神戸空港(筆者 撮影)
2022年9月18日、関西3空港懇談会が開催され、2030年をめどに神戸空港(神戸市)に国際線(定期便)を就航させることで合意した。
神戸空港の国際線(定期便)の発着回数は1日最大40回(20往復)とする。
また、大阪・関西万博が開催される2025年には国際チャーター便の受け入れを可能とし、国内線の発着回数も現在の1日80回(40往復)から1日120回(60往復)に拡大する。
引用 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQ9L524HQ9LPLFA006.html
神戸空港へは西から着陸し、西に向かって離陸するので、1日の発着回数の上限は120回とする見方もあった。本当に1日160回なのか?
1日160回を検証
関空の発着枠も年間23万回から30万回に拡大し、3空港合計で年間50万回とすることで合意した。
伊丹空港の発着枠は約13.5万回(1日370回)なので、逆算すると神戸は約6万回となる。
これは1日に約160回となるので、神戸空港の発着枠は1日160回(国内120回+国際40回)となる。
2030年に24時間運用か?
従来120回が上限という意見があったが、それは1日7時~午後11時の16時間運用の場合だと思う。試算すると1時間当たり7.5回となる。
1時間当たり7.5回で24時間運用だと、1日180回となる。
誤差はあるが、1日160回というのは、24時間運用の場合ではないか?
発表はされていないが、2030年に神戸空港は24時間運用となるかもしれない。
各空港の発着枠
空港 | 発着枠(2022年) | 発着枠(2030年) |
関西空港 | 23万回 | 30万回 |
伊丹空港 | 13.5万回 | 13.5万回 |
神戸空港 | 3万回 | 6万回 |
羽田空港 | 48.6万回 | 48.6万回 |
成田空港 | 30万回 | 50万回(3500mのC滑走路完成後) |
2030年時点で首都圏の発着枠98.6万回に対して、関西3空港は約50万回に止まる。
当ブログが思う神戸空港国際化の背景
2018年9月4日、台風21号により関西は大きな被害を受け、関空もA滑走路(3,500m)などが浸水、連絡橋にタンカーが衝突するなどし、運休・減便を余儀なくされた。
そのため、伊丹空港で40便、神戸空港で30便の国際便を受け入れることにしたが、1便も利用されなかった。
普段、国際線が就航していない空港に突然、国際線を就航させるのは、エアラインの受け入れ体制がなく、困難だったからだと思う。
関空を補完するために、普段から神戸空港に国際線を就航させることになったのだと思う。
また、1日数便の国際線では空港会社が赤字になるので、1日20便(40回)を就航させることになったのだと思う。
神戸空港の運用時間と発着枠(当ブログまとめ)
年月 | 発着枠 | 運用時間 |
2006年開業 | 60回(30往復)/日 | 午前7時~午後10時(15時間) |
2019年8月~ | 80回(40往復)/日 | 午前7時~午後11時(16時間) |
2025年(予想) | 120回(60往復)/日 | 午前7時~午後11時(16時間) |
2030年(予想) | 160回(80往復)/日
|
午前7時~午後11時(16時間) |
神戸空港の2019年度の国内線利用者数は329万人(1日80回)なので、2030年ころに国際線と国内線の合計で660万人(1日160回)となるのではないか?
「交通アクセス」と「旅客ターミナル」の増強
2019年5月11日の「関西3空港懇談会」で2025年開催の大阪・関西万博までに神戸空港の国際線就航を検討することになった。
しかし、関西経済連合会の松本正義会長は、神戸空港の国際化について「道路・ポートライナーの空港アクセスの強化」と「ターミナルの拡張」を条件としていた。
2030年の神戸空港の国際化に向けて、2つの課題を解決する必要があるので、考察してみたいと思います。
神戸空港国際化の条件と費用(当ブログ予想)
神戸空港国際化の条件 | 関経連松本会長 | 神戸市 | 建設費(予想) |
道路の強化 | 〇 | 〇 | 200億円 |
ポートライナー強化 | 〇 | △(未定) | 800億円(8両化) |
空港ターミナル拡張 | 〇 | △(未定) | 100億円 |
合計 | 1,100億円 |
空港アクセス改善策について
神戸市は神戸空港島とポートアイランドを結ぶ「神戸スカイブリッジ(1,187m)」を現在の片道1車線(上下2車線)から片道2車線(上下4車線)に拡張、さらに新神戸駅までの「生田川右岸線(長さ約1,500m)」の拡幅を行うとしている。
ポートライナー(神戸新交通ポートアイランド線)を現在の6両編成から8両編成へ増強するには約800億円の費用がかかるとされており、一旦は見送られた。
しかし、2030年の神戸空港の国際化(1日40回・20往復)、国内線の増強(1日80回 ⇒ 1日120回)が決定したことで、再び「ポートライナーの8両化」が動き出す可能性もある。
ポートライナーの現状
午前7時~午前8時のポートライナー「三宮駅」は、ポートアイランドへ通勤・通学する乗客で混雑しており、先発と次発の車両には乗れず、次々発の車両にやっと乗れる状態。
待ち時間としては7分~8分かかる。
空港利用者の増加人数予想
2030年に神戸空港が国際化されると国内線と合計で発着枠は1日160回(80往復)となり、現在の1日80回(40往復)から倍増する。
利用者も2019年度の329万人から倍増し、660万人になると予想される。年間330万人の増加ということは1日当たり約9,000人の増加となる。
ポートライナー利用者の割合を50%とすると、1日当たり4,500人増加する。下りのみで考えると1日2,250人の増加で、このうち朝の7時台~8時台の2時間で1,000人程度増加するのではないか?
つまり、1時間当たり500人の増加が予想される。
ポートライナーの輸送力
7時台は1時間当たり25便運行しており、2.4分に1便となるが、公式の最小運転間隔は2.2分に1便なので若干は増便できる。
また、1編成6両(定員約300名)なので、15,000名の輸送力がある。ただし、公式には約12,500人/時の輸送力とされる。
需要予想
ポートライナーの輸送力は最大1時間当たり15,000人と思われるので、神戸空港の国際化に伴う利用者の1時間当たりの増加数約500人は十分吸収できると思える。
しかし、国際線客では、100Lの大型キャリーバッグを2個もって乗車する利用者もいるので、実質的には1時間当たりの増加数は1,000人と考えていいかもしれない。
現状でも7分~8分の待ち時間が発生しているので、そこに大型キャリーバッグを持った国際線客が乗ってくると、大混乱になると思う。
待ち時間は10分以上になる可能性もある。
また、夕方の帰宅時には、神戸空港駅でほとんど満員となり、途中駅から乗車するにはやはり10分以上の待ち時間が発生するかもしれない。
久元神戸市長の発言
久元神戸市長は2022年9月18日「空港へのアクセスについて、新たな道路計画も含めて国土交通省と協議をしている」ことを明らかにした。
久元市長の発言は、具体策には言及していないが、国土交通省が補助金を出すなら「ポートライナーを8両化」をするという趣旨ではないだろうか?
しかし、市役所的なポートライナーの乗客増加数の予想では、1時間当たり片道500人の増加なので、国土交通省が補助金を出すとは考えられない。
また、ポートライナー8両化の費用は800億円とされ、神戸市議会でも賛否両論があると思われる。
当ブログの予想
結局、2030年の神戸空港国際化時点では、ポートライナーの8両化はされないと思われる。
しかし、実際に国際線の運航が始まると、ポートライナーの混雑に拍車がかかり、毎日通勤・通学する人には不満となると思われる。
そこから、再びポートライナーの8両化を計画し、2035年頃着工し、2045年くらいに8両化するかもしれない。
その間、三宮駅で10分以上の待ち時間が発生するなら、ポートアイランドのオフィスへの通勤環境は悪化し、JR三ノ宮駅から新快速で23分のJR大阪駅周辺にオフィスを移転する動きがあるかもしれない。
バス輸送
当ブログの予想では1時間当たり空港利用者は500人が増加して合計1,000人になる。
三ノ宮から神戸空港までバス(定員50名・輸送時間30分)で輸送する場合、6分間隔で1時間当たり10便運行すれば増加分の500人に対応できる。
しかし、バス需要があるのは朝の7時台~8時台だけの2時間だけなので、採算的には黒字化は困難で、年間数億円の赤字が発生する可能性がある。
一方、夕方はポートライナーの神戸空港駅が始発なので、バスを利用する人はほとんどいないと思う。
新国際線ターミナル建設について
空港ターミナルについては、神戸市から具体的な提案が示されていないが、新国際線ターミナルミを建設するのではないか?
国際線ターミナル建設費試算
現在の神戸空港ターミナルの延床面積は15,200㎡で、新国際線ターミナルの延床面積は10,000㎡~20,000㎡と予想される。
2014年に那覇空港国際線ターミナルが開業しており、そこから建設費を予想してみると、約100億円程度と思われる。
那覇空港国際線ターミナル
名称 | 那覇空港国際線ターミナル |
延床面積 | 23,000㎡ |
階数 | 4階 |
待合室 | 約500席 |
店舗 | 8店舗 |
開業 | 2014年 |
国際線利用者数 | 384万人(2018年) |
事業費 | 80億円 |
久元神戸市長の考え
2022年9月18日、久元市長は「(国際線ターミナルの整備)は最終的には民間事業者の収入によって償還されるもの」とした上で、「誰がどのように負担をするのか、これから協議をスタートさせる」と述べた。
引用 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20220918/k00/00m/040/180000c
当ブログの解釈では、一旦、神戸市が空港ターミナル整備費用を負担し、運営者が賃貸料を支払う形になると思う。
賃料予想
神戸市は、神戸空港の42年間の運営権を約192億円で関西エアポートなどの企業連合に売却した。
1年間当たり4.6億円になる。
2030年の神戸空港国際化時点で、発着枠は現在の80回から160回(国内120回・国際40回)と倍増するので、新ターミナルの賃料として追加で4億円程度は出せると思われる。
ターミナルの建設費を200億円とし60年で償却すると1年当たり3.3億円となるので、十分、実現できると思われる。
神戸空港国際線就航先は?
神戸空港の国際線就航が認められた場合、就航先はどこだろうか?
欧米向け長距離国際便は滑走路長3,000m~3,500m以上でないと就航できない。
しかし、神戸空港の滑走路長は2,500mなので、神戸空港の国際線は近距離国際便となる。
具体的には、ソウル(韓国)・上海(中国)・台北(台湾)が有力と思われる。
また、スカイマークは2019年11月29日から成田~サイパン便を運航しており、サイパン路線の可能性もある。
香港も就航先の候補地となるが、ソウルなどと比較して距離が長く、可能性は低いのではないか?
国際ルールの問題
国際線の就航先を恣意的に決定することは国際ルール上認められない。
したがって、就航先を決定するには合理的な基準(例えば「ペリメータールール」)が必要となる。
ペリメータールールとは、一定の路線距離を上限として運航を制限する ルール。
例えば、神戸空港から半径2,000km以内の国際線のみ就航するようになるのではないか?
最大5都市就航か?
国際線は相互主義により、日系エアラインと相手国のエアラインが同数就航させることになっている。
例えば、神戸~インチョン(韓国)便の場合、日系エアラインが2往復、韓国系エアラインが2往復の合計4往復(8回)になる。
採算を考慮すると、最低でも1都市当たり、1日4往復(8回)で運航すると予想されるので、1日の国際線発着枠40回から逆算すると就航都市は最大5都市となるのではないか?
当ブログの予想就航都市
- ソウル(韓国)・上海(中国)・台北(台湾)
- 香港(中国)・サイパン
関空国際線との競合?
羽田空港の2019年暦年の国際線利用者は約1,870万人、成田空港の国際線は約3,670万人で、関空国際線は3,191万人となっている。
関西圏の国際線需要は、首都圏よりも少なく、神戸空港に国際線が就航すると、関西の国際線が分散して、共倒れになる可能性がある。
実際、羽田空港が国際化し、成田空港を2空港体制になったことで、デルタはハブ空港を成田からインチョン(韓国)に移転させた。
エアラインの国際線拠点の運営費は数億円かかる。
海外エアラインが関空と神戸空港の2拠点体制になるとコストが増加するが、2空港の合計の国際線利用者は増加しないので、エアラインにとっては神戸空港の国際化は単にコストが増加するだけになる。
それならば、関空から撤退し、羽田と成田に集約する動きがあるかもしれない。
神戸市民の国際線需要予測
一般的に日本人の約20%が1年間に1回以上海外旅行や海外出張する。
神戸市の人口は約150万人なので、年間30万人が国際線を利用していると予想される、往復で国際線60万人の需要がある。
神戸空港の国際線は1日20往復(40回)なので、1便当たり150人が利用すると、1日40回で6,000人になる。年間約220万人になるが、神戸市民の利用は60万人で、神戸国際線の約27%にとどまる。
神戸市が800億円をかけてポートライナーを8両化しても、国際線利用者の73%が神戸市民以外となる可能性がある。
神戸空港国際化は大阪にとってチャンス
神戸空港を国際化しても、ポートライナーが8両化されないから、ポートアイラインドへのアクセスは混雑して悪化する。
ポートライナー三宮駅で10分の待ち時間が発生するなら、JR新快速で三ノ宮から大阪へ23分で行く方が便利ということになる。
神戸ポートアイランドから大阪梅田へのオフィスの移転があるかもしれない。
結局、神戸空港を国際化しても、空港アクセスを改善しないと、神戸は逆に衰退する可能性もある。
神戸市の手腕が試される事業だと思う。
神戸は観光施設を建設するのか?
インバウンド客は大阪や京都、神戸を飛び越えて姫路に行っている。
神戸空港を国際化しても、三ノ宮駅で乗り換えするだけでは、神戸経済にメリットはない。
インバウンド客を神戸に呼び込むために、観光施設が必要ではないか?
例えばUSJは1つの追加エリアだけで400億円~600億円の投資をしている。
それに匹敵する観光施設を作るならば、数百億円、場合によっては1,000億円の観光施設が必要ではないか?
神戸を魅力ある都市にしない限り、関空利用者が神戸に移転するだけで、関西全体ではゼロサムとなる。
神戸市は、一部の関係自治体の反対を押し切って、神戸空港を国際化するのであるから、関西全体でプラスにする責任があると思う。