設され、14万トンの下水を貯留できるようになった。

この「平成の太閤下水」は2015年頃に供用開始されており、1時間に60mmの降雨でも雨水を貯めることができる。

その結果、汚水が河川に放流されることはほとんどなくなった。

 

大阪市内河川水域平均BOD(生物化学的酸素要求量mg/L)

S47S57H4H14H24H25H26H27H28
BOD10.14.52.92.31.51.41.11.21.0

出典 大阪市

BOD 3.0mg/L以下なら水道水に使用できる。

大阪市内河川平均のBODは水道水基準を達成しているが、道頓堀川では大腸菌が検出されており、水道水には適さない。

 

水門調整
海の干潮に応じて、水門を開閉することにより、水質の悪い「第二寝屋川」の河川水が「道頓堀川」に流入するのを防止している。
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