
淀屋橋
淀屋橋(大阪)と三宮(神戸)では、それぞれ3棟・延床面積合計約26万㎡という、ほぼ同規模の巨大再開発が同時期に進んでいます。
一見すると「規模感は同じ」ですが、その中身と狙いは大きく異なります。
この違いは、そのまま大阪と神戸がどのような都市を目指しているのかを端的に示しています。

- 日本生命淀屋橋ビル
地上25階・高さ123m・延床面積5.0万㎡(2022年竣工)
- 淀屋橋ステーションワン
地上31階・高さ149m・延床面積7.3万㎡(2025年竣工)
- 淀屋橋ゲートタワー
地上29階・高さ135m・延床面積13.2万㎡(2026年竣工予定)
- 延床面積合計:約25.5万㎡

当ブログ作成(イメージ図)
- (仮称)JR三ノ宮新駅ビル
地上30階・高さ155m・延床面積9.2万㎡(2029年竣工予定)
- 神戸三宮ツインゲート1期ビル
地上32階・高さ163m・延床面積9.9万㎡(2027年竣工予定)
- 神戸三宮ツインゲート2期ビル
地上32階級・高さ約165m・延床面積6.9万㎡(2028年以降着工予定)
- 延床面積合計:約26万㎡
淀屋橋の再開発は、明確にオフィス主体です。オフィスビルのレンタブル比(貸室面積比率)は一般的に60~70%とされており、ここでは65%で試算します。
- 延床面積:約25.5万㎡
- オフィス面積:約16万㎡
- 一般的に「10㎡=1人勤務」とすると
- → 最大就業人員:約1万6,000人
この数値が示す通り、淀屋橋は
- 大企業・本社機能の集積
- ビジネス機能の高度化
- 御堂筋という都市の象徴軸の強化
- 地下鉄・京阪との駅直結による利便性
を軸に、「働くための都心」をさらに磨き上げる再開発です。
三宮(神戸):都市の玄関口としての再構築
一方、三宮の再開発は性格がまったく異なります。
三宮は都市の玄関口・交通結節点としての役割が強く、用途構成もそれを色濃く反映しています。
公表されているオフィス面積は以下の通りです。
- JR三ノ宮新駅ビル
約0.6万㎡(12~17階)
- 神戸三宮ツインゲート1期ビル
約1.4万㎡(11~22階、基準階1,165㎡×12フロア)
- オフィス面積合計:約2.0万㎡
(※2期ビルは未公表のため算入せず)
- 最大就業人員:約2,000人
- JR・阪急・阪神・地下鉄・バスの再統合
- 「バスタ神戸三宮」を核とした交通結節点機能
- 商業・ホテル・文化施設(劇場・図書館など)の複合
- 駅前広場や歩行者動線の再編
- 公共空間とまちの一体化
つまり、「働く場所の規模」ではなく「都市を回遊する・滞在する・生活する」を高める再開発です。
① 決定的要因:大阪との距離が近すぎる
- 三宮〜梅田:JRで約21分
大阪にはすでに梅田・淀屋橋という巨大オフィス集積があります。
この距離感で、神戸が第二の都心オフィス街を形成する必然性はありません。
② 地形と都市構造がオフィス都市に向かない
神戸は物理的に拡張できない都市です。
- 北:六甲山
- 南:海
- 東西:細長い市街地
神戸は超高密度のオフィス街を面として形成できません。
- 大阪:平坦で再開発可能な街区が連続
- 神戸:街区が分断され、坂や高低差、道路制約が多い
オフィスは「集積して初めて価値が出る」用途であり、
神戸は構造的に不利です。
現実的な需給を見ると、
- 大阪:空室率が下がると新規需要が生まれる
- 神戸:新築ができると、既存ビルが空く
つまり、
- 建てれば埋まる → 大阪
- 建て替えると移動するだけ → 神戸
神戸では、オフィス需要の総量そのものが増えません。
これは市場として致命的です。
④ 神戸が選んだ「別の勝ち方」
神戸が選んだ方向性は明確です。
- 交通:関西屈指の結節点
- 観光:港・山・街が近接する都市構造
- 滞在:ホテル・商業の強化
- 生活:歩いて回れる都心空間(劇場・図書館)
- 公共空間:広場と回遊性の創出
神戸の再開発は、単なる「働く都市」ではなく「滞在する都市」「神戸市民の生活の質の向上」を目指している
淀屋橋と三宮は、同じ規模の再開発を行いながら、まったく異なる未来を選びました。
- 淀屋橋(大阪):
ビジネスを極限まで磨き上げる都市 - 三宮(神戸):
都市体験と結節点機能を再設計する都市
神戸がオフィス特化を選ばなかったのは、決して消極的な判断ではありません。
「神戸市民が働く街」と「神戸市民が生活・体験する街」を、高度なレベルで両立させる再開発を選択した結果だと言えるでしょう。
