
2025年、東京都の住宅市場に大きな懸念が走った。その内容は、日本経済新聞が報じた「東京23区におけるマンション家賃の可処分所得に占める割合が34%で、危険水域に達した」というものだ。
可処分所得の30%を住宅費に費やす水準は、一般に「生活が圧迫されはじめる目安」とされており、これを超えた東京23区は、まさに“住まいの費用対生活余力”が岐路に立たされている状況だという。
家賃はなぜ上がり続けているのか?
まず押さえておきたいのは、東京23区の賃貸価格が歴史的な高水準を維持している点だ。
・23区の単身向け賃料(30㎡未満)は10万円台前半に入り、年々上昇傾向が続いている。
広めのファミリー向けでも、平均家賃は20万円台に達する例もあり、都心部の住宅コストは非常に高い。
都心部のマンション価格は、中古物件であっても1億円を超える水準に達している。本来であれば、30代〜40代で賃貸住宅から分譲マンションへとステップアップしていくのが一般的なライフコースだった。
しかし現在は、その移行が現実的でなくなり、多くの世帯が賃貸マンションに住み続けざるを得ない状況にある。この「出口の詰まり」が、賃貸マンション需要を恒常的に押し上げ、家賃高騰をさらに加速させている。
このように需要が根強い一方で、供給には制約がある。東京都心の人口集中と、建築コストや規制の影響で建物新増設ペースが追いつかない。
そのため、空室率は低く、地主・オーナー側に価格設定力がある状態が続いている。
2030年の東京では、「普通の暮らし」ができる層は、すでに大きく限定されている可能性が高い。
結論から言えば、世帯年収1,000万円以上の高所得者層(全体の約2割)だけが、住環境・治安・教育・消費の水準を維持しながら安定した生活を送れる都市になる。
残る世帯年収1,000万円以下の約8割の中間層にとって、東京は「普通の生活することすら厳しい都市」になりつつある。
2030年の東京では、年収400万円以下では「普通の生活」が成立しない。
貧富の差が「居住地」と「治安」を分ける
貧富の差は、やがて都市空間そのものを変える。
- 高所得者が集まるエリアは治安・サービスが維持される
- 低所得者が集中するエリアは、インフラ・治安が悪化する
これは海外の大都市で既に見られる現象であり、東京も例外ではない。
「富裕層も安泰」とは限らない
皮肉なことに、こうした都市の分断は、富裕層にとっても居心地の悪さを生む。
- 治安リスクの増大
- サービス労働者の不足
- 都市の魅力そのものの低下
結果として、富裕層ですら、
- 海外
- 郊外
- 他都市
へと流出し始める可能性がある。
つまり東京は、中間層を締め出し、低所得層を追い込み、最終的には富裕層すら定着しなくなる
という、最悪の循環に入るリスクを抱えている。
大阪は、日本で唯一、
- 大都市圏としての規模
- 雇用の多様性
- 医療・教育・文化・商業の集積
を東京と並ぶレベルで備えながら、生活コストが決定的に低い都市だ。
単なる地方中枢都市ではなく、「大都市として完結している」ことが、最大の強みである。
大阪は、中間層が「分譲マンションに届く」都市
大阪では依然として、
- 30代〜40代
- 共働き世帯
- 世帯年収700〜900万円層
が、都心または準都心で分譲マンションを購入できる現実がある。
これは、ライフステージが前に進める都市であることを意味する。
東京のように「賃貸に滞留する都市」とは、構造が異なる。
テレワーク時代と相性がいい
2030年に向けて、
「毎日フル出社」が前提の働き方は確実に減る。
大阪は、
- 出社頻度が低くても成立する都市
- 新幹線・空港アクセスが良い
- 首都圏と物理的に切り離されている
ため、テレワーク+都市生活の両立がしやすい。
首都圏郊外よりも、「生活満足度」という点では合理的だ。
中間層を軸にした住環境の整備大阪が進むべき最大の方向性は、中間層が無理なく住み続けられる都市であり続けることだ。
東京が「高所得者しか住めない都市」へ向かう中で、大阪はあえて逆を行くべきである。
- 都心・準都心での分譲住宅供給
- 子育て世帯向けの住環境整備
- 家賃と所得のバランスを崩さない都市計画
重要なのは、地価やマンション価格を過度に押し上げる再開発ではなく、実需を重視した都市づくりだ。
大阪は「投資対象としての都市」ではなく、「生活の場としての都市」を主軸に据える必要がある。
東京とのアクセス改善は「量」と「柔軟性」
大阪が東京の代替・補完都市として機能するためには、東京とのアクセスの質的転換が欠かせない。
リニア中央新幹線が東京―名古屋間で開業しても、大阪への延伸はなお時間を要する。だからこそ2030年代の現実解は、航空アクセスの強化である。
伊丹空港を廃港し、機能を関空に集約する
大阪の都市構造を次の段階に進めるためには、伊丹空港の廃港は避けて通れない。
伊丹空港は、
- 都市中心部に近い一方で
- 騒音問題を抱え
- 発着枠・運用時間に制約がある
という、2030年代の成長戦略と相性の悪い空港になっている。
例えば、新大阪駅周辺でも伊丹空港の航路下にあるため建物の高さは100mに制限されている。また、伊丹空港に近い大阪市北部(十三駅周辺)などは開発が遅れている。
もし、伊丹空港が廃港になればJR大阪駅まで5分という距離であり、良好な住宅街となりえる。
関空=羽田を「24時間・大動脈」に
そこで必要なのが、伊丹=羽田路線の全面的な関空移管だ。
具体的には、
- 伊丹=羽田
1日60便(30往復) - これをすべて関空=羽田へ移管
さらに、関空の24時間運用を活かし、
- 関空=羽田
1日80便(40往復)体制
を構築する。
これにより、
- 早朝・深夜の柔軟な移動
- 出張・テレワークとの親和性向上
- 東京との心理的距離の縮小
が一気に進む。
「関空ハブ化」は大阪全体の競争力を高める
伊丹を廃港し、関空に集約することは、単なる空港政策ではない。
- 国際線と国内線のシームレス化
- インバウンドとビジネス動線の統合
- 24時間都市としての信頼性向上
大阪は、「空港を持つ都市」から「空港と一体化した都市」へ進化できる。
2030年代の大阪が目指すべき姿は明確だ。
- 中間層が住める
- 生活コストが制御されている
- 東京と高速・高頻度でつながる
- 国際都市としても機能する
東京が限界に近づく中で、大阪は「別解」を提示できる数少ない都市である。
伊丹空港という過去の遺産に固執するのではなく、関空を軸に未来へ舵を切れるか。
2030年代の大阪の成否は、この決断にかかっている。
