産経新聞によると、「政府はスタートアップ(新興企業)担当相を置く方向で調整に入った。」
引用 https://www.iza.ne.jp/article/20220702-7NQJO5QQVROQVGPAEPOLCNOFEI/
記事によると「大臣ポストの数を増やすのではなく、現在の新しい資本主義を担当している内閣府特命担当相が兼務する案が有力」とのことで、大臣ポストを増やすことが目的ではない。
2022年7月10日の参議院選挙に向けて、岸田首相が選挙のために発表したという側面はあると思う。
しかし、事務局を設置することからある程度の本気度は感じられる。ただ、従来からある「政府の骨太の方針」の名前を変えただけという見方もできる。
具体的には、
- 大学や企業、政府が連携する支援拠点(スタートアップキャンパス)の設立
- 個人保証や不動産担保ではなく、新規事業自体を担保として資金調達できる仕組みの整備
など、すでに発表されている政策も含まれる。
ベンチャー企業とスタートアップ企業の違い
従来から、日本では起業したばかり企業を「ベンチャー企業」と呼んでいるが「和製英語」です。
しかし、スタートアップ企業はアメリカのシリコンバレーで使われるようになった用語です。
ベンチャー企業は既存のビジネスモデルをベースにしているが、スタートアップ企業はイノベーションにより新しいビジネスモデルを構築するという違いがあるとされる。
しかし、あんまり違いはないと思うが、これからは「スタートアップ企業」という言葉が主流になってくると思う。
IT企業はなぜ東京に集中しているのか?
IT企業は東京に集中している。それは、IT企業に必要な「人」「情報」「金」が東京に集中しているからだ。
IT人材の数は、東京を100とすると、大阪は10、神戸は1くらいのイメージで圧倒的に東京にIT人材が集中している。
さらに、どのソフトがいいとか、アメリカのIT企業の日本進出の情報、アメリカのIT新サービスの情報などすべての情報について、東京が圧倒的に多い。
リモート勤務などと言っても、本当の最先端の情報は東京にしかない。
資金調達でも、地方の金融機関に「アメリカのIT企業と提携するので融資してください」と言っても、審査能力がなく、融資されないと思う。
しかし、東京にはベンチャーキャピタル(VC)が多く、資金調達しやすい。
神戸市の対応
神戸市は2016年からスタートアップ企業の支援を打ち出しており、日本の自治体の中では先進的な取り組みをしている。
2019年5月8日、神戸市は米国シリコンバレーに海外事務所を設立し、シリコンバレーのIT企業を神戸市に誘致しようとした。
2022年現在、もしかしたら、シリコンバレーのIT企業神戸に進出しているのかもしれません。しかし、筆者の知る限りでは、神戸に進出していないと思う。
エバンジェリスト
2019年、神戸市は、恐らく日本の自治体の中で初めて、スタートアップ企業を神戸に誘致する「エバンジェリスト」を採用した。神戸市のエバンジェリストは東京で勤務して、東京の企業を神戸に誘致することを目指しているようだ。
コメント
IT企業が起業するには圧倒的に東京の方がビジネス環境が整っている。
したがって、政府のスタートアップ企業支援が数兆円の規模になると、さらに東京にIT企業が集中することになるかもしれない。
神戸市の取り組みは、東京のスタートアップ企業やIT人材を神戸に誘致しようとしているのだと思う。
しかし、彼らは東京がITビジネスの環境が整っているので、東京で起業するのだから、家賃補助などがあっても神戸に移転しようとは思わないだろう。
東京であれば知りえた情報も、神戸に移転すればその情報が入らないか、遅くなる可能性が高いからだ。
なぜ、シリコンバレーにIT企業が集積するのか?
米国カリフォルニア州にはスタンフォード大学があり、学部生約7000人、院生約1万人の合計1万7000人が在籍している。この大学の卒業生が起業することが多い。
関西にも京大、阪大、神戸大、大阪公立大などの優秀な国公立大があるが、連携がほとんどない。
最終的には、上記4大学を統合し、圧倒的な日本一の大学を作らないと関西にIT企業が集積することはないだろう。
しかし、現状、神戸市が単独でIT企業を誘致しようとしているだけだ。しかも、神戸市はIT企業を育成するのではなく、誘致しようとしているに過ぎない。
これでは、関西にIT企業が集積することはない。
政府の骨太の方針にある「スタートアップキャンパス(大学、企業、政府が連携する支援拠点)」くらいは、関西の自治体、大学、企業が一つになって誘致すべきだと思う。
現状では、大阪、京都、神戸がばらばらに誘致合戦を行い失敗するか、関西に小規模な施設を3つも4つも作って人材や資金が分散し、東京に各個撃破されるだけだろう。
関西3空港も、関空、伊丹、神戸と分散したため、結局は関西全体の地盤沈下を食い止められなかった。
スタートアップキャンパスの誘致についても、また同じ失敗が繰り返されるかもしれない。