ルネッサなんば
「ルネッサなんば」は、1996年に開業したOCAT(大阪シティエアターミナル)を中核施設とする商業施設・オフィス・文化施設・住宅などの再開発地区で、大阪市の第三セクター「株式会社 湊町開発センター(MDC:Minatomachi Development Center Co.,Ltd)」が運営している。
再開発の規模は旧国鉄「旧・湊町駅(現・JR難波駅)」周辺の面積17.5haで、OCAT(大阪シティエアターミナル)以外に、湊町リバープレイス、マルイト難波ビル(ホテルモントレ グラスミア大阪)、近鉄難波ビル、ローレルコート難波、ローレルタワー難波、難波サンケイビル、ルネッサ難波ビル、なんばセントラルプラザリバーガーデン、ルネッサなんばタワーなどで構成される。
OCAT(大阪シティエアターミナル)は、関空へのアクセス拠点として開業したが大阪メトロ御堂筋線「なんば駅」から約500m離れており経営的に低迷した。
しかし、高速道路直結のバスターミナルとして人気となり、2004年度決算で黒字化を達成した。
「ルネッサなんば」(OCAT)が低迷した理由
1996年の開業時はOCATで飛行機のチェックインし、地下のJR難波駅から関空へ直通電車で行くことができた。
しかし、2001年のアメリカ9.11以降は安全性の理由からOCATでのチェックインは廃止になり、2008年にはJR難波駅から関空への直通電車も廃止になった。
一番の低迷の理由は「なにわ筋線」が開業しなかったことだと思う。
コメント
ルネッサなんばの開発面積は17.5haで、グラングリーン大阪(うめきた2期)の開発面積約17ha(地区面積約9.1ha)に匹敵する巨大再開発事業だった。
この再開発の規模から考えて、なにわ筋線の開業を前提としていたはずだが、なにわ筋線の計画は中断された。
一説には大阪市と大阪府が建設費4,000億円(当時)の負担についての交渉が決裂したことが計画中断の理由とされている。
しかし、ルネッサなんばの運営会社は大阪市の第三セクター「株式会社 湊町開発センター」であり、大阪市としては「なにわ筋線」が開業しなければ、大阪市の第三セクターの経営が失敗すると分かっていたはずだ。
また、大阪市と国、鉄道事業者だけで「なにわ筋線」を開業することもできたと思う。
それにも関わらず「なにわ筋線」は開業しなかった。
ということは、大阪市が「なにわ筋線」の計画を中断したのだ思う。
1994年当時のなにわ筋線は「新大阪駅~JR難波駅」までだったが、「新大阪駅~北梅田駅」はJR西日本が独自に建設するので、残り区間は「北梅田駅~JR難波駅」の7.2kmに短縮された。
そのため当時の建設費予想4,000億円から3,300億円に減額されている。
なぜ大阪市は「なにわ筋線」の計画を中断したのか?
運輸省(現在の国土交通省)は「なにわ筋線の整備効果として、大阪市営地下鉄(当時)御堂筋線の利用者が17%減少し混雑が解消される」との試算を発表した。
一応、なにわ筋線の整備効果として、御堂筋線の混雑解消というメリットの形にはなっている。
しかし、大阪市交通局(当時)としては、鉄道運賃収入が17%減少すると理解したと思う。
当時の御堂筋線の運賃年間収入は約500億円、経費は100億円で、年間400億円の利益を出していた。
この400億円の利益を赤字のバス事業に50億円補てんしたり、他の路線の赤字補填につかっていた。
大阪市交通局としては、御堂筋の利益が17%(大阪メトロ試算で100億円)減少することは絶対に認められなかったのではないか?
大阪市交通局が「なにわ筋線」の開業に反対したため、大阪市職員組合と癒着していた大阪自民も「なにわ筋線」に反対したのではないか?
2031年春に開業予定の新線「なにわ筋線」を巡り、路線が競合する大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、地下鉄御堂筋線や四つ橋線を中心に「(年間で)100億円近い減収影響が出る可能性がある」と明らかにした。
運輸省(当時)の狙い
運輸省(現在の国土交通省)は「なにわ筋線の整備効果として、大阪市営地下鉄(当時)御堂筋線の利用者が17%減少し混雑が解消される」との試算を発表した。
一見すると「なにわ筋線の整備効果」と思える。
しかし、運輸省としては、大阪市交通局が御堂筋の運賃収入が17%(大阪メトロ試算で100億円)減少すると受け取り、なにわ筋線の開業に反対すると予想していたと思う。
つまり、運輸省が「なにわ筋線」の開業に反対していたのではないか?
1995年の関西空港の開業時、羽田空港は国内線のみ(一部国際線はあった)、成田空港は4,000m滑走路1本しかなった。
伊丹空港が廃港され、関空に1本化できれば、日本最大の国内線と国際線のハブ空港になっていた。
これは運輸省にとって都合が悪かった。
民間企業で言うと、大阪支社が東京本社の売上高を上回るようなもので、運輸省にとっては関空が成田空港よりも利用者が多くなることは認められなかった。
そのため、運輸省は関空を国営ではなく、民間企業の運営とし、1兆円以上の有利子負債を負担させた。その結果、関空国際線の着陸料は成田空港よりも高くなった。
さらに、伊丹空港を存続させ、関空が国内線と国際線のハブ空港になることを阻止したのではないか?
そもそも、神戸に新空港を建設するはずだった。
しかし、運輸省は「神戸市が空港反対」したことを理由に、その後、神戸市が「空港建設に賛成」したにも関わらず、大阪府泉州沖に「関西空港」を建設した。
この流れも不可解なものだった。
神戸沖に新空港ができたならば、JR大阪駅から直通の快速電車で30分で行けたはずだ。
そうなれば、伊丹空港も廃港になり、羽田空港なみに便利な空港になっていたはずで、成田空港はもちろん、羽田空港に匹敵する空港になっていたはずだ。
神戸空港の建設が認められた背景
運輸省は神戸沖に空港を建設することに反対していたにもかかわらず、神戸空港の建設を認めた。
2006年に神戸空港が開港し、この結果、30km圏内の伊丹空港、関西空港、神戸空港の3つの空港が利用者を奪い合うことになった。
明らかに空港が多過ぎる。
運輸省も3空港が利用者を奪い合い、関西3空港が弱体化することもわかっていたはずだ。
それにもかかわらず、神戸空港の建設を認めたのはなぜか?
関西空港の弱体化以外に理由はない。
今で続く東京の中央官庁の大阪敵視政策
IR統合型リゾートの区域整備計画の認定は、2022年9月頃~年末の予定だったが、2023年4月14日になった。
そもそも、IRは国内3か所の予定で、東京、大阪、地方都市の3か所という想定だったと思う。
しかし、東京IRが遅れたため、IR計画全体のスケジュールを延期したが、それでも東京と横浜のIR計画は頓挫した。
その結果、大阪+地方都市2か所の3か所になりそうになった。中央官庁としては、東京以外に3か所のIRができることは認められない。
そこで、IRの基準をホテル客室数2,500室に引き上げて、東京と大阪以外ではIR事業の採算がとれないようにした。
その結果、当初のIR3か所から大阪IRのみの1か所となった。
今後も、大阪IRについては厳しい基準が課せられる可能性があり、失敗する場合もある。