神戸港(筆者撮影)
神戸は「おしゃれ」「異国情緒」と言うイメージがあるが、ここ数年は不人気な観光地になっている。特に外国人観光客が少ない。
2019年の年間延べ宿泊者数
順位 | 都道府県 | 年間延べ宿泊者数 | うち外国人(比率) |
1位 | 東京都 | 6,620万人 | 2,473万人(37%) |
2位 | 大阪府 | 4,451万人 | 1,702万人(38%) |
3位 | 北海道 | 3,688万人 | 855万人(23%) |
4位 | 沖縄県 | 2,704万人 | 600万人(22%) |
5位 | 千葉県 | 2,683万人 | 455万人(17%) |
6位 | 静岡県 | 2,249万人 | 233万人(10%) |
7位 | 神奈川県 | 2,114万人 | 294万人(14%) |
8位 | 京都府 | 2,107万人 | 796万人(38%) |
9位 | 愛知県 | 1,783万人 | 344万人(19%) |
10位 | 長野県 | 1,756万人 | 157万人(9%) |
11位 | 福岡県 | 1,670万人 | 338万人(20%) |
12位 | 兵庫県 | 1,402万人 | 134万人(9%) |
兵庫県の延べ宿泊者数(日本人+外国人)は年間1,402万人だが、外国人はその約9%の134万人にとどまる。
東京都、大阪府、京都府の外国人比率は約38%なので、やはり、外国人観光客は兵庫・神戸をスルーしていると言える。
また、電車で20分の距離の大阪府には年間1,704万人の外国人が宿泊しているが、兵庫県の外国人宿泊数は10分の1以下の134万人でしかない。
なぜ、兵庫・神戸は不人気な観光地になったのか?
神戸の海は、誰でも綺麗に撮影できる。いわゆるインスタ映えする風景だ。
しかし、観光地としては神戸は、あまり人気がない。何故か?
確かに「神戸の海」はインスタ映えするが、プロのカメラマンが天候のいい時に撮影した写真以上には綺麗に撮影できない。
つまり、旅行前に「神戸の写真」を見た時の満足度を100%とすると、実際に神戸に行った時の満足度は70%~80%くらいなってしまう。
また「インスタ映え」する場所は神戸市内で数か所しかない。JR三ノ宮駅周辺を見るととても「フォトスポット」とは思えない。
さらに、神戸に行かないと体験できないような体験型施設がない。
結局、神戸に行っても数か所のお決まりの場所で写真を撮って半日で観光が終わってしまう。
神戸に宿泊する理由がない。
阪急「神戸三宮駅」北側(2019年)
神戸の港の風景を見るために、JR三ノ宮駅や元町駅で下りると、雑多な街並みが目にはいる。
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この問題については2021年春には阪急「神戸三宮駅」北側の道路が美装化されるが、それでも、他都市と比較すると中心駅周辺の再開発が遅れている印象はぬぐえない。
2020年10月(歩道化・美装化工事中)
神戸港が見える商業施設「神戸ハーバーランドumie」にしても、観光客用のレストランが多く、感激するほど「美味しい食事」は期待できない。
神戸市内には、おしゃれなカフェもあるのだが、そこからは海は見えない。
つまり、「神戸の海」と「食事などの体験」が結びつかない。連続性がないのだ。
神戸の市街地は小さいので徒歩で回れるが坂が多く不便だ。しかも、地下鉄の駅がないところも多い。また、観光用のループバス(シティ・ループ)は海岸から北野(山の手)まで周回するので、「JR三ノ宮駅からハーバーランド」といったピンポイントの移動には使い勝手が悪い。
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神戸市は、2021年4月より神戸市街地とウォーターフロントを結ぶ「連接バス」の本格運行を開始する。(2021年1月からプレ運行開始)
出典 神戸市
神戸が目指しているのは「山と海が近いコンパクトなおしゃれな都市」と思うが、「山も海」もアクセスが悪い。
六甲山に行くにも新神戸駅から神戸布引ロープウェイが一番アクセスがいいが、それでも地下鉄「新神戸駅」からのエスカレーターは長すぎるし、そこからさらに階段があって不便だし、風景も六甲山頂に比べると雄大ではない。
六甲山頂に行くには「六甲ケーブル」を利用するが、最寄り駅の「阪急六甲駅(またはJR六甲道駅)」からの「路線バス」が不便すぎるし、六甲ケーブル山上駅からさらにバスに乗る必要がある。
また、神戸の海「メリケンパーク」へJR三ノ宮駅から歩くと国道と阪神高速を通って30分以上かかる。タクシーを使うほどの距離でもない。路線バスは分かりにくい。ループバスは途中停車が多くピンポントで行くには不便。
結局、神戸人にとっては「山や海」は市街地から眺めるだけで、実際には行く機会が少ないのではないか?地元の人間が行かず、観光客だけではアクセスも良くならない。
神戸人が日常的に「山や海」に行ってアクセスを改善・維持する必要があると思う。
東京・お台場(筆者撮影)
関東圏の人は、東京のお台場や横浜に日帰りで行ける。
そのため「神戸の海」を見るために旅行代金3万円以上払って神戸に行きたいとは思わない。
また、大阪など関西圏の人も数年に1回、神戸に日帰りで行けば満足するので、何度も神戸に宿泊する理由がない。
神戸の海(2020年11月 筆者撮影)
神戸人は外国文化の影響なのか「会員制レストラン」が多いと思う。
例えば「北野坂にしむら珈琲店」も1974年に日本初の会員制喫茶店として開業している。(1995年の阪神大震災後、一般にも開放された)
当然だが、一般観光客は会員制レストランには入店できない。
日本全国どこでもそうだが、観光客用レストランは高くて美味しくないことが多い。
したがって、神戸のグルメと言えば某大手デパート前の「コロッケ屋」で立ち食いしたり、高架下の中華料理屋のパイプ椅子で食事したりすることになる。
実際、中華街は100円~300円のB級グルメばかりになってしまった。
「神戸はおしゃれ」というのは、神戸市内全体を見れば、疑問符がつく。
明治初期から神戸は横浜とともに欧米文化の輸入拠点であり、日本国内に向けての文化発信都市だった。しかし、1980年頃から海外旅行が一般的になり、交通手段も「船舶」から「飛行機」へシフトしたため、神戸の文化発信拠点としての地位は低下した。
そもそも、明治初期から1980年頃まで、神戸は欧米文化を取り入れるだけで、独自の「神戸文化」を築くことができなかった。
そこに、今日の神戸の衰退の原因があるのではないか?
21世紀の文化発信拠点はyoutubeなどのSNSだが、神戸市はいまだに1977年の神戸を舞台とした朝ドラ「風見鶏」の成功体験から抜け出せず、「フィルムコミッション」にこだわり過ぎていて、文化発信ができていない。
欧米文化の受け売りではない、21世紀の新しい「神戸独自文化」を創造する必要があるのではないか?
神戸は、リアリティのない「おしゃれな神戸」路線を変更することはないだろう。
また、神戸には、「京都や奈良の寺院」「大阪城」「USJ」「海遊館」を超える観光施設の計画もない。
したがって、今後も外国人・日本人も神戸に観光目的で宿泊することは少ないだろう。
もちろん、逆に、外国人観光客が少ないという点に魅力を感じる日本人観光客もいるだろう。
しかし、そういう人は定年退職した高齢者に多く、神戸は高齢者の観光地になるのかもしれない。
そもそも、1950年~1960年の神戸のイメージは港湾労働者や暴力団の多い暗黒社会だった。
その後、1970年代に朝ドラで「神戸の異人館」が取り上げられ「異国情緒のあるおしゃれな観光地」というイメージが定着したに過ぎない。
1970年代から「インスタ映え」を意識していた神戸人はすごいが、そこから40年経っても神戸は何の進歩もしていない。
神戸のインバウンド需要を拡大させるためには、表層的な「おしゃれな街」イメージを止めて、水道筋商店街などのリアルな街をアピールする必要がある。
しかし、それらを「B面の神戸」「シタマチコウベ」とアピールしているが、なんの魅力もない。
「B面の神戸」ってどういう意味なのか?そこに暮らしている人間は「B面神戸人」ですか?
「B面の神戸」という発想は「A面の神戸人」がいつも考えていることなのだろう。
神戸は「おしゃれな街」というイメージがあるが、実際は三宮駅周辺など昭和の下町の風景のままで、「おしゃれな街」を期待した観光客は失望する。
神戸が観光地として復活するには、
- 本当に街全体を「おしゃれな街」にする
- 「神戸はおしゃれな街ではない」と宣言する
この2択だと思う。
しかし、神戸人って本当はお金を使わないから「おしゃれな街」を作っても観光客だけが利用するだけになって維持できない。
結局、「神戸=おしゃれな街」を返上して、一から観光都市「神戸」を作ることをしないと、観光都市「神戸」の復活はないだろう。
有馬温泉
京都や大阪にない神戸の観光と言えば「有馬温泉」だと思う。しかし、三宮駅から有馬温泉へのアクセスがよくない。