左「阪急百貨店」・中央「阪神百貨店」
2023年1月31日、東京・渋谷の東急百貨店本店が閉店した。再開発で地上36階建ての超高層複合ビルが建設されるが、東急百貨店が再び入居するかは決まっていない。
新宿の小田急百貨店も2022年10月に本館を閉店し、隣接する「新宿西口ハルク」に移転し規模を縮小して営業している。
池袋の西武池袋本店も2023年2月に、ヨドバシカメラの持ち株会社の「ヨドバシホールディングス」がパートナーとなる「アメリカの投資ファンド」に約2000億円で売却される予定と報道されている。
東京の「電鉄系百貨店」が衰退する理由
まず、東京と大阪の百貨店の違いについて、考察する。
東京の電鉄系百貨店の終焉
関西では馴染みがないが、東京では「電鉄系百貨店」と「呉服系百貨店」とに分かれる。
具体的には、三越伊勢丹などの「呉服系百貨店」が格上で、「電鉄系百貨店」は格下とされる。
大阪では、「呉服系百貨店」と「電鉄系百貨店」に格の違いはない。
実際、大阪のキタ(梅田)では、「阪急百貨店」がもっとも売上が多く、ミナミ(難波)では「髙島屋」が売上が多い。
山手線と地下鉄の優劣
東京では山手線の主要駅が一等地とされ、地下鉄駅は2番手とされる。
大阪では、大阪メトロ「御堂筋線」の主要駅が一等地で、JR大阪環状線は2番手とされる。
東京の百貨店は格の立地がミスマッチ
例えば、東京でもっとも売上高の多い「呉服系」の伊勢丹新宿本店の最寄駅は、東京メトロ「新宿三丁目駅」で、立地的には一等地とは言えない。
小田急新宿本店は山手線「新宿駅」にほぼ直結しており、立地的には「伊勢丹新宿本店」よりもいいが、「伊勢丹新宿本店」よりも格下とされる。
一方、大阪の「阪急百貨店梅田本店」は、JR大阪駅にも近く、立地的に一等地で百貨店としての格も高い。
コメント
東京では「電鉄系百貨店」が格下とされるため、立地的に優位な「電鉄系百貨店」の売上が上がらない。
逆に、格上とされる「呉服系百貨店」は山手線の主要駅からアクセスが悪く、電車利用者からは不便になっている。
大阪梅田の「阪急百貨店」は、世界初の本格的ターミナル百貨店として1929年に開業し、沿線住民の取り込みに成功した。
一方、東京の電鉄系百貨店はその後に開業したが、「呉服系百貨店」と競合し「沿線住民」の取り込みが十分できなかったと思う。
将来の予想
東京の「電鉄系百貨店」は今後も衰退すると思う。
また、東京の「呉服系百貨店」も山手線の主要駅からアクセスが悪く、長期的に見れば衰退する可能性がある。
大阪と東京の売上高の比較
阪急百貨店
2022年3月百貨店店舗別売上高
店舗 | 売上高(2022年3月) | 売上高予想(2023年3月) |
伊勢丹新宿本店 | 2,536億円 | 2,844億円 |
阪急うめだ本店 | 2,006億円 | 2,377億円 |
阪神梅田本店 | 282億円 | 730億円 |
阪急+阪神 | 2,288億円 | 3,107億円 |
当ブログの分析では、伊勢丹新宿本店の売上高には、日本橋三越本店の外商部門、三越通販の売上高も含まれると思われる。
阪急うめだ本店と阪神梅田本店は同じ「エイチ・ツー・オーリテイリング」の傘下で、距離的にも50m程度しか離れておらず、実質的に1店舗で集計してもおかしくはない。
阪神梅田本店のグランドオープンは2022年4月6日で、上記の売上高282億円は2022年3月31日までの数字のため、売上高に反映されていない。
ちなみに、2023年3月期の阪神梅田本店の売上高予想は730億円、阪急うめだ本店は2,377億円で、合計すると3,107億円となる。
(参照:エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 2022年3月期 決算補足資料)