
神戸空港では、2025年4月に国際チャーター便が就航し、2030年には国際定期便の運航開始が予定されています。
当初、神戸市は第2ターミナルビルの建設費を利用者負担によってまかなう方針を示していました。
しかし実際には、指定管理者である関西エアポート神戸に対して、神戸市が年間約13億円、5年間で最大78億円を支払う形となり、想定外の財政負担が生じています。
また、神戸市は、2030年までに約360億円もの国際化関連費用を負担する一方で、国際線誘致のためにボーイング737クラスの着陸料を約7万円という低水準に設定しているとの指摘もあります。
このように数百億円規模に及ぶ公費投入が見込まれる一方で、将来的な利用者数や収益によって投下資金を回収できるのか、依然として不透明な点も少なくありません。
本稿では、神戸空港の国際化に至った経緯と投資規模、着陸料の実態、財政構造が抱える課題、そして今後求められる打開策について、順を追って整理していきます。
神戸市は2024年度、国際線対応のために184億円を予算化。新ターミナルの建設、駐機場の拡張、税関・検疫・入管などの入出国設備整備が含まれる。さらに、市の資料によれば、追加投資が見込まれています。
- 駐機スペース・舗装・灯火設備:143億円
- 構内道路・駐車場整備 :50億円
- 第2ターミナル整備 :150億円
これらを合算すると、神戸空港の国際化の総事業費は約283億円に達します。
当初の計画では、神戸市が資金を投じて第2ターミナルビルを建設し、その施設を事業者(関西エアポート神戸)が借り受け、神戸市に賃貸料を支払う予定でした。
ところが実際には、神戸市は第2ターミナルビルの運営を民間に委託する「指定管理者制度」を採用。つまり、市が事業者(関西エアポート神戸)に運営を任せ、その対価として指定管理料を支払う方式へと転換したのです。
その結果、神戸市が事業者(関西エアポート神戸)に5年間で指定管理料を最大約78億円を支払うことになりました。
繰り返しますが、当初計画では、神戸市が賃貸料を得る予定だったのに、逆に神戸市がお金(指定管理料)を支払って民間に運営を委託する形になったのです。
しかも、指定管理料は年間13億円と巨額で、5年間で最大78億円にのぼります。この金額に国際化関連費用約283億円を加えると、5年間で総額約361億円に達します。
一部で注目されている「着陸料7万円」という金額は、神戸空港条例に定められた着陸料の算定基準に基づいて導き出されたものです。
国際化にあたって新たな条例改正は行われておらず、国際線についても国内線と同じ基準が適用される見通しとなっています。
この水準は他の主要空港(関空や伊丹空港の国内線15万円)の半額で、神戸空港は安い着陸料で国際線を誘致しているという指摘もあります。
このように、神戸市が税金を投じて神戸空港のコストを抑えている結果、民間ベースで採算を確保している関西空港が競争面で不利に立たされる可能性もあります。
本来インバウンド客が負担すべき空港コストを神戸市が税金で事実上補填しているため、関西全体としてもインバウンドによる経済効果が縮小する恐れがあります。
神戸空港はこれまでに約3,140億円(周辺整備を含めると7,000億円~8,000億円)もの税金を投じて建設されましたが、運営権は191億円で民間に売却されています。
今回の国際化にあたっても、ボーイング737クラスで7万円という低価格の着陸料を設定して国際線を誘致する一方で、約280億円の税金が追加投入される予定です。
さらに、国際線が発着する第2ターミナルについては、神戸市が使用料を得るどころか、事業者(関西エアポート神戸)に年間約13億円、5年間で約78億円もの指定管理料を支払うという、極めて異例の構造となっています。
つまり、神戸市は国際化費用として2030年まで約361億円を負担することになるのです。
このような財政構造では、国際化による経済波及効果が十分に発揮されなければ、市民への負担が増えるリスクが高まります。今後は、以下のような現実的な戦略が求められます。
- 着陸料・ターミナル使用料の見直し
- 利用促進策の強化(路線誘致や観光連携など)
- 民間事業者との収益分配の再設計
神戸空港の国際線は、現在、神戸市が約360億円もの資金を負担し、さらに着陸料を7万円という低価格に設定して誘致しているにすぎません。
神戸空港の持続的な発展を考えるなら、関西空港のように民間ベースで採算が取れる構造に転換しなければ、いつまで経っても税金頼みの空港運営が続くことになり、神戸市の発展は望めません。
