ANA(全日空)は、2021年3月期の純損益が5,100億円の赤字となる業績予想を発表した。
しかし、2020年4月以降、ANAは、銀行融資、銀行融資枠、劣後ローンなど合計1兆円以上の資金調達を実施したと見られる。
仮に、毎年4,000億円の赤字が続いても耐えられるように、2023年末までの手元流動性資金を確保したと推定される。
ANA2021年3月業績予想(連結)
項目 | 2021年3月予想 | 2020年3月実績 |
売上高 | 7,400億円 | 1兆9742億円 |
営業損益 | △5,050億円 | 608億円 |
純損益 | △5,100億円 | 277億円 |
手元流動性資金と有利子負債残高
項目 | 2020年3月 | 2020年9月 |
手元流動性資金 | 2,386億円 | 4,522億円 |
有利子負債残高 | 8,428億円 | 13,155億円 |
出典 ANA https://www.ana.co.jp/group/investors/data/kessan/pdf/2021_10_1.pdf
年月 | 借入 | 融資枠設定 | 劣後ローン | 手元流動性 |
既存融資枠 | 1,500億円 | |||
(2020年3月末)現預金 | (2,386億円) | |||
2020年4月 | 1,000億円 | |||
2020年4月28日 | 3,500億円 | |||
2020年5月28日~6月29日 | 3,500億円(日本政策投資銀行) | |||
(2020年9月末)現預金 | (4,522億円) | |||
2020年10月30日 | 4,000億円(3メガなど・劣後ローン) | |||
合計 | 4,500億円 | 5,000億円 | 4,000億円 |
2020年10月現在、ANAは融資枠5,000億円を確保しているが、借入はしていないと思われる。
仮に2020年10月の月間の現金流出を500億円とすると、10月末時点のANAの手元資金(4,022億円)+融資枠(5,000億円)+劣後ローン(4,000億円)=1兆3022億円となる。
したがって、毎年4,000億円の赤字となっても3年間で1兆2000億円の赤字なので、2023年末までの資金は確保していると考えられる。
ANAの利用率
ANA国際線 | 旅客キロ | 前年比 | ||
5%(△95%) | ||||
ANA国内線 | 項目 | 5月 | 6月 | 7月 |
旅客数 | 6%(△94%) | 27%(△73%) | 32%(△68%) | |
座席利用率 | 29% | 41% | 53% | |
ピーチ | 旅客数 | 8%(△92%) | 50%(△50%) | 48%(△52%) |
座席利用率 | 26% | 50% | 59% |
ANAは2021年3月末時点で、「国際線旅客数 5割」「国内線旅客数 7割」を予想している。
ANA国際線は前年比95%減少と回復の兆しがないが、ANA国内線旅客数は前年比32%、ピーチは前年比48%まで回復している。
したがって、国内線は2021年度に通常年の5割以上の売上も可能かもしれない。
経費 | 内容 | 削減額(通期) |
変動費 | 生産量の抑制 | △3,910億円 |
固定費 | 人件費(ボーナス無し・年収3割カット) | △1,520億円 |
その他 | ||
合計 | △5,430億円 |
- 2020年度は7機を退役させる計画だったが、追加で28機退役させ、2021年3月末までに合計35機を退役させる。
- 長距離国際線用大型機材(B777)25機削減
- 人件費(ボーナス無し・年収3割カット)
機材 | 追加退役数(2021年3月末までに退役) | |
777-300 | 777-300ER | △13機 |
777-300 | △2機 | |
777-200 | 777-200/200ER | △7機 |
合計 | △22機 |
ANA本体、ピーチで遡及できていない「中・低価格需要」の取り込みを図るため、「第三ブランド」の航空会社を2022年に運航開始する。
- 運航路線 中距離国際線
- 使用機材 ボーイング787(ANA保有機)
- 座席数 約300座席
- クラス 2クラス制
- 母体会社 エアジャパン
- パイロット 外国人派遣パイロット
ANAは当初、新型コロナウイルスの影響は1年程度で終結すると予想し、借入金で対応し、コロナ終結後、素早く路線を回復する計画だったので、機材の削減や人件費削減などが遅れたのではないか?
しかし、新型コロナウイルスの影響が予想よりも長引くようになったので、2020年秋になって、大型機25機削減、人件費年収3割カットなどのリストラ策を打ち出したのではないか?
ANAは、1兆円以上の資金調達に目途を付けており、毎年4,000億円の赤字となっても今後3年間(2023年末)までは資金繰りに問題ないと思われる。