出典 内閣府
沖縄県の那覇市から名護市までの鉄道計画が検討されている。
具体的には、路線長70km・最高速度100km/h・所要時間1時間・建設費は6,000億円~1兆円とされる。
内閣府の試算(糸満市=名護市)では、建設費は最大やく1兆円、毎年150億円の赤字で開業40年の累積赤字は6,000億円に達するとされ、採算性の点から計画は実現していない。
一般的に新規の鉄道建設については40年間で黒字転換できないと政府の補助金が支給されず、事実上建設できない。
沖縄県「那覇=名護」鉄軌道計画 概要
計画名 | 沖縄県「那覇=名護」鉄軌道計画 |
路線 | 沖縄県「那覇市」=「名護市」 |
路線長 | 70km |
最高速度 | 100km/h |
所要時間 | 1時間 |
建設費 | 6,000億円~1兆円 |
工期 | 15年~20年 |
利用者数 |
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運賃 |
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軌道幅 | 狭軌1,067mm(当ブログ予想) |
鉄道運営 | JR九州またはJR西日本 |
建設財源 | 建設費の大半を国費で負担 |
鉄道建設計画の背景
那覇市周辺は交通渋滞が深刻で、朝夕のラッシュ時には那覇市周辺の約10kmを通過するのに約1時間くらいかかる。
既存の沖縄モノレールも2両編成から3両編成に増強しつつあるが、朝夕は満員状態になっている。
若者の車離れから、レンタカーでの移動が主体の沖縄旅行を敬遠する動きがあり、観光客の取り込みのためにも那覇=名護間の鉄道が必要になってきている。
鉄道の構造
計画では、那覇市中心(モノレール県庁前駅)から「浦添市」までの約10kmは地下鉄となるようだ。
本当は那覇空港を起点とすべきだが、モノレールと路線が重複していること、また全体の建設費を少なくするために那覇市中心(モノレール県庁前駅)と那覇空港間の約3kmの建設費を試算に入れていないのかもしれない。
しかし、最終的には那覇空港が起点になると思う。
建設費試算
那覇市中心(モノレール県庁前駅)から宜野湾市までの約10kmは地下鉄方式で建設費は1km当たり400億円で合計4,000億円。
路線長70kmの約7割はトンネルとなるので、地下鉄方式10km以外の60kmは山岳トンネルと高架橋になる。山岳トンネルと高架橋ともに1km当たり100億円とすると合計6,000億円。
当ブログの試算でも建設費は1兆円(4,000億円+6,000億円)になる。
ただ、実際には那覇空港~那覇市中心(モノレール県庁前駅)の3kmも地下鉄方式となると予想され、追加で1,200億円の建設費が必要になると思う。
現時点でも建設費は1兆1200億円で、例えば2030年頃に着工すると建設費の高騰により1兆5000億円、場合によっては2兆円になる可能性もある。
沖縄の入域観光客数
2019年の沖縄の入域観光客数は年間1,016万を達成した。
しかし、2023年度上半期(4月~9月)の入域観光客数は約420万人で2019年度上半期の535万人に対して115万人(-22%)少ない。
国内客は2019年上半期の373万人に対して2023年度上半期の366万人と98%まで回復している。
しかし、外国人客は2019年上半期の162万人に対して2023年度上半期の54万人と33%までしか回復していない。
これは中国本土の航空便が運休していること、クルーズ船の寄港が回復していないためと思われる。
沖縄の入域観光客数は年間800万人~1000万人で推移し、大幅な増加は期待できないかもしれない。
鉄道利用者数予想
観光客年間1000万人のうち、鉄道を利用するのは3割の300万人とすると、往復で累計年間600万人となる。
名護市の人口は約6.5万人なので、鉄道が開通しても名護市から那覇市に通勤する人は3,000人/日程度だと思う。往復で6,000人/日、年間で220万人となる。
上記の2ケースだけで年間利用者数は820万人となるが、途中駅の利用者も合計すると1,200万人~1,500万人程度ではないか?
沖縄県の試算1,168万人~1,570万人/年は達成可能だと思う。
採算性
1人平均運賃1,000円としても年間の鉄道収入は120億円~150億円と予想される。
40年間の合計の鉄道収入は4,800億円~6,000億円になる。
実際には鉄道収入の中なら運行コストを引いた金額で建設費を償還することになる。
しだがって、建設費は2,000億円~3,000億円でないと採算が合わない。
しかし、建設費は6,000億円~1兆円とされるので、採算性の問題から沖縄の鉄軌道計画は現在の枠組みの中では建設できる可能性はほとんどない。
コメント
沖縄県の人口は147万人で神戸市の150万人と同規模だ。
その神戸市は地下鉄2路線を建設しているが、神戸市営地下鉄海岸線(路線長7.9km・2400億円)は開業以来20年間連続赤字で累積赤字額は1,000億円を超えている。
沖縄県で路線長70km・建設費6,000億円~1兆円の鉄道を建設しても、赤字になると思う。
むしろ、既存の沖縄道に自動運転を導入した方がいいと思う。
もし、鉄軌道路線を建設するのであれば、年間利用者3,000万人にしないといけない。
そのためには、観光客を現在の年間1,000万人から2,000万人に倍増し、名護市の人口も現在の6.5万人から13万人に倍増させる必要があると思う。
将来的な構想
那覇市の人口は31万人だが周辺市を含む「那覇都市圏」(那覇市・浦添市・豊見城市・糸満市・南城市・島尻郡)人口は86万人となる。
沖縄本島の南部に人口が集中している。
これは、沖縄県の北部に空港がないことが原因と考えられる。
美ら海水族館の対岸の「伊江島」には伊江島空港(滑走路長1,500m)があるが、現在は民間定期便は運航していない。
しかし、伊江島には「伊江島空港」以外に米軍の「伊江島補助飛行場」(滑走路1,830m・2,130m)がある。
2,500mに延伸して民間航空機も利用できるようにすれば、沖縄の北部振興になると思う。
また、観光客は那覇空港に到着して美ら海水族館まで往復4時間~5時間をレンタカーで移動することが多い。
しかし、伊江島に民間空港があれば、那覇空港に戻ることなく、本土の空港に帰れるのでかなり便利になる。
沖縄の鉄道建設よりも伊江島補助飛行場の拡張の方が建設費が少ない。
例えは、北九州空港の滑走路を2500mから3000mへ500m延長する事業費は130億円となっている。
また、伊江島は沖縄本島から6km離れているが、水深は浅く、高架の高速道路を建設するようなイメージで建設費は高架高速道の3倍~5倍としても2,000億円~3,000億円程度だと思う。
ちなみに、沖縄県宮古島の伊良部大橋(上下2車線)は長さ3,540mで総工費は395億円だった。
米軍伊江島補助飛行場を拡張することに対して、沖縄県が反対がするならば、伊江島空港を1,500mから2,500mに拡張すればいいと思う。