
大阪府堺市で、南海本線の大規模な高架化工事が進められています。
対象となるのは、南海本線の諏訪ノ森駅付近から浜寺公園駅付近までの約2.7km。
高架化によって7カ所の踏切をなくし、鉄道によって分断されている街を一体化する計画です。
その中でも大きく変わるのが、浜寺公園駅周辺です。

浜寺公園駅には1907年(明治40年)に建設された歴史的な旧駅舎が残されています。
一方で、南海本線は高架化され、新しい駅が整備されます。
2026年10月の変更箇所
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026年10月2日 | 南海本線「浜寺公園駅」東改札を地下に変更 |
| 2026年10月10日 | 阪堺線の一部区間が単線運行へ変更(船尾停留場から浜寺駅前停留場までの一部区間) |
南海本線の高架化と阪堺線の移設が同時に進むことで、浜寺公園駅周辺は今後大きく姿を変えることになりそうです。


南海本線「浜寺公園駅」東改札を地下に変更

阪堺線を東側に移設
参照 堺市
今回の事業は、堺市が進める「南海本線(堺市)連続立体交差事業」です。
対象区間は、石津川付近から高石市域までの約2.7km。
このうち、
- 堺市域:約2.3km
- 高石市域:約0.4km
となっています。
高架化される駅は、
- 諏訪ノ森駅
- 浜寺公園駅
の2駅です。
さらに、7カ所の踏切が除却される計画です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 南海本線(堺市)連続立体交差事業 |
| 区間 | 石津川付近~高石市域 |
| 事業延長 | 約2.7km |
| 堺市域 | 約2.3km |
| 高石市域 | 約0.4km |
| 高架化駅 | 諏訪ノ森駅・浜寺公園駅 |
| 踏切除却 | 7カ所 |
| 関連側道 | 約2.9km |
| 駅前整備 | 諏訪ノ森駅・浜寺公園駅 |
| 浜寺公園駅周辺 | 土地区画整理事業も実施 |
| 概算事業費 | 約680億円 |
| 事業完了予定 | 2033年度末 |
堺市によると、事業費は当初の約423億円から約680億円へ増額され、事業期間も6年間延長されています。鉄道構造物の設計基準変更や物価高騰、隣接事業の工程などが理由です。
浜寺公園駅で特に注目したいのが、歴史的な旧駅舎です。
現在の旧駅舎は1907年(明治40年)に建設された木造駅舎。
長い歴史を持つ建物で、国の登録有形文化財にも登録されています。
南海本線の高架化に伴って駅としての役割は終えましたが、堺市は歴史的建造物として保存・活用を進めています。
工事期間中は、旧駅舎を工事に支障のない場所へ曳家によって移動し、改修後は地域の歴史・文化の発信や市民交流の場として試験活用されています。
つまり浜寺公園駅は、
明治時代の旧駅舎
と
2030年代の新しい高架駅
が共存する、非常に特徴的な駅になりそうです。
南海本線高架化工事の進展に伴い、浜寺公園駅では駅の動線も変わります。
南海電鉄は2026年8月26日、2026年10月2日(金)の始発電車から東側改札の位置を変更すると発表しました。
東側改札は地下通路内へ移動します。
また、東側自由通路の出入口も変更されます。
さらにエレベーターの設置工事も進められています。
駅利用者にとっては改札や通路の位置が変わるため注意が必要ですが、都市開発の視点から見ると、これは高架化工事がさらに進んでいることを示す動きです。

今回の事業で、もう一つ注目したいのが阪堺電車です。
南海本線と阪堺線は浜寺公園駅周辺で交差しています。
南海本線を高架化するためには、阪堺線との交差部分についても工事が必要になります。
そこで堺市は、阪堺線を南海本線の東側へ移設する計画を進めています。
堺市の説明資料では、阪堺線を南海本線の東側、船津水路の位置へ移設し、単線化する案が示されています。
この計画によって、南海本線と阪堺線の乗り換え距離を近づけ、交通結節点としての機能を高めることも狙われています。
2026年10月10日から阪堺線の一部区間が単線運行へ
そして、この阪堺線の工事に関連して、2026年10月から大きな変化があります。
堺市によると、2026年10月10日(土)の始発電車から、船尾停留場~浜寺駅前停留場の一部区間で単線運行に切り替えられます。
現在は上り線・下り線の2本の線路がありますが、一部区間ではこれを1本に統合し、上下線が同じ線路を使用する方式になります。
これは阪堺線全線を単線化するという意味ではありません。
南海本線の高架化工事に関係する一部区間で、単線運行に切り替えるというものです。
阪堺線の「単線化」は最終形にもつながる
さらに興味深いのは、2026年10月の単線運行が、将来的な阪堺線の姿にもつながっていることです。
堺市の説明資料では、南海本線の東側へ阪堺線を移設し、単線で運行する計画が示されています。
この東側移設案には、
- 阪堺線を南海本線の東側へ移設
- 単線化
- 阪堺線の休止期間を設けない
- 南海本線と阪堺線の乗り継ぎ距離を短縮
という特徴があります。
当初検討されていた「阪堺線を休止してバスで代替する案」では、約5年間の休止期間が想定されていました。
しかし、この方法では利用者がバスと阪堺線を乗り継ぐ必要があり、利便性が大きく低下します。
そのため、堺市の説明資料では、利用者への負担を抑える方法として東側移設案が検討されています。
阪堺線を「廃止」するわけではない
ここは誤解しやすいところです。
阪堺線が単線になると聞くと、
「阪堺線が縮小されるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし今回の計画は、南海本線高架化に伴って阪堺線を移設し、運行を維持するための整備です。
堺市の計画では、東側へ移設することで阪堺線を休止する期間を設けず、南海本線との乗り換え利便性も高めることを目指しています。
むしろ浜寺公園駅周辺では、
南海本線+阪堺線
という2つの鉄道を組み合わせた交通拠点としての機能を高めることが期待されています。
阪堺線と南海本線の乗り換えが便利になる可能性
東側移設の大きなメリットが、南海本線との乗り換えです。
堺市の説明資料では、現在よりも南海本線と阪堺線の乗継距離が近くなり、利便性が向上するとされています。
阪堺線の浜寺駅前停留場から船尾停留場までの所要時間については、東側移設後も片道約2分で現状と変わらないとされています。
さらに、阪堺線の休止期間を設けないことも東側移設案の大きなメリットです。
高架化に伴って駅前も整備されます。
堺市の計画では、浜寺公園駅前に交通広場を整備します。
駅前交通広場の面積は約3,700平方メートル。
さらに関連する道路整備や浜寺公園駅前土地区画整理事業も進められています。
高架化によって生まれる空間と駅前広場を活用することで、現在よりも歩行者が移動しやすい駅前になることが期待されます。
今回の事業を単なる「南海本線の高架化」として見ると、7カ所の踏切がなくなることが最大のポイントに見えます。
しかし、実際にはもっと大きな街づくりです。
南海本線を高架化
↓
阪堺線を東側へ移設
↓
阪堺線の一部を単線化
↓
南海本線と阪堺線の乗り換えを改善
↓
浜寺公園駅前を整備
↓
歴史的な旧駅舎を保存・活用
という一連の事業になっています。
つまり、浜寺公園駅周辺では、鉄道だけではなく駅前の街そのものが変わろうとしています。
南海本線の高架化では、現在の線路を使いながら工事を進める必要があります。
そのため、いったん仮線へ列車を切り替え、その後、高架橋を建設して最終的に高架線へ切り替えるという複雑な工程になります。
実際に、
- 2022年5月
- 2023年1月
- 2024年7月
- 2024年11月
- 2025年7月
など、段階的な仮線切り替えが行われてきました。
2025年7月には浜寺公園駅付近で仮下り線への切り替えが実施されています。
そして2026年には、駅の改札変更や阪堺線の単線運行への切り替えが予定されています。
まさに、高架化に向けた工事が本格的に進んでいる段階と言えるでしょう。
南海本線連続立体交差事業は、当初の計画から大幅に期間が延長されています。
現在の事業期間は、2006年11月7日から2034年3月31日まで。
つまり、事業全体の完了は2033年度末の予定です。
事業費も約423億円から約680億円へ増額されています。
高架切替については、2030年度末が予定されています。
その後も側道や周辺整備などを含めた事業が続くことになります。
今回の事業を時系列で整理すると、今後の浜寺公園駅周辺の変化が分かりやすくなります。
| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 2025年7月 | 浜寺公園駅付近で南海本線の仮下り線へ切り替え |
| 2026年10月2日 | 浜寺公園駅の東側改札・自由通路出入口を変更 |
| 2026年10月10日 | 阪堺線の船尾~浜寺駅前の一部区間で単線運行開始 |
| 2030年度末 | 南海本線の高架切替予定 |
| 2033年度末 | 南海本線連続立体交差事業の完了予定 |
| 将来 | 阪堺線を南海本線東側へ移設し、南海本線との乗り換えを改善 |
※阪堺線の東側移設・単線化は、南海本線高架化に伴う整備計画の一部です。2026年10月の単線運行は、その工事過程における一部区間の運行変更です。
南海本線の浜寺公園駅周辺では、これから数年間で大きな変化が起こります。
今回の都市開発のポイントをまとめると、
- 南海本線約2.7kmを高架化
- 諏訪ノ森駅・浜寺公園駅を高架化
- 7カ所の踏切を除却
- 約680億円の大規模事業
- 浜寺公園駅前に交通広場を整備
- 浜寺公園駅前土地区画整理事業を実施
- 1907年建設の旧浜寺公園駅舎を保存・活用
- 2026年10月2日から浜寺公園駅の東側改札を変更
- 2026年10月10日から阪堺線の一部区間を単線運行
- 阪堺線は将来的に南海本線の東側へ移設
- 南海本線と阪堺線の乗り換え利便性を向上
- 南海本線の高架切替は2030年度末予定
- 事業全体の完成は2033年度末予定
となります。
特に2026年10月は、浜寺公園駅周辺にとって大きな転換点です。
10月2日には南海本線・浜寺公園駅の改札が変わり、10月10日には阪堺線の一部区間が単線運行へ。
そして、その先には南海本線の高架化と阪堺線の東側移設が待っています。
明治時代から続く浜寺公園駅の歴史を残しながら、南海本線と阪堺線、駅前広場、道路を一体的に整備する。
浜寺公園駅は、「歴史を残しながら新しい交通拠点へ生まれ変わる駅」として、今後ますます注目されそうです。
