出典 近畿日本鉄道
近鉄は、大阪市の湾岸エリア「夢洲」で進められている統合型リゾート(IR)の開発にあわせて、夢洲と奈良方面を結ぶ直通電車の運行を計画しています。具体的には、大阪メトロ中央線(けいはんな線)を経由して、近鉄奈良線などに乗り入れる形です。
2025年8月、近鉄は実際の線路を使った「試験運行」を始めることを発表しました。
参照 産経新聞
出典 大阪府(イメージパース 結びの庭)
大阪市の湾岸部「夢洲(ゆめしま)」では、2030年秋に統合型リゾート(IR)が部分開業する予定です。MICE(国際会議場など)やホテル、エンターテインメント施設が整備され、国内外から多くの観光客が訪れると見込まれています。
近鉄もこの動きに合わせて、夢洲と自社沿線を直結する直通列車を走らせる計画です。これにより、夢洲に来た観光客を奈良や京都、伊勢志摩などの観光地へ誘導し、関西全体の観光振興につなげたい考えです。
運行ルートは、奈良・京都・伊勢志摩方面から大阪府東大阪市の「長田駅」までは近鉄の線路を使い、長田駅から夢洲駅までは大阪メトロ中央線の線路を走る形になります。
ただし、両社の線路では「電気を取り込む仕組み(集電方式)」が異なるため、そのままでは直通運転できません。そこで近鉄グループHDは、新型車両の開発を進めています。
すでに2022年5月には、直通に必要となる「可動式第三軌条用集電装置(集電靴)」の試作品が完成したと発表しました。現在はシミュレーションによる検証を行っており、今後は「実際に夜間の線路を使って試験運行をする」予定です。
出典「近鉄グループ中期経営計画2024」
計画の概要
- 夢洲(大阪メトロ中央線)から近鉄けいはんな線を経由し、近鉄生駒駅で奈良線に直通。
- IR(統合型リゾート)の来場者を、奈良・京都・伊勢志摩方面に直接運ぶ構想。
技術上の課題
- 大阪メトロ中央線・近鉄けいはんな線:第三軌条方式・直流750V
- 近鉄奈良線:架空線方式・直流1500V
- → 集電方式が異なるため、両方に対応できる新型車両が必要。
技術開発の取り組み
- 近鉄はドイツ企業と共同で、新型車両の開発を進めている。
- 「集電方式を切り替える技術」を導入予定。
軌道整備
- 集電方式を切り替えるため、生駒駅付近に「渡り線」を設置し、けいはんな線から奈良線へスムーズに乗り入れできるようにする計画。
2030年秋に部分開業を予定している大阪・夢洲の統合型リゾート(IR)では、カジノやホテルに加えて「MICE施設」が大きな柱となっています。では、このMICEとは一体どのようなもので、どんな効果が期待できるのでしょうか。
MICEとは?
MICE(マイス)とは、次の4つの言葉の頭文字を合わせたものです。
- Meeting(会議) … 企業などが行う会議
- Incentive Travel(報奨・研修旅行) … 社員旅行や表彰を兼ねた研修旅行
- Convention(国際会議) … 学会や国際機関などが開く大規模な会議
- Exhibition/Event(展示会・イベント) … 見本市、展示会、各種イベント
つまりMICEとは、大勢の人を集めるビジネス関連イベントの総称です。
観光とは違うMICEの特徴
観光は「楽しむ」ことを目的としますが、MICEは「仕事や学び」を目的に人が集まるのが特徴です。
- 観光 … 遊び・観光地訪問が中心
- MICE … 会議・学会・展示会などビジネスや研究が中心
そのため、単純な観光施設と比べて、来場者の質や経済効果が大きいと言われています。
夢洲IRにおけるMICEの役割
夢洲IRでは、大規模な国際会議場や展示場が整備される予定です。これにより:
- 世界中の企業や研究者が大阪に集まる
- 観光客だけでなくビジネス客も呼び込める
- 交流から新しいビジネスチャンスや研究開発が生まれる
- 大阪・関西の国際的な存在感が高まる
といった効果が期待されます。
MICEがもたらす広がり
MICEによって「人が集まる」こと自体が経済効果を生み出すだけでなく、人と人との出会いや交流から新しい価値が生まれるのが大きなポイントです。
- 新しい産業やイノベーションの芽が育つ
- 研究や学術の国際的な連携が進む
- 大阪や関西全体のブランド力が向上する
まとめ
- 夢洲IRは2030年秋に部分開業し、MICE施設が大きな目玉となる。
- MICEは観光だけでなく、国際的な交流・産業振興につながるイベント。
- 近鉄は夢洲と奈良・京都・伊勢志摩を直通で結ぶ新型車両を開発中。
- MICEの来場者をスムーズに広域観光地へ誘導することで、関西全体の発展を目指す。
夢洲IRと近鉄直通列車計画は、単なる交通整備や観光事業にとどまらず、関西を「世界とつながる交流拠点」に進化させる大きなプロジェクト といえるでしょう。
交通インフラ整備
大阪市湾岸の「夢洲」に建設される統合型リゾート(IR)には、近鉄・京阪・JR西日本など複数の鉄道会社が直通運転や線路延伸を計画しています。
開業すれば、関西圏の交通アクセスが大幅に改善され、地元住民にとっても移動の利便性が高まります。
巨大な経済効果
- 初期投資額:約 1兆2,700億円
- 宿泊施設:2,500室
- 年間来場者数:約 2,000万人(国内客:約1,400万人/海外客:約600万人)
- 年間売上高:約 5,200億円(ゲーミング:4,200億円/ノンゲーミング:1,000億円
- 雇用者数:約 1万5,000人
観光需要の波及効果
- 海外からの観光客 約650万人 がIR以外の関西観光地を訪れ、平均3泊すると、 年間で 約2,000万泊分 の宿泊需要が新たに生まれる。
鉄道利用の増加によるメリット
- 観光客の増加で鉄道利用者が増えると、乗客減少で廃線が心配されている 地方のローカル線の維持 にもプラスに働く可能性がある。
つまり夢洲IRは、単なるカジノやホテルの集積ではなく、
- 交通インフラ整備の促進
- 関西全体の観光需要拡大
- 雇用創出や地域経済の底上げ
これらが組み合わさることで、関西は世界に開かれた「交流と観光の拠点」として大きく進化することが期待されます。
大阪メトロ中央線(けいはんな線)と近鉄奈良線は集電方式が違うため、両方の集電方式に対応する装置(集電靴)が必要となる。
具体的には、大阪メトロの「第三軌条」では集電靴から集電し、近鉄線奈良線ではパンタグラフから集電する。
2022年5月23日、近鉄は可動式第三軌条用集電装置(集電靴)の試作品が完成し、今後各種試験をすると発表した。
出典 近畿日本鉄道
出典 近畿日本鉄道