「次世代電池ナトリウムイオン電池」ついに登場！リチウムイオン電池との違いをわかりやすく解説

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ここ数年、リチウムイオン電池の発火事故が世界中で相次いでいます。その影響で、飛行機への持ち込みルールもどんどん厳しくなってきました。スマホやモバイルバッテリーに使われるリチウム電池は、高性能で便利ですが、一方で「火を出すかもしれない危ない電池」として警戒されつつあるのです。

そんな中で注目されているのが、新しく登場した「ナトリウムイオン電池」です。2025年3月には、家庭でも使えるモバイルバッテリーとして、エレコムから製品化もされました。火を出しにくく、地球にもやさしい次世代の電池として、今後ますます注目が集まりそうです。

では、今主流のリチウムイオン電池（Li-ion電池）と、新しく出てきたナトリウムイオン電池（Na-ion電池）では、どこがどう違うのでしょうか？

結論から言うと、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池よりも「重く」「大きく」「高い」です。
でも、その代わりに「充電できる回数が5000回」と、リチウムイオン電池の500回の10倍と長持ち、さらに発火しにくいという安全性に特長があります。

しかも「マイナス35℃」のような寒い場所でも使えるため、特定の用途にはピッタリの電池です。

この記事では、ナトリウムイオン電池のメリット・デメリットを一覧表でわかりやすく整理しながら、両者の特徴や今後の可能性について解説していきます。

ナトリウムイオン電池とは？

ナトリウムイオン電池とは、リチウムイオン電池と類似の仕組みを持ち、正極・負極間をナトリウムイオン（Na⁺）が移動する蓄電池です。

構造も製造工程も、基本的にはリチウムイオン電池と共通点が多いため、技術的な置き換えも比較的スムーズと考えられています。

筆者の予想ですが、現在はナトリウムイオン電池の需要が少ないため、専用の製造ラインを使わずに、リチウムイオン電池の製造ラインで「ナトリウムイオン電池」を作っていると思います。

最大の特徴は、リチウムの代わりに地球上に豊富に存在する「ナトリウム」を使用する点です。これが、多くの企業や研究機関から注目されている理由のひとつです。

メリット・デメリット一覧表【ナトリウム vs リチウム】

項目	ナトリウムイオン電池（Na-ion）	リチウムイオン電池（Li-ion）
資源の豊富さ	ナトリウムは海水や岩塩に多く含まれ、非常に安価	リチウムは希少で、価格が高騰しやすい
コスト	安価な材料で製造可能、価格競争力あり	高価な材料（リチウム・コバルトなど）
環境負荷	レアメタル不要、サステナブル	採掘による環境・人権リスクが大きい
安全性	熱安定性が高く、発火リスクが低い	高エネルギー密度の代償で発火の懸念
温度耐性	低温下でも安定した性能を発揮可能	気温変化に弱く、性能が落ちやすい
エネルギー密度	低い（重量・体積あたり）	高い（スマホ・EV向けに最適）
サイズ・重量	同容量で大型化しやすい	コンパクトな設計が可能
産業化の進展度	実証・量産初期段階	商用量産が確立、実績豊富
適した用途	定置用蓄電池、低価格EVなど	EV、スマートフォン、ノートPCなど
製造インフラ	リチウムイオン設備を転用可能だが未整備	世界中に供給網とリサイクル体制あり

メリット詳細解説

1. 圧倒的な資源の豊富さ

ナトリウムは海水1リットルに約1g含まれるほど豊富な元素で、地球上にリチウムの1000倍以上存在します。そのため、資源の枯渇リスクや地政学的な供給不安が極めて小さいのが強みです。原料価格も安定しやすく、サプライチェーンをグローバルに分散しやすい点も評価されています。

2. 材料コストの安さ

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池の代替だけでなく、ニッケルやコバルトなどの高価なレアメタルを必要としない構成も可能です。そのため、特に「定置型蓄電池」のように大容量が必要な分野では、製造コストの優位性が際立ちます。

3. 発火リスクが小さい

ナトリウムはリチウムに比べて反応性が穏やかで、熱暴走を起こしにくい性質を持ちます。電池自体の発火・爆発リスクが低いため、安全性が重要視される用途──例えば住宅用・商業施設用の蓄電池や輸送用などに適しています。

4. 寒冷地での安定性能

ナトリウムイオンは、低温下でもリチウムイオンほど性能が劣化しにくいとされており、寒冷地や高緯度地域でも優れた放電特性を示します。これは、屋外設置型蓄電池や冬季使用のインフラ設備などにおいて、大きなアドバンテージです。

デメリット詳細解説

1. エネルギー密度の低さ

ナトリウムイオンは原子量がリチウムの約3倍あるため、同じ体積・重量あたりで貯蔵できるエネルギー量が低くなります。そのため、スマートフォンや電気自動車のように「軽量・小型で高出力」を求められる用途には不向きです。

2. 技術の成熟度が低い

ナトリウムイオン電池はまだ研究開発・初期量産段階にあり、長寿命化、急速充電、高温安定性などの技術面で未解決課題が多いのが実情です。特にEV用途での実績はほとんどなく、信頼性の面ではリチウムに劣ります。

3. サイズが大きくなりやすい

エネルギー密度が低いため、同じ電力量を得るために大きなセルやパックが必要になります。住宅や工場向けの定置用途では問題になりにくいものの、スペースが限られる用途では設計上のハンディとなります。

4. 産業インフラが未整備

現在の電池製造・流通網の大半はリチウムイオン電池向けに最適化されており、ナトリウムイオン電池に対応したリサイクル設備、検査技術、物流体制はこれから構築される段階です。

用途による使い分けの可能性

用途	適した電池	理由
定置型蓄電池（住宅・再エネ）	ナトリウム	安価・安全性重視、重量制限なし
スマートフォン / ノートPC	リチウム	高エネルギー密度・コンパクト設計
電気自動車（EV）	両方の可能性	高性能車：リチウム、低価格車：ナトリウム
寒冷地での設備	ナトリウム	低温性能に優れる

主要企業の動向

中国CATL（世界最大の電池メーカー）：2023年にナトリウムイオン電池搭載EVを発表。
インドReliance：ナトリウムイオン電池技術の量産化に注力。
フランスのTiamat社、日本の住友電工なども開発中。
エレコム（ELECOM）は、2025年3月に家庭でも利用可能なナトリウムイオン電池搭載のモバイルバッテリー「ナトリウムイオンモバイルバッテリー（型番 DE‑C55L‑9000）」を発売。容量9,000mAh・USB‑C（最大45W出力）とUSB‑Aを備え、−35℃～50℃の環境で使用可能で、約5,000回の充電サイクルに対応する長寿命設計です。価格は約8,000円～9,000円です。