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ティアフォー(自動運転ソフト開発)はなぜ東京へ? 名古屋大学発のスタートアップ企業が東京に本社を移した理由

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日本の自動運転業界で注目を集めている企業が、ティアフォーです。

名古屋大学発のスタートアップとして誕生し、自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を中心に事業を展開してきました。

現在では、単なる研究開発型スタートアップではありません。

自動運転車両の開発、販売、実証実験、導入支援まで事業を広げ、2026年7月22日には東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

一方で、現在も大幅な赤字が続いています。

では、なぜティアフォーは名古屋大学発なのに東京へ本社を移したのでしょうか。

その背景には、自動運転が「技術」だけではなく、「法律・規制・行政・交通事業・導入支援・資金調達」まで含めた総合戦になっていることがあります。

 

ティアフォーとは? 名古屋大学発の自動運転スタートアップ
会社名 株式会社ティアフォー
設立 2015年12月
本社 東京都品川区北品川1-12-10ジャコムビル
創業 名古屋大学発スタートアップ
代表者 加藤真平
事業内容 自動運転システム・プラットフォームの開発
主力技術 自動運転ソフトウェア「Autoware」
売上高 64億1,000万円(2025年9月期)
営業損益 ▲105億600万円(2025年9月期)
純損益 ▲47億9,900万円(2025年9月期)
資本金 88億円
従業員数 404人(2026年5月31日現在)
上場 東京証券取引所グロース市場(2026年7月22日)

ティアフォーは2015年12月に名古屋市で設立されました。

創業者の加藤真平氏が名古屋大学で研究していた自動運転技術を事業化したことが、ティアフォーの原点です。

特に有名なのが、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」です。

Autowareは、自動運転車両の認識、判断、制御などを支えるソフトウェア基盤で、ティアフォーはこの技術を中心に自動運転の社会実装を進めています。

現在の事業は、大きく、

  • Mobility Service=自動運転を実際に運行する事業
  • Development Service=自動運転技術を開発する事業
  • Solution Service=自動運転の導入を「企業や自治体の導入を支援する事業」

の3分野に分かれています。

自動運転サービスの社会実装支援だけでなく、自動運転システムの開発、ソフトウェア・ハードウェアの提供などにも事業を広げています。

 

売上高は増えているが、まだ大幅赤字

ティアフォーの業績を見ると、現在の成長ステージがよく分かります。

決算期 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2025年9月期 64億円 ▲105億円 ▲55億円 ▲48億円
2026年9月期 第3四半期累計 52億円 ▲68億円 ▲41億円 ▲42億円
2026年9月期 予想 85億円 ▲112億円 ▲66億円 ▲67億円

2025年9月期の売上高は64億円でしたが、営業損失は▲105億円に達しています。

2026年9月期第3四半期累計では、研究開発費は約60億円に達しており、自動運転の量産化や社会実装に向けた開発を続けています。

つまり現在のティアフォーは、

「売上高を伸ばしながら、自動運転の社会実装に向けて巨額の研究開発投資を続けている企業」

といえます。

 

補助金収入も業績を支える

2026年9月期第3四半期累計では、補助金収入が約37億円計上されています。

研究開発費を含む販売費・一般管理費は約88億円に達しているため、補助金はティアフォーの研究開発を支える重要な収入となっています。

2026年9月4日、ティアフォーは経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択されました。

サウジアラビアでの自動運転バス実証事業で、補助対象経費は60億円、補助率は3分の2となり、最大約40億円の補助を受ける大型プロジェクトです。

また、NEDOの「ディープテック・スタートアップ支援事業」では、ティアフォーの自動運転システム向け電動化モジュール開発について、2023~2025年度に20億円の交付決定を受けています。

2025年9月期決算では100億円を超える赤字となっており、今後も補助金などの公的支援が重要になります。

ティアフォーが補助金や政府・自治体との実証事業を獲得するうえで有利な東京に拠点を移した、と見ることもできます。

 

なぜ名古屋大学発なのに東京へ?

ここからがティアフォーを理解するうえで重要なポイントです。

ティアフォーは名古屋大学発の企業です。

愛知県にはトヨタ自動車をはじめ、多数の自動車メーカーや部品メーカーが集積しています。

自動車技術を研究する環境としては、非常に恵まれています。

それにもかかわらず、ティアフォーの本店所在地は現在、東京都品川区です。

これは、自動運転ビジネスの性質を考えると理解しやすくなります。

自動運転は、単なるITサービスではありません。

実際に公道を走らせるためには、

  • 国土交通省
  • 警察庁・都道府県警
  • 自治体
  • 道路管理者
  • 交通事業者
  • 自動車メーカー
  • 通信会社

などとの調整が必要です。

つまり、

「自動運転技術を作る」

だけでは事業になりません。

「その技術を法律の中で実際に走らせる」

必要があります。

 

東京には「規制・行政」という大きなメリットがある

自動運転の事業化では、国の制度や規制が非常に重要です。

例えば2023年4月には改正道路交通法が施行され、レベル4に相当する自動運転を想定した「特定自動運行」の制度が始まりました。

これによって、一定の条件を満たした自動運転サービスを制度上運行できるようになりました。

今後も自動運転の普及に合わせて、制度や安全基準が変化していく可能性があります。

そのため、自動運転企業にとっては、

技術開発

だけでなく、

法制度への対応

も重要になります。

東京に本社を置けば、中央省庁、大企業、交通事業者、金融機関などとの連携を進めやすくなります。

ただし、ティアフォー自身が「国土交通省の情報をいち早く入手するために東京へ移転した」と公式に説明しているわけではありません。

しかし

「東京移転によって中央省庁や政策関係者との距離を縮め、規制・制度への対応や事業連携を進めやすくするメリットがある」

と考えるのが自然だと思います。

 

自動運転では「規制対応」が競争力になる

自動運転の場合、法律や規制が市場そのものを左右します。

例えばレベル4の自動運転では、

  • 車両の安全性
  • 自動運行装置
  • 走行環境条件
  • 特定自動運行の許可
  • 道路運送事業
  • 自治体との調整

など、複数の制度に対応する必要があります。

そのため、

AIが優秀なら勝てる

という単純な市場ではありません。

「技術を作る能力」に加えて、

行政と調整し、実証実験を行い、許認可を取得し、実際の交通サービスとして運行する能力

が必要になります。

ここはティアフォーの重要な強みの一つです。

 

IPOで約176億円を公募調達

2026年7月22日には、東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

証券コードは「593A」です。

公開価格は1,085円。

公募による調達額は約176億円、売出しなどを含む資金吸収額は約267億円となりました。

IPOで調達した資金は、

  • 研究開発
  • 量産・事業拡張
  • 組織拡張

などに使われる予定です。

つまりティアフォーは、政府支援に加えて、株式市場からも大型の資金を調達できる企業へと成長しました。

 

名古屋と東京の役割分担

ティアフォーの東京移転を考えるとき、

「名古屋を捨てて東京へ移った」

と考える必要はありません。

むしろ、

名古屋=技術・自動車産業

東京=行政・規制・資本・事業連携

という役割分担が考えられます。

名古屋には、

  • 名古屋大学
  • トヨタなど自動車メーカー
  • 自動車部品メーカー
  • モビリティ関連企業

が集積しています。

一方、東京には、

  • 国土交通省など中央省庁
  • 金融機関
  • 投資家
  • 大企業の本社
  • 全国展開する交通事業者

などが集まっています。

自動運転を全国へ展開するのであれば、両方のネットワークが必要になります。

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