「三宮クロススクエア(完成予想図)」出典 神戸市
神戸市は、2019年7月1日(月)から31日(水)まで「三宮クロススクエア」の整備に向けた大規模な交通社会実験を実施する。
具体的には、三宮交差点から中央区役所前交差点の間約400mの車線数を10車線から6車線に減少させる。
未確認だが、天候の関係で7月2日に変更された可能性がある。
6車線化のイメージ(出典 神戸市)
2019年6月末撮影
神戸市は、平成27年9月に策定した「三宮周辺地区の再整備基本構想」において、三宮にある6つの駅と周辺のまちを一体的につなぎ、交通拠点としての機能や回遊性を高める空間「えきまち空間」を整備する方針。
コメント
神戸市は、なぜ都心道路の車線数を減少させるのだろうか?
神戸市の目的は、三宮駅周辺集中している買物客を、「三宮~元町~ウォーターフロント」という広い範囲に回遊させるためと思われる。
出典 神戸市
三宮駅直結の「巨大商業ビル(ホテル・オフィス・デパート)」が建設されると、三宮駅ビルから買物客が出てこなくなり、三宮~元町の個店の売上が減少する。
そのため、神戸市は、三宮~元町の個店の売上が減少しないように、三宮駅直結の大規模ビルの建設・再開発を先延ばししているのかもしれない。
個店と言っても、高度経済成長時代からの老舗で自社ビルを保有し数億円~数十億円の資産を持っている個店もあり、「数百の個店」となれば政治的影響力は大きい。
また、神戸市の立場に立てば、「三宮に巨大ビルを建設するのは、大阪や東京の企業であり、神戸企業にはメリットは少ない」と思っているのかもしれない。
東京の例
東京では鉄道系デパートのブランド力が低く、伊勢丹新宿店、高島屋日本橋店が東京の一流デパートと認識されている。
しかし、鉄道系デパートでない「伊勢丹新宿店」や「高島屋日本橋店」は、山手線の主要駅に直結しておらず、そこから徒歩10分~15分かかる。
そのため、近年では、アクセスの不便さから売上はあまり増加していない。
一方、関西のデパートは私鉄系デパートのブランド力が高く、梅田駅など主要駅に隣接・直結しておりアクセスがいい。その結果、関西ではデパートの売上増加率は日本一となっている。
神戸市は、三宮駅から徒歩10分~15分のエリアに買物客を回遊させようとしている。しかし、東京でも失敗していることなので、神戸でも失敗する可能性が高い。
このまま行けば、三宮駅ビルは小規模になり、集客力もなくなり、徒歩10分~15分のエリアの個店の売上も減少する可能性がある。
しかし、個店の立場から考えると、政治力を使っても、三宮駅に大規模な再開発ビルを建設させるわけにはいかないだろう。
個店さんだって、従業員さんや家族もいるのだから、、
結局のところ、神戸市の再開発が進まないのは、駅前商店街が大規模な全国チェーン店の出店に反対しているようなものだ。
どちらを選択しても、最終的に、神戸は衰退するしかない。だったら、その衰退のスピードを少しでも遅くしたいと思う気持ちなのだろう。
ライフスタイルの変化
2000年頃までは、専業主婦の方が多く、ゆっくり買い物を楽しむ時間があった。しかし、今では、夫婦共働きが6割~7割となっている。
平日働いている分、休日もしないといけないことが多く、昔のようにゆっくり買物を楽しむ状況ではない。
神戸という立地が、現在の共働きという「ライフスタイル」に適していないという構造的な問題なのでこの問題の解決は難しい。
三宮に大規模再開発ビルを建設すれば、神戸経済が復活するという単純な話ではない。
どうせ衰退するなら、「ゆっくり衰退する道」を神戸市は選択したのだと思う。これについては、「しかたない」面もある。
三宮駅前に大規模再開発ビルを建設しても、儲かるのは大阪や東京の会社だけで、タワーマンションを建設しても、住むのは「大阪の会社に勤務する富裕層」が多い。
そうなると、今、神戸に住んでいる人や神戸の会社にとっては、むしろデメリットの方が多い。
つまり、神戸という都市の発展が、必ずしも、「神戸に住んでいる人」や「神戸の会社」のメリットにはならないのだ。
「神戸に住んでいる人」や「神戸の会社」にとって最もメリットがあるのは「ゆっくり衰退する神戸」なのかもしれない。
そういう意味で、神戸市の「再開発を妨害するような政策」はある意味正しいのかもしれない。