パナソニックは、2022年4月に持ち株会社制に移行し「パナソニックホールディングス(パナソニックHD)」に社名変更する。
同時に、売上高が最大の家電や電設資材などを統括する事業会社(社内カンパニー)の社名を「パナソニック」とし、登記上の本社は大阪府門真市に残しつつ、経営陣や間接部門などを「パナソニック東京汐留ビル」に集約する。
すでに、パナソニックの各事業の顧客は関東に集中しており、営業活動も強化する。
引用 日経新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF18BF90Y1A810C2000000/?unlock=1
- 今後、「中国・北東アジア事業、ホームアプライアンス事業、空調・空質事業、食品流通事業、電気設備事業」を1社に集約する事業会社(社内カンパニー)を設立し「パナソニック」の社名を継承する。
- パナソニックの社内カンパニー「コネクティッドソリューションズ社(CNS)」は、2017年に本社を東京に移転している。
2022年4月以降の拠点と役割
会社名 | 拠点(2022年4月以降) | 役割 |
パナソニック株式会社 | パナソニック東京汐留ビル | 白物家電・電設資材の経営判断・B2B営業拠点 |
旧(アプライアンス本社) | 滋賀県草津市 | 白物家電の研究開発・製造 |
パナソニックHD | 大阪府門真市 | 全社的・長期的経営判断・社内カンパニーの管理 |
家電を担当する社内カンパニー「アプライアンス社(AP)」の登記上の本社は滋賀県草津市なので、単純に大阪から東京に本社機能を移転するという話ではなく、2022年4月の持ち株会社制への移行にともなう大規模な再編の一部だと思う。
また、持ち株会社「パナソニックHD」の本社は大阪府門真市に残る。
パナソニック株式会社
東京に移転しグローバル展開を加速するため、羽田空港へのアクセスのいい「パナソニック東京汐留ビル」に本社機能を移転させる。
名称 | パナソニック東京汐留ビル |
所在地 | 東京都港区東新橋1丁目5−1 |
竣工 | 2003年4月 |
敷地面積 | 19,708.33㎡ |
建築面積 | 10,717.45㎡ |
延床面積 | 47,274.49㎡ |
階数 | 地上24階・地下4階・塔屋1階 |
高さ | 119.85m(軒高109.85m) |
構造 | 鉄骨造(CFT構造)・SRC造・RC造 |
地図
パナソニックの社内カンパニー(2022年3月まで)
社内カンパニー | 業務 |
アプライアンス社(AP) | 売上高 2兆4944億円(2020年度)
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ライフソリューションズ社(LS) | 売上高 1兆5073億円(2020年度)
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コネクティッドソリューションズ社(CNS) | 売上高 8,182億円(2020年度)
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オートモーティブ社(AM) | 売上高 1兆3394億円(2020年度)
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インダストリアルソリューションズ社(IS) | 売上高 1兆2555億円(2020年度)
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中国・北東アジア社(CNA) |
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US社 |
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パナソニックの連結従業員数は24万人で「社員の雇用を守る」ためにも、顧客企業の多い東京に本部機能を移転するのは当然のことだと思う。
2019年3月決算ではパナソニックの売上高は8兆円だったが、2021年3月決算では売上高は6兆7000億円と1兆3000億円も減少している。
東京に本社機能を移転して、意思決定を迅速化し、ビジネスチャンスを逃さないことが重要だと思う。
大阪は衰退するのか?
パナソニックの社内カンパニーの本社機能が東京に移転するので、大阪が衰退すると思うかもしれない。
しかし、例えば、東京の三菱UFJの大阪支店の延床面積は本館と別館で約7.8万㎡もあり、関連会社を含め2,500名が勤務している。
本社の社員数が2,500名以下の企業も多い。大阪には一般的な企業本社よりも従業員数が多い「大阪支店・大阪支社」があるのだから、「本社」かどうかは意味のないことだ。
グローバル展開に有利な東京
伊丹空港は国内出張や旅行には便利だが、3,000m滑走路と1,828m滑走路の2本では羽田や成田に匹敵する国際空港にはなれない。
関空には北米路線がほとんど就航しておらず、関西から北米に行く場合、伊丹空港-羽田空港-海外というルートを使うことが多い。
伊丹空港が存続する限り、関空が強化できず、大阪の企業が東京に移転していくのではないか?
伊丹空港は国内出張や国内旅行には便利だが、長期的に考えると大阪から企業が転出する要因になっているかもしれない。
伊丹空港に国際線を復活させても、空港の処理能力が小さく、羽田空港を超えることはない。
実際、関空開業前の伊丹空港の国際線利用者数は年間500万人だった。
しかし、関空の国際線利用者は羽田空港よりも多い。
従来のパナソニックの事業は「テレビを製造して消費者に販売する」というB2C(ビジエンス・トゥ・コンシューマー)だった。
しかし、現在ではB2B(ビジネス・トゥ・ビジネス)も主力事業になっている。
B2Bの顧客が東京に集中しているから、東京に本社を移転するのは当然のことだ。
東京の顧客に「試作品を見せるので大阪・門真まで来てください」ではB2Bのビジネスは成り立たない。
家電製品などのB2C(ビジエンス・トゥ・コンシューマー)事業は、中国企業との競争が激しく、それだけでは企業として経営が難しくなっている。
やはり、B2B(ビジネス・トゥ・ビジネス)に注力するためにも、顧客企業が多い東京に移転することは当然だと思う。